
インターネットのホームページに小坂井ゆきという人物の葬儀を知らせる奇妙な伝言が。伝言によると葬儀会場は首都高速羽田線?西本刑事から話を聞いた十津川警部は、これは「処刑のメッセージ」と直感、小坂井ゆきは女優の小坂井ゆかの旧芸名であることをつかんだそのとき、ゆかが首都高速で車を狙撃され死亡した!犯人はなぜゆかの旧名を使ったのか?インターネットにアクセスした謎の人物とゆかとの意外な接点とは?次々起こる難事件に、十津川警部が全身全霊をこめて死闘の限りを尽くす!力作短編四本を収録した、待望の「十津川警部シリーズ」第七弾。---データベース---
この本のカバーでの著者の発言の中で「短編のほうが緊張する。長編はラストだけを決めて書き出してしまう。もちろん書き出しには凝るし、始めてしまえば何とかなるのだが,短編の場合はそうはいかない。」ということが書かれています。つまりは短編は起承転結のバランスが大事で、上手く書き上げたときは長編には無い満足感を味わうことができるそうです。たしかに、最近の長編を読んでいるとそういう感を強く感じます。この4編の中で「加賀温泉郷の殺人遊戯」は「十津川警部捜査行 -北陸事件簿-」で紹介しています。
◆心中プラス1
中小企業の老夫婦がホテルで自殺します。それ自体は心中事件で問題は無かったのですが,その時一人の男が自殺した部屋から出て来るところを目撃され,そのことが警察に知れるところとなります。その人物が問題だったのです。男は時の首相の政策ブレーンの一人でもある政治評論家の「小早川勇」でした。そこで内密に十津川警部が調べることになります。問題の女はホテルのルームサービス係で「原田君子」。しかし,既に仕事を辞めていて、引っ越しもしていました。どうも影で大金を手に入れたようです。強請のにおいがします。
案の定、彼女は数日後死体で発見されます。こうなってくると殺人事件ですから,おおっぴらに小早川を追求出来ます。仮説を立て北条刑事に一芝居打たせて犯人を陽動作戦であぶり出します。おとりに扮した北条刑事が襲われる瞬間、十津川警部と亀さんは飛び出して犯人を現行犯で緊急逮捕です。一般人だと襲われてからの逮捕ですが刑事の場合は襲われる前に逮捕です。ちょっと身びいきですがそこら辺はよしとしましょう。
中小企業の老夫婦がホテルで自殺します。それ自体は心中事件で問題は無かったのですが,その時一人の男が自殺した部屋から出て来るところを目撃され,そのことが警察に知れるところとなります。その人物が問題だったのです。男は時の首相の政策ブレーンの一人でもある政治評論家の「小早川勇」でした。そこで内密に十津川警部が調べることになります。問題の女はホテルのルームサービス係で「原田君子」。しかし,既に仕事を辞めていて、引っ越しもしていました。どうも影で大金を手に入れたようです。強請のにおいがします。
案の定、彼女は数日後死体で発見されます。こうなってくると殺人事件ですから,おおっぴらに小早川を追求出来ます。仮説を立て北条刑事に一芝居打たせて犯人を陽動作戦であぶり出します。おとりに扮した北条刑事が襲われる瞬間、十津川警部と亀さんは飛び出して犯人を現行犯で緊急逮捕です。一般人だと襲われてからの逮捕ですが刑事の場合は襲われる前に逮捕です。ちょっと身びいきですがそこら辺はよしとしましょう。
◆処刑のメッセージ
データベースに紹介されている事件です。こうしたサイバー関係の事件では西本刑事が中心になります。データベースではホームページということになっていますが,実際には掲示板という記述になっています。この小説は1999年7月に発表されていますが,多分ニフティのようなパソコン通信時代のフォーラムにメッセージが掲示されたものでしょう。個人のホームページなら犯人は直ぐに特定出来てしまうからです。その証拠にメッセージの発信人は全くの別人という設定です。犯行予告にインターネットを使うというアイデアは斬新ですが、それを西本刑事が偶然に発見するのはやや設定に曖昧さが残ります。
データベースに紹介されている事件です。こうしたサイバー関係の事件では西本刑事が中心になります。データベースではホームページということになっていますが,実際には掲示板という記述になっています。この小説は1999年7月に発表されていますが,多分ニフティのようなパソコン通信時代のフォーラムにメッセージが掲示されたものでしょう。個人のホームページなら犯人は直ぐに特定出来てしまうからです。その証拠にメッセージの発信人は全くの別人という設定です。犯行予告にインターネットを使うというアイデアは斬新ですが、それを西本刑事が偶然に発見するのはやや設定に曖昧さが残ります。
