十津川警部 祝日に殺人の列車が走る | geezenstacの森

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祝日に殺人の列車が走る

著者 西村京太郎
出版 小学館 ポストノベルス

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 ラジオの深夜放送のリクエスト葉書で〈祝日に殺人の列車が走る〉という十津川宛の挑戦状が届けられた。そして5月の連休最後の日、特急「有明」の車内で殺人事件がおこった。被害者は千億円近い資産を持ち、2人の息子と5人の女がいた。そして第二の殺人が…。容疑は2人の息子へ。莫大な遺産をめぐり、愛人と息子達の骨肉の争い。土壇場に追いつめられた十津川警部に策はあるのか。興奮のトラベルミステリー。---データベース---
 
 1987年発表の作品です。なんとも読んでいて歯痒い作品で、容疑者は早々に絞られているのになかなか逮捕されません。その間に次々と殺人が起こり最終的には6人が殺されてしまいます。最初の殺人は吸収は熊本で発生します。祝日の臨時特急「有明」の車内で資産家の小堀忠男が殺されます。彼には莫大な遺産があり、それを二人の息子と五人の愛人で分け合います。一軒何の問題もないような構図ですが二人の息子は異母兄弟です。この事件には最初、深夜ラジオのリクエストはがきが読まれそこで事件が予告されるところから始まります。

 当初このリクエストはがきは9枚があちこちのラジオ局から回収されます。いずれもワープロで書かれていますから、筆跡鑑定は出来ません。しかし、本来ならここでで指紋の採取は出来そうです。しかし、そういうことがなされた形跡がありません。捜査の初動がこんなもんですから事件が起きても対応はいつもの感覚からするといい加減です。

 熊本で起きた事件ですから最初は熊本県警の北川警部が中心んになって操作が進行します。鉄道を使った事件でもあるので北川警部はルートの確認とアリバイ崩しにチャレンジしますがこれは上手くいきません。いつもなら十津川警部が現地に乗り込んで実際のルートを確認するのですが当初はそれがなされませんから余計事件の解決が長引きます。

 その間に小堀忠男の愛人だった女たちが次々に殺されていきます。その動機はなかなか推理がつきませんが、事件に関係したと思われる小堀の二人の息子たちの身辺調査が実にいい加減です。当日のアリバイの確認がなされませんから余計事件は長引きます。十津川班の刑事たちはこういうとき何をしているのでしょう。

 その内に小堀の息子のうちの弟の方が実は愛人の子供で認知されて弟になっていることが解ります。そして、殺された女たちのうち一人が妊娠していたことが解ります。これによって、事件は子供の存在が関わった殺人事件であることが浮かんできます。殺された忠男は元の愛人に会いにいくために九州を旅行していたことが解ってきます。そして、その殺人に使われたトリックが再度十津川警部と亀さんが九州に飛んで、実際のルートを辿ることでアリバイが崩れます。

 それはやはり祝日に運行されていた臨時列車を利用することで可能なトリックでした。一度不可能だった列車のトリックが視点を変えることによって可能になるのです。この隠し球は最後まで明らかにされません。そしてもう一つ、とっておきの新事実が最後の最後に用意されています。こういうエンディングは見事ですが、途中の捜査はじれったいものでもうちょっとテンポよくストーリーを展開してほしいものです。