堤 剛のドヴォルザーク/ハイドン | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

堤 剛のドヴォルザーク/ハイドン

曲目/
ドヴォルザーク/チェロ協奏曲ロ短調op.104
1.アレグロ 16:15
2.アダージョ・マ・ノン・トロッポ 12:16
3.フィナーレ:アレグロ・モデラート 13:13
ハイドン/チェロ協奏曲第1番ハ長調*
4.アレグロ・モデラート 16:36
5.アダージョ 6:56
6.アレグロ 5:56

チェロ/堤 剛
指揮/ズデニエック・コシュラー
   ホセ・ルイス・ガルシア*
演奏/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
   イギリス・室内管弦楽団*
P:大賀典雄、ディヴッド・モットリー*
E:半田健一、マイク・ロス・トレヴァー*

録音/1981/08/27 芸術家の家、プラハ
   1986/09/27-28 EMIアビーロード・スタジオ、ロンドン*

CBSソニー FCCC50180


 日本のソニーの海外録音の一枚です。CD発売前夜、ソニーはCD開発メーカーの威信にかけて自社制作のデジタル録音レコードを積極的に発売していました。チェロは堤、ピアノは中村紘子、ヴァイオリンは前橋汀子などのアーティストが起用されていました。堤剛はこれ以前にも同曲を68年頃秋山和慶/日本フィルとソニーにライブで録音していましたから再録音ということになります。このCDのプロデューサーは大賀典雄氏。そうです、後年のソニー社長・名誉会長になった大賀氏です。当時クラシック部門のプロデューサーとして活躍していたのでした。この録音は当初はCDでは無く、LPで、マスターサウンド・シリーズで1982年に発売されていたもので、1枚3200円もしたものです。それも、ドヴォルザーク1曲のみの収録という贅沢なものでした。この録音は後になっていろいろな形で再発売されています。このCDは一般市販されたものではなく、ソニー・ファミリークラブというところから発売された100枚組のセットの中に収録されていた一枚で、別に発売されていたハイドンのチェロ協奏曲がカップリングされています。今回の紹介ジャケットは中古購入でそのオリジナルジャケットがが紛失しているためLP発売時のものを掲載しました(32AC1392)。

 第1楽章からややスローなテンポで開始されます。当時はフルニエ/セルのきりっと引き締まったインテンポの演奏に耳がなれていましたのでこの演奏に始めて接したときはやや違和感がありました。しかし、こうして時を経て今日、改めてこの演奏に接するとこのテンポにそうしたわだかまりは消えています。ちょっとは自分に包容力が出来たということでしょうかね。サポートするのは本場チェコの指揮者コシュラー/チェコフィルです。どっしりとした骨太の演奏で安定感があります。録音も優秀でホールの特性を生かしたチェコ・フィルの深々とした美しい音色が響きます。チェコフィルの特質である木管の肌触りの音色も温かく聴こえます。デジタル収録ということでダイナミックレンジの広いサウンドが展開します。堤のチェロがまた渋い音色で気合いの入った演奏です。多少テンポは重たいものの重心の低い演奏でじっくりと聴き込むほどに味わいがあります。

      演   奏第1楽章第2楽章第3楽章
l堤剛/コシュラー/チェコフィル16:1512:1613:13
シュタルケル/ドラティ/ロンドン響15:0011:0711:40
ロイトロポーヴィチ/小澤/ボストン14:4411:5812:16
フルニエ/セル/ベルリンフィル14:4411:2312:19
マ/マゼール/ベルリンフィル16:1012:5113:23

 特に情緒豊かな第2楽章がことのほか美しい演奏になっています。コシュラー/チェコ・フィルの反応もよく、格調高い堤のチェロとオーケストラとの会話も息が合っています。コシュラーとチェコフィルのコンビによる録音が少なかったのが残念でなりません。

 余談ですが、昨年11月のプラハでの堤氏のコンサートは丁度フジテレビの「のだめ」の収録時と重なったようで、その日のコンサートの模様もクルーが収録したということです。

 もう一曲収録されているハイドンのチェロ協奏曲はややオンマイク気味の録音で、それこそ、室内楽の雰囲気で目の前で演奏が繰り広げられているような感覚になるリアリティの高い録音です。はやりの古楽奏法ではないのでしっとりとした中にも華やかさがある響きが特徴になっています。

 バロック期の作品ながらソナタ形式を用いたスケールの大きな作品で親しみやすいメロディとともに小生のお気に入りの曲です。まあ、こういうカップリングなので掘り出し物として入手した次第なんです。こちらの録音は本来は第2番とのカップリングで発売されていたようなのですが、オリジナルは廃盤で手に入れることはできないようです。この曲は1961年にプラハで発見されたという曲で、自身のカデンツァが残っていた曲として知られています。ここでも堤氏のスケール感のある素晴らしいカデンツァが聴けます。

 指揮者の ホセ・ルイス・ガルシアは名前を聞いたことがなく、未知の気分で楽しみました。後には宮本文昭とモーツァルトのオーボエ協奏曲なんかを録音していて、ソニーからはわりと録音が出ているようです。もともとはヴァイオリニストらしく自身の演奏で録音もあるようです。あまり特徴のある指揮ではありませんが、サポートはしっかりしています。

 今はドヴォルザークの協奏曲のみが小曲とのカップリングで廉価盤で出ているようです。

イメージ 1 ソニー SRCR-1528