アバド/ロンドン交響楽団のブラームス | |
交響曲第4番ホ短調 Op. 98
1. Allegro non troppo 12:11
2. Andante moderato 12:13
3. Allegro giocosa - Poco meno presto - Tempo I 05:54
4. Allegro energico e passionateo - Piu Allegro 09:26
5.「ハイドンの主題による変奏曲」Op. 56a *
指揮/クラウディオ・アバド
演奏/ロンドン交響楽団
ドレスデン・シュターツカペレ *
演奏/ロンドン交響楽団
ドレスデン・シュターツカペレ *
録音/1973
1974 *
1974 *
独DG 427 199-2

この演奏は忘れられた存在なのでしょうか、と言うよりはアバド/ロンドン交響楽団の演奏自体がグラモフォンにとっては不要の長物になってしまっているのかも知れません。何しろ後年ベルリンフィルの常任になっているのでこのブラームスをはじめ主だったレパートリーは再録音をしているからです。
アバドがロンドン交響楽団のシェフだった70年代から80年代はどのレコード会社も目をつけていたようでRCAやデッカからもリリースされています。それだけにソニーがシカゴ交響楽団とチャイコフスキーの交響曲全集を録音した時はビックリしました。すでに、少なからずグラモフォンにもウィーンフィルと録音していましたからね。
まあ、余計な話はこれくらいにしてこのブラームスの交響曲第4番です。LP初出時はこのブラームスの交響曲だけの収録でしたが、さすが、CD時代になると余力があるのか「ハイドンの主題による変奏曲」が併録されています。面白いことにこちらはドレスデン国立歌劇場管弦楽団との録音です。こういう組み合わせも合ったのですね。
ブラームスの交響曲第4番の第一楽章の出だしは素っ気ないものです。最初はこれは外れたかなと思いましたが、聴き進むに連れて徐々に調子を上げてきます。ブラームスの音楽がアバドの体質に合っているのかいつしか、大きな音のうねりとなって押し寄せてきます。第2楽章も金管を押さえた渋めの音色ですが分厚い弦の響きに支えられて雄大なブラームスが響きます。ただ、残念なのは録音がイマイチでDGの紋切り型の平板な音で奥行きが感じられません。
ところが第3楽章になると俄然金管が吠えまくります。聴いていると急に音像が変化します。多分曜日の違う日のセッションなんでしょうか。燃え上がり方はこちらの方が上です。そういうこともあってか音のバランスよりも演奏の方を重視したテイクを採用したのでしょう。第4楽章もその延長でいつもはおっとりとしている印象のアバドがしゃにむに指揮棒を振り回している様が目に浮かぶ演奏です。
「ハイドンの主題による変奏曲」は交響曲第4番が終了してその余韻に浸る間もなく曲が始まってしまうのでちょっと面喰らいます。アバドのブラームスの解釈は交響曲第4番と変わりないので、そのまま聴いていると第5楽章が始まったのかという雰囲気です。しかし、演奏は一つ一つの変奏を丁寧にきっちりと積み上げたスケールの大きな演奏を構築しています。音のバランスはこちらの方が良く、ドレスデンの渋めの響きを重視したものであくまで正当的にならしています。ただ、計算され尽くした音楽で音楽の楽の部分がもう少し合っても良いような気がしないでもありません。
この「ハイドンの主題による変奏曲」は個人的にはワルター/コロンビア交響楽団の演奏が好きで、ワルターの温かみのある響きと包容力のある解釈はこの曲を聴いていて心を豊かにしてくれるものがあります。アバドのこの録音時まだ40代ということも合ってか円熟というにはやや程遠いものを感じます。それでも、当時の若手の中では一頭抜きん出たものを持っていたことはこの演奏からも感じることができます。
商業的には後のベルリンフィルとの再録の方が売れたためか、この録音はCDとしては忘れ去られて再発はされていないようです。アバドの軌跡を知るうえでも復活してほしいものです。