殺された女はストーカーまがいの男に付きまとわれていました。女はそれをヤクザの柏原という男に頼んで暴行を加えて引き下がらせます。当時は脆弱だったストーカーの林卓一は復讐に燃え、一念発起して沖縄に渡りロッキー並に体を鍛えます。しかし,その後がいけません,米軍からM24SWSという狙撃中を盗み出すのですから。こういうことで犯人の面は割れてしまいます。後は,次の殺人事件に備えての追跡です。いいテンポでストーリーはクライマックスへ向かって展開します。事件の舞台は北陸,能登島へと移ります。ここで、壮絶な銃撃戦が展開されます。柏原も撃たれますが,応戦した西本、日下刑事の放った弾が犯人を倒します。十津川警部がけ駆けつけた時には犯人は言切れる寸前でした。
まあ、実際の日本の警察がこんな風に拳銃をぶっ放すことはほとんど無いはずですが,ここでは刑事の撃った弾で犯人は死んでしまいます。十津川警部は、咄嗟に自分の拳銃を空に向かって2発射って誰の弾が当たったのか分からないように処置します。上司としてのけじめをつけるところはさすがです。
まあ、実際の日本の警察がこんな風に拳銃をぶっ放すことはほとんど無いはずですが,ここでは刑事の撃った弾で犯人は死んでしまいます。十津川警部は、咄嗟に自分の拳銃を空に向かって2発射って誰の弾が当たったのか分からないように処置します。上司としてのけじめをつけるところはさすがです。
◆特別室の秘密
ある意味、このストーリーは十津川警部の妻の直子が主人公です。もちろん,実際の事件を解決するのは十津川警部であり,警察なのですか事件性を嗅ぎ付け、犯罪を解明していくのは妻の直子です。ここで、妻の直子は突然激痛に襲われ救急車でアジア第一病院へ運ばれます。病名は「尿道結石」。これはなったことが無い人には分からないと思いますが、それこそ七転八倒の苦しみです。激痛で呼吸するのも苦しく、動くことも出来なくなります。小生も二度ほどこの「尿道結石」で救急車のお世話になりました。ただ、痛みが治まるとけろりとしたもので病気だとは思えません。そこら辺の描写が、このストーリーでは生きています。ということで、直子は病院内を自由に動き回り,立ち入り禁止の病室を発見し、事件のにおいを嗅ぎ付けます。そして、十津川警部に逐一報告しそのことを告げます。ストーリーは一瞬入院患者ぐるみの隠蔽かと思わせる展開も見せますが,そういう小細工は無くストレートに事件に迫っていきます。後半は思いがけない展開で事件性が発覚し怒濤の結末を迎えます。テーマとしては短編にはもったいないようなものです。惜しむらくは,最後に活躍した直子へのいたわりの言葉をかける十津川警部のシーンがあってもいいのでは、ということをちらっと感じました。
ある意味、このストーリーは十津川警部の妻の直子が主人公です。もちろん,実際の事件を解決するのは十津川警部であり,警察なのですか事件性を嗅ぎ付け、犯罪を解明していくのは妻の直子です。ここで、妻の直子は突然激痛に襲われ救急車でアジア第一病院へ運ばれます。病名は「尿道結石」。これはなったことが無い人には分からないと思いますが、それこそ七転八倒の苦しみです。激痛で呼吸するのも苦しく、動くことも出来なくなります。小生も二度ほどこの「尿道結石」で救急車のお世話になりました。ただ、痛みが治まるとけろりとしたもので病気だとは思えません。そこら辺の描写が、このストーリーでは生きています。ということで、直子は病院内を自由に動き回り,立ち入り禁止の病室を発見し、事件のにおいを嗅ぎ付けます。そして、十津川警部に逐一報告しそのことを告げます。ストーリーは一瞬入院患者ぐるみの隠蔽かと思わせる展開も見せますが,そういう小細工は無くストレートに事件に迫っていきます。後半は思いがけない展開で事件性が発覚し怒濤の結末を迎えます。テーマとしては短編にはもったいないようなものです。惜しむらくは,最後に活躍した直子へのいたわりの言葉をかける十津川警部のシーンがあってもいいのでは、ということをちらっと感じました。