バーンスタイン・コンダクツ | geezenstacの森

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バーンスタイン・コンダクツ

曲目/
1.ガーシュイン/Rhapsody in Blue 17:16
2.バーバー/Adagio for Strings 10:10
ストラヴィンスキー/組曲「火の鳥」1919年版
3.序奏 3:35
4.火の鳥の踊り 0:15
5.火の鳥のヴァリアシオン 1:19
6.王女たちのロンド(ホロヴォード) 5:34
7.魔王カスチェイの凶悪な踊り 4:19
8.子守歌 3:54
9.終曲L'Oiseau de feu Suite (introduction)  3:32
10.チャイコフスキー/序曲「1812年」Op.49  15:34


指揮/レナード・バーンスタイン
演奏/ロス・アンジェルス・フィルハーモニー管弦楽団 1.2
   イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団 3-10
録音 1982/07/22-24L 1 
  1982/07/24L 2 デイヴィス・シンフォニー・ホール、サンフランシスコ
   1984/05/09-18L 3-9
1984/05/13 10 マン・オーディトリウム、テル・アヴィブ

P:ハンノ・リンケ
E:カール=アウグスト・ネーグラー

独DG 427 062-2

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 国内盤は1988年の11月に2000円で発売されているようです。デジタル録音のサンプラーみたいな内容ですがオーケストラ作品が4曲収録されています。オケはロスアンジェルス・フィルにイスラエル・フィルという晩年ならではの組み合わせです。4曲のうち「1812年」を除いてライブ・レコーディングということですが本来のライブレコーディングとは違う雰囲気で生々しさはあまり感じられません。多分。ライブのリハーサル時のセッションを編集したものではないでしょうか。客席のノイズは全くありません。いわば、疑似ライブでしょう。晩年のバーンスタインはこういうスタイルを好んで取っていました。ただ、本来のライブに比べるといささか熱気というものに関しては聴き劣りしてしまいます。

 冒頭はガーシュインの「ラプソディ・インブルー」ということでどうしても最近はマングースのピアニカのイメージが強いのですが、ちゃんとクラリネットのソロで始まります。もちろん、ここではバーンスタインは自身のピアノを披露していて、いわゆる弾き振りをしています。この弾き振りということではどうしてもプレヴィンと比較をしてしまいます。どちらもアメリカのオケを振ってということでジャズ的フィーリングは申し分無いです。一つ違いがあるとすればプレヴィンは手兵のピッツバーグ交響楽団、バーンスタインは客演のロスフィルという事でしょうか。それも、ホームのロスではなくサンフランシスコ公演のライブということでいささか勝手が違う部分があったのでしょうか。ノリという点ではプレヴィンに一日の長があります。快調なテンポのプレヴィンに対して、バーンスタインはやや余裕があり過ぎて音楽が間延びしているように感じます。

 同じアメリカものでも、2曲目のバーバーのアダージョに関してはバーンスタインの本領発揮といったところで、マーラーの響きにも通じるところがあるこのアダージョをカンターピレを聞かせて切々と演奏しています。晩年のバーンスタインは老害ではないでしょうが、極端にテンポを落として演奏したものが多いのですが、このアダージョにはそういう部分が生きています。映画「プラトーン」に使われてから俄然人気の上がったこの曲、「2001年宇宙の旅」でのR・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」と同じように一般に映画によって認知されたと言ってもいいでしょう。おびただしい録音が詩情に出回りました。その中でも、このバーンスタインの演奏は耽美的で思い入れたっぷりの演奏としてトップクラスを争う出来です。

 3曲目の組曲「火の鳥」は今イチ作品にのめり込んでいないというか、何処か冷めた演奏です。オーケストラがややおとなしいのかストラヴィンスキーの持つ原始的なエネルギーの爆発という点では旧録音のニューヨーク・フィルの方がエネルギーがあるのかも知れません。録音が新しいので弦の響きは美しいのですが、荒々しさという点では物足りなさを覚えます。「イントロダクション」から弦のポルタメントによる甘い表情などこのオケの特徴を上手く引き出しているし、「ロンド」のロマンティックな表現にはうっとりとさせられますが、ノリというにはちょっとすわりの浅いリズムと響きでクライマックスは今ひとつという感じで残念です。

 最後はチャイコフスキーの大序曲「1812年」です。これはスタジオ録音ということで緻密な演奏が展開されています。何せ大砲の音とか教会の鐘とを使用していますから、ライブ録音とはさすがにいかなかったのでしょう。あまり、オーディオ的な側面を強調した録音という側面はありませんが意外とバランスの取れた素晴らしい録音です。テラークのカンゼル盤ほどカノン砲の音を強調していませんが鐘の響きとも調和がとれていて、この曲の演奏に関してはニューヨークフィルを凌駕しています。