
京都・宮津の中西建設屋上で見つかった風船に“東京の病院で監禁されているので助けて欲しい”という女性の手紙が結ばれていた。興味を持った社長の中西は、阿部探偵事務所に調査を依頼。阿部は、東京中の病院に探りを入れるが、手がかりのないまま、第二の風船が天橋立の展望台で拾われ…。やがて、監禁に絡んでいると思われた家が炎上し、お抱え運転手が殺される。この殺人と監禁に関連があるとみた十津川警部は、宮津へ。天橋立・東京を結ぶ驚愕の殺人事件に十津川警部が挑む。---データベース---
ケータイ雑誌「the どくしょ」に2006/04〜10月まで配信されていた小説だそうです。時代は変わってきたんですねぇ。ミステリー雑誌が売れなくなって、小説は配信の時代になったようです。西村京太郎氏の作品は既に4作品が発表されているようで、この作品はその最初のものになります。
ケータイ雑誌「the どくしょ」に2006/04〜10月まで配信されていた小説だそうです。時代は変わってきたんですねぇ。ミステリー雑誌が売れなくなって、小説は配信の時代になったようです。西村京太郎氏の作品は既に4作品が発表されているようで、この作品はその最初のものになります。
どうにも最初の設定がファンタジックすぎてあり得ねぇ、というところから始まってしまいます。だいたい監禁されているのにヘリウムガスの詰まった風船をどうやって飛ばすことが出来るというのでしょう。それが一度ならず二度までも。ましてや、東京から京都の天橋立まで飛んでいくことが可能なのでしょうか。海の上ならまだしも、日本アルプスを超えて東京から京都ですよ。風船なんて、たかだか高度500mぐらいでしょう。やっぱりあり得ねぇですよ。
珍しく私立探偵の橋本が最初から最後まで登場します。いや、今回は同じ私立探偵の阿部純子が最初登場します。設定がファンタジックなのでいきなり橋本ではやはり無理があったのでしょうかね。彼女は「五能線の女」にも登場していましたから、橋本絡みで今後もちょくちょく登場するのでしょうか。いや、ひょっとすると橋本とくっつくかもしれないですよ。
この調査依頼は、とても一人では手に負えないと考え探偵仲間に応援を依頼します。最初は橋本に、さらには8人追加して計10人の私立探偵が集められます。人を捜すのは人海戦術しかないのでしよう。しかし、どうも胡散臭いと二人が抜けていきます。
そんな中、やっとそれらしい邸宅を見つけ出します。ですが、張り込みを始めた途端その屋敷が火事で燃えてしまいます。持ち主は奥寺誠なのですがこの奥寺、自宅が全焼しても姿も現しません。既にこれ自体奇妙なことなのですが、警察は動き出しません。これとは別に殺人事件が発生します。殺されたのは火事で焼けた奥寺家のお抱え運転手でした。ここで、ようやく十津川警部が動き出します。でも、これも片手落ちの捜査で、この火事のとき死んだ運転手とお手伝いの女がひとりいたことになっているのですが、このお手伝いについて事情を聞くという初歩的な捜査はやっていないのです。ここさえきちんとしておけば事件の解決は早いものをと思わざるを得ません。
さて、そうはいっても動き出した捜査で十津川警部と亀さんはのこのこと天橋立に出かけていきます。途中京都で橋本と顔を合わせますが、ここでまた不可解な事件が起こっています。探偵仲間の一人が教われて重症になるのですが、この事件ここだけの話で後に繋がりません。まあ、他の探偵たちが抜けていくきっかけみたいなものですが、結局誰に教われたのかは解らずじまいの展開です。
天橋立には奥寺の別荘があるのですが、ここである事件が起きていました。ここで火事が発生し丁度泊まりにきていた奥寺の会社の従業員の女性二人が一酸化炭素中毒で入院する騒ぎがあったのです。そして、一度は無事退院したのですが、一人が亡くなっています。その女性こそ、橋本たちが探していた女性に他なりません。とまあ、こんな調子で事件は確信に進んでいきます。ただ、犯人とおぼしき奥寺は一向に姿を現しません。これがまたミステリアスなのですが、その登場の仕方も突飛すぎてついてゆけません。
まあ、最後には死んだはずの女が生きているという小説ならではの設定で事件はめでたしめでたしの解決を見るわけですが、どうもストーリー展開に矛盾が多くついていけません。