ランチベリーのチャイコフスキー「三大バレエ」 | geezenstacの森

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ランチベリーの三大バレエ・ハイライト
CLASSIC INN 4

曲目/チャイコフスキー
「白鳥の湖」
1. 情景(第2幕) 2:34
2. ワルツ(第1幕) 7:45
3. 小さな白鳥の踊り(第2幕) 1:27
4. 情景(第2幕) 7:50
5. ハンガリーの踊り(第3幕) 3:10
6. スペインの踊り(第3幕) 2:35
7. ナポリの踊り(第3幕) 2:02
8. マズルカ(第3幕) 3:20
「眠れる森の美女」*
9. 序曲 2:28

 

10. パ・ダクシオン・アダージョ(第1幕) 6:40
11. パノラマ(第2幕) 3:32
12. ワルツ(第1幕) 5:03
「くるみ割り人形」**
13. 序曲 3:06
14. 行進曲(第1幕) 2:27
15. こんぺい糖の踊り(第2幕) 2:26
16. ロシアの踊り(トレパーク)(第2幕) 1:12
17. スペインの踊り(チョコレート)(第2幕) 1:14
18. アラビアの踊り(コーヒー)(第2幕) 3:38
19. 中国の踊り(お茶)(第2幕) 1:03
20. あし笛の踊り(第2幕) 2:39
21. 花のワルツ(第2幕) 7:26

 

指揮/ジョン・ランチベリー
演奏/フィルハーモニア管弦楽団
ヴァイオリン/クリストファー・ウォーレン=グリーン 4
チェロ/ロバート・トラウマン 4

 

録音/1982/04/20,05/12,16-20
1982/07/12-16,21,22*
1982/03/01-3,12,04/19** アビー・ロード・スタジオ、ロンドン
P:ジョン・フレイザー
E:クリストファー・パーカー

 

EMI 小学館 SGK-89110 (東芝EMI CE25-5617)

 

イメージ 1

 

 この一枚も1989年に市販されたものがそのまま採用されています。しかし、渋いチョイスに代わりはありません。何と指揮はジョン・ランチベリーです。と言っても知らない人が多いでしょう。2003年に亡くなっています。ランチベリーはバレエ指揮者の第一人者で一時期はリチャード・ボニングと人気を二分する活躍でした。英国ロイヤル・バレエの首席指揮者、オーストラリア・バレエの音楽監督、アメリカン・バレエ・シアターの音楽監督を歴任するなど世界のバレエ界で活躍していました。これはそんな彼の代表盤なのですが全曲盤は出ていないようです。なにしろ、EMIにはプレヴィンの全曲盤があるからセールスが期待出来ないCDは出さないのでしょうね。ちなみに輸入盤では5枚組で出ています。ただしカットがあるようですね。

 

 チャイコフスキーの三大バレエは何といっても「白鳥の湖」が一番人気なのでしょうが、このランチベリー盤は最後の「くるみ割り人形」が一番収録曲目が多いという選曲です。でも、これが本家EMIのオリジナルの選曲なのですから何とも不思議です。まあ、そういう都合もあるのでしょうがいきなり「白鳥の湖」は情景で始まります。ちょっと唐突な感じがするのは否めません。しかし、演奏は立派手゜す。さすがバレエの第一人者、きっちりとツボを押さえた情感たっぶりの演奏です。まるで、バレエの舞台を見ているような雰囲気にさせてくれるのですから。通好みの演奏というのでしょう。

 

 

 この中でピカイチの演奏は皮肉なことに収録曲数が一番少ない「眠りの森の美女」です。生き生きとした情景描写の中に洗練されたセンスが息づいていてプリマドンナの優雅な舞いが情景として浮かんできます。次に聴き映えのするのは「くるみ割り人形」です。これらの録音は1982年に集中して行なわれていますが、一番最初に録音されたのがこの曲です。それだけ自信があったのでしょう。切れのいいリズムと舞台を知り尽くした絶妙のテンポはすんなりとバレエの世界へ誘ってくれます。ここでの収録は組曲を網羅しており、「スペインの踊り」だけが組曲以外でプラスされています。トランペットが活躍する曲で1分ちょっとの短い曲ですがちゃんとスペインの雰囲気が出ている佳曲です。余談になりますが、全曲盤ではオリジナルにはない「ジーク」という曲が挿入されています。各国の踊りの中に、にさり気なく「イギリス」の踊りを付け加えているんですね。こういう遊びが出来るのも英国ロイヤル・バレエの重鎮で作曲もこなすイギリス人ランチベリーのジョークなんでしょうね。

 

 

 「白鳥の湖」では4曲目の情景が聴きものです。ハープに導かれてのチェロとヴァイオリンの活躍する曲でソロにクレジットされているクリストファー・ウォーレン=グリーンとロバート・トラウマンの切ないまでのカンタービレは何ともいえない色香を感じます。録音もデジタルですから、これはお薦めの演奏なんですが国内盤では復活しないかな。