
死体の額に刻まれた×印。紀勢本線新宮駅近くと東京・世田谷で二人のOLが殺された。十津川警部と亀井刑事は南紀に飛ぶが、第三の惨劇が串本で…。被害者はすべて21歳のOL、頭文字がY・H。この接点から二人の容疑者が浮かぶ。ところが「紀勢本線のKで、第四の殺人が行なわれる」との殺人予告。動機はなんなのか。捜査陣と真犯人の息詰まる駆け引き。---データベース---
1991年発表の作品です。どうもリアリティのないストーリーで読み手にわくわくする期待感が伝わってきません。今回の事件は和歌山県は新宮市で発生します。といっても、それより先に東京の世田谷で最初の事件は発生しています。ですからスタイル的には東京の事件に和歌山県警が協力するという体制で捜査協力がなされるのが順当な手続きなのですが、どういう事か十津川警部と亀さんがわざわざ和歌山に出向いていきます。
1991年発表の作品です。どうもリアリティのないストーリーで読み手にわくわくする期待感が伝わってきません。今回の事件は和歌山県は新宮市で発生します。といっても、それより先に東京の世田谷で最初の事件は発生しています。ですからスタイル的には東京の事件に和歌山県警が協力するという体制で捜査協力がなされるのが順当な手続きなのですが、どういう事か十津川警部と亀さんがわざわざ和歌山に出向いていきます。
和歌山では、新宮に続き今度は串本でも殺人事件が起きてしまいます。被害者はすべて21歳のOL、頭文字はY・H、そして、猟奇的とも思われる額にバッテンの切り傷が残され、さらには乳房の間を刺されているのです。こういう共通点があるにも拘らず犯人像は浮かんできません。この事件、和歌山県警の中村という若い警部が担当をしますが、これもワンパターンのように十津川警部たちに対抗心剥き出しの設定です。
そして、新宮、串本と犯行を重ねているということで、殺人の日取りとともに移動している不審な人物のあぶり出しを徹底的にやります。こうして、二人の人物が浮上してくるのですが、そのうちの一人は那智勝浦の生まれである自称旅行作家の野村貢、もう一人は和歌山市内の生まれで傷害事件を起こし逮捕歴のある山下邦夫という人物です。そして二人は今度は白浜のホテルに逗留しています。県警は二人を徹底的にマークします。
どういう風の吹き回しか、第4の事件については犯人から予告状が届きます。これも不思議なものです。なぜ第4の犯行になって初めて予告状が送られてくるのでしょうか。このため、捜査陣は予告状の紀伊本線のKの付く市町村をマークする羽目になります。マスコミもこの事件を大きく取り上げます。ところがその前に容疑者としては本命であった山下が何者かに銃で撃たれて殺されます。
そうこうしている間に予告の日になり、Kの付く規模の大きい町ということで紀伊田辺が浮上して、もう一人の容疑者の野村が白浜から急にそこへ移動します。でもってこの男が予告通りに女を殺すんです。ところが前の殺人とはぜんぜん関連性のない女です。警察は野村の行く手を追いますが発見出来ません。マークしていながら逃げられているのです。和歌山県警の失態ですが誰もそれを追求しないのも不思議です。物語ですねえ。海辺で不審な男を十津川警部たちが発見します。追求すると野村を殺害したというのです。出来過ぎのように事件は解決します。和歌山県警は捜査本部を解散します。
ところが本当の解決はここからなんです。ここまでは、和歌山県警のためのストーリーだったんですね。真犯人からまた、予告状が届きます。ここで、十津川警部は原点に立ち戻り共通点から事件を再精査します。そして、女性のデータがデータバンクから抜き出されたものであることを突き止めます。そのデータを買い求めたのは結婚相談所の人間でした。しかし、そんな組織はありません。男は大阪のデータも利用していました。共通項からその男を割り出します。高沢真一郎、よくよく調べるとホモの男で交際相手が自殺したことに腹を立て、自殺した平岡淳を追いつめた女の殺害のために犯行を重ねているのでした。
読んでいて、ストーリーの飛躍と内容の無さが鼻についてきます。ここまで殺す手口に拘ってきた高沢は最後は女を追いつめるのですが、その前に殺されます。それが笑っちゃいます。催涙弾を利用してホテルに入り込むのですが十津川警部や亀さんたちはそのガスに苦しめられるのですが、当の高沢はガスマスクも無しに動き回って女を追いつめるのです。女の部屋も解っていないのにそこに突進するし、女が人質になっているのに十津川警部は拳銃を発射して高沢を射殺するという無茶苦茶の大団円です。最後は遺書が見つかり、殺しの動機が語られるのですがこれも今イチ理解し難いもので、なぜ最初に東京の女が殺されるのか、それも一人だけの説明が出来ていません。まあ、東京の女が殺されなければ十津川警部の出番が無くなるのでこれはコジツケなんでしょうなぁ。
最近十津川警部シリーズはなかなか読み応えのあるストーリーに出会えなくて、残念ながらこういう読後感想になってしまいます。でも、このシリーズ読むのは止めませんけどね。