ベートーヴェン
ピアノ協奏曲第0番
ベートーヴェン/
Concerto for Piano, Violin and Cello in C major, Op. 56 "Triple Concerto"*
1.Allegro 17:27
2.Largo 4:51
3.Rondo all Polacca 13:18
Violin Concerto (frag) in C major WoO 5**
4. Allegro con brio 16:24
Piano Concerto in E flat major WoO 4 (arr Hess)***
5.Allegro moderato 8:56
6.Larghetto 9:45
7.Rondo (Allegretto) 8:23
演奏/シーマ・トリオ*
ピアノ/カメリア・シーマ***
ヴァイオリン/マリウス・シーマ**
チェロ/ロベルト・ウルパ
指揮/デヴィッド・モンゴメリー
演奏/イェーナ・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1996/09/19-21 イェーナ・フォルクハウス、ドイツ
P:ウルフ・ワインマン
E:スティーブン・パウル
ピアノ/カメリア・シーマ***
ヴァイオリン/マリウス・シーマ**
チェロ/ロベルト・ウルパ
指揮/デヴィッド・モンゴメリー
演奏/イェーナ・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1996/09/19-21 イェーナ・フォルクハウス、ドイツ
P:ウルフ・ワインマン
E:スティーブン・パウル
BMG RCA BVCC-6026

ベートーヴェンのマイナーな作品を集めたこのCDはなかなか魅力的で、1994年に発足した「Arte niva」の面目躍如の一枚です。「Naxos」に対抗して低価格で魅力的な内容を誇っていました。「Naxos」同様かなりマイナーなアーティストを使ってベーシックなレパートリーを揃える傍ら、えっと驚くような組み合わせで珍しいレパートリーをラインナップしていて刺激的でした。そんな中からジンマン/チューリッヒメ・トーンハレ管弦楽団とのベートーヴェン交響曲全集も登場したものです。
ここではそんなベートーヴェンの珍曲を聴くことができます。とはいっても、最初のトリプル協奏曲は小生にとっては珍曲でもなんでもなくこのブログで取り上げるのも4回目になります。以前取り上げたのは
カラヤン/ベルリンフィル/リヒテル、オイストラフ、ロストロポーヴィチ
ジンマン/チューリッヒ/ブロンフマン、シャハム、モルク
ジョルダン/モンテカルロ/アモイヤル、ロデオン、ケフェレック
カラヤン/ベルリンフィル/リヒテル、オイストラフ、ロストロポーヴィチ
ジンマン/チューリッヒ/ブロンフマン、シャハム、モルク
ジョルダン/モンテカルロ/アモイヤル、ロデオン、ケフェレック
ここでは、このトリプル協奏曲がメインなのでしょうが、このシーマ・トリオの演奏はあまり特色がありません。いい意味アットホーム的な演奏でこれといって個性がぶつかり合うということもなく和気合々で演奏が進んでいくのでベートーヴェン的な丁々発止の渡り合いを期待すると当てが外れるかも知れません。
モンゴメリー指揮のイェーナ・フィルハーモニーは意外と好演しています。丁寧なサポートで重厚感こそありませんがいいバランスでオーケストラを鳴らしています。これで、もう少し個性のある表現が出来ていれば申し分無いのですがね。こういうこともあって、例のSONYから発売された60枚組のボックスにはジンマンの演奏が採用されたのでしょう。それが証拠に、代替え録音のないこのCDの他の2曲はボックスに収録されているのです。
ということで、興味のあるヴァイオリン協奏曲ハ長調の第1楽章はこのCDを入手するまで未聴でした。1790年頃に書かれたこの曲は未完の作品で草稿が259小節分残されているだけです。ベートーヴェン20歳頃の作品ということで、まだウィーンに出る前の作品ということになります。多分にモーツァルトの作風の影響を受けた作風を個々では聴き取ることができます。個々での演奏はスペインのヴァイオリニストのジョアン・マネンの編曲による演奏が採用されています。
未完ながらけっこう規模の大きな作品で1楽章の演奏に16分以上掛かります。初期の作品ということで編成は弦5部と木管のみの編成でティンパニも金管も登場しません。派手なヴィルティオーソを披露する作品ではありませんが、一度耳にして置いて損の無い曲です。
ピアノ協奏曲変ホ長調WoO.4という作品はLP時代にも聴いていた曲です。その頃はベートーヴェンのピアノ協奏曲第0番というチャッチフレーズで販売されていました。リディア・グリィヒトロウナというピアニストがハインツ・ドレッセル/フォルクヴァンク室内管弦楽団をバックに演奏したもので、当時はこれでベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲が揃ったと喜んだものでした。
こちらの曲は?鮭々コンサートでも取り上げられていますね。作品としてはベートーヴェンが13歳の頃に書いた習作ということで、弦とフルート、ホルン各2本のオーケストレーションがなされているということで容易に復元が可能であったようです。ここではウィリー・ヘスが加筆した楽譜を元に演奏されています。ベートーヴェンは自身もピアニストとしてデビューしたこともあってピアノ曲については自信があったのでしょう。ここでも、モーツァルトの雰囲気を味わうことの出来る旋律が心地よいです。
第1楽章は柔らかいフルートの響きに乗って開始されます。短い序奏の後すぐにピアノが登場するスタイルで、若いベートーヴェンが一刻も早くピアノを弾きたい気分を感じさせます。随所に躍動感のあるピアノのフレーズが盛り込まれ、習作ながら堂々とした曲になっています。こんなところにも演奏会で取り上げられる機会が多い理由が解ります。こういうロマンティクな作品だと、カメリア・シーマの女性的なタッチのピアノの響きは生きてきます。小じんまりとはしていますが、ころころと転がる音の粒が曲想とマッチしてメルヘンチックな乙女心を巧みに表現しています。
第2楽章のフルートとピアノのしっとりとした掛け合いはまるでルノワールの絵画の世界を垣間見るようでやさしいタッチのビアニズムが生きています。ただ、もう少しフルートに気品があると申し分無いのですがね・・・演奏時間的にもこの2楽章の方が長いというこの作品は、この楽章が一つの聴きものになっています。
第3楽章はロンドでいきなりピアノのソロから開始されます。楽器編成こそはシンプルですが若きベートーヴェンが同時代の雰囲気を良く捉えた音楽をきっちり書いていることが解ります。この頃はまだ、耳の病気もない頃なので、その天真爛漫な青春のすべてを表現したこの曲はベートーヴェンの違う一面を知る上ではまたとない佳曲です。
単品は廃盤になっていますが、上記のボックスセットに含まれていますので一度聴いてみて下さい。こんな感じの曲です。