カラヤンのパリ交響曲集 | geezenstacの森

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カラヤン
ハイドン/パリ交響曲集
 
ハイドン/
1.交響曲第82番ハ長調『熊』 7’29/7’46/5’16/5’55
2.交響曲第83番ト短調『牝鶏』 7’38/8’12/4’43/4’06
3.交響曲第84番変ホ長調 8’30/7’47/4’11/5’46
4.交響曲第85番変ロ長調『王妃』 8’37/7’18/4’39/3’25
5.交響曲第86番ニ長調 8’47/7’16/6’10/6’41
6.交響曲第87番イ長調 7’29/9’15/5’44/4’31


 

指揮/ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 

P:ギュンター・プレースト
D:ミシェル・グロッツ
E:ギュンター・ヘルマンス
録音/1980/6/15、29~7/1、9/30 フィルハーモニーザール、ベルリン

 

DGG POCG-2042-4

 

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 カラヤンがデジタル時代になってから始めてハイドンの交響曲を纏めて録音しました。これはその第1弾として発売されたパリ交響曲をセットにしたディスクです。といっても最近の生誕100年を記念して発売されたものではなく、1990年に「カラヤン・フォーエバー」なるキャンペーンが実施されたおりに発売されたものです。近代オーケストラによるシンフォニックなアプローチで、今ではこういう録音はピリオド楽器の台頭にあたって商業録音はほとんど不可能になっているでしょう。デッカにはドラティの全集がありましたが、当時のグラモフォンのレパートリーの中ではベームとヨッフムのロンドンセットはありましたがこのパリ交響曲集は欠落したものでした。そういうカタログの欠落部分を埋めるということでカラヤンはこの録音をしたのではないでしょうか。

 

 ということで、これはカラヤンの唯一の録音となるレパートリーです。フィルハーモニーザールでの録音は1974年から始まっていますから既に9年の歳月があるわけですが、録音は曲によってかなりムラがあります。一枚目の交響曲第82、83番は音がかさついていて艶が感じられません。どうしてだろうとインターネットで検索したらやはり同じような印象を持っている人がいました。でも、2枚目の84、85番になるとそういう印象は受けません。しっとりとした音色ですが適度にステレオプレゼンスがありいつものドイツグラモフォンの野暮ったい音はしません。

 

 そういうことで、82番から聴き始めましたが演奏はカラヤンらしいバランスの取れた構成のきっちりとした演奏で聴き応えはあります。両曲ともニックネームが付いているということで良く聴く機会がある曲ですから耳になじんでいるせいもあるでしょう。カラヤンの解釈は近代オーケストラを意識した濃厚なハイドンになっていますが、旋律を美しく鳴らすことにかけては超一流のベルリンフィルを相手にしてですからこれ以上いうことはありません。モーツァルトではレガート奏法が耳についてややムード音楽のように聴こえたのですが、さすがにハイドンではそういうところは聴かれません。これで録音が良かったら申し分無いのですがね。

 

 

 録音データから見るとほとんど一発録りの様な感じがします。カラヤンはここでは6曲を統一した様式で演奏をしているようで、解説によるとソナタ形式を取る楽章では提示部のリピートは実践しているのに展開部以下のリピートは省略して全体の統一感を図っているようです。そのため、各々の曲が非常にドラマチックな仕上がりになっていて、聴き手にすっきりとした見通しのいい印象を持てるように計算されています。さすがカラヤンと思わせる演出です。そういう意味では6曲を通して聴くことに何ら抵抗がありません。

 

 

 ハイドンの交響曲はやはりニックネームの付いたものが面白いですね。それでも、カラヤンは演奏会では取り上げず、レコードだけ録音した曲も数々あります。このパリ交響曲集では84、85番が演奏会では取り上げなかった曲ということになっています。交響曲第86番は1940年12月13日の演奏会で取り上げていました。オケはアーヘンの歌劇場管弦楽団ですね。トランペットとティンパニが活躍するということと冒頭の序奏のアダージョが構成的にしっかりとした作品であることなどがこの作品を取り上げた根拠なのでしようか。緻密な組み立ての演奏で、こういう演奏を聞かせられるとカラヤンの構成力の確かさに感服してしまいます。昔、グラモフォンの第1回目の録音でベートーヴェンの交響曲第9番「合唱」を聴いた時、解説書を見ながら聴いていたらベートーヴェンの意図したこの曲の構造が隅々まで分かり、完璧な構造の中で人々を感動させる音楽を鳴らせているカラヤンの姿が見えビックリしたことを覚えています。この時以来、この第9が好きになったのです。それまで取っ付きにくい曲だと思って敬遠していたので、そういう意味ではカラヤンに感謝です。

 

 

 

 交響曲第87番は作品的にはパリ交響曲集の一番最初に作曲された曲ということです。はっきりいってやや眠たくなる曲です。第2楽章のアダージョと第3楽章のメヌエットのテンポが丁度眠気を誘うのです。でも、オーボエファンには独奏部分が含まれているのでたまらない曲でしょう。