アシュケナージのプロコフィエフとショスタコーヴィチ | geezenstacの森

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アシュケナージ
プロコフィエフとショスタコーヴィチ

ブロコフィエフ/交響曲第1番ニ長調 Op.25 "Classical" *
1. Allegro 4:06
2. Larghetto 4:49
3. Gavotta (Non troppo Allegro) 1:40
4. Finale (Molto vivace) 4:12
ショスタコーヴィチ/交響曲第5番ニ短調Op.47**
5. Moderato 16:32
6. Allegretto 5:19
7. Largo 14:45
8. Allegro non troppo 10:56

 

指揮/ウラディーミル・アシュケナージ
演奏/ロンドン交響楽団*
   ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団**
録音 1974/01* キングスウェイ・ホール、ロンドン
   1982/05** ウォルサムストウ・アセンブリー・ホール、ロンドン
P:レイ・ミンシャル*
 ポール・マイヤーズ**
E:ケネス・ウィルキンソン*
 ジョン・ダンカーリー** 

 

DECCA F28L-28019 417710-2 

 

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 同朋舎出版から発売された最初期の「グレートコンポーザーシリーズ」の一枚です。アシュケナージは1970年以降指揮活動を活発に行うようになりました。指揮者の活動の最初は、1970年アイスランド交響楽団への客演と言われています。そして、1974年にロンドン交響楽団を指揮して、プロコフィエフ「古典交響曲」などを録音し初レコーディングしました。ここに収録されているものがその記念すべき録音です。1981年にはフィルハーモニア交響楽団首席客演指揮者、1987年から1994年までロイヤルフィルハーモニー管弦楽団音楽監督、1988年-1994年クリーブランド管弦楽団首席客演指揮者、1989年-1999年ベルリン放送交響楽団(後にベルリン・ドイツ交響楽団)音楽監督、1998年-2003年チェコフィルハーモニー交響楽団音楽監督を歴任し、2004年9月よりNHK交響楽団音楽監督、そして退任後はシドニー交響楽団の音楽監督が予定されています。良くまあ、ピアニストとしても活動しながらこれだけ精力的に指揮も出来ると感心してしまいます。でも、一つところに長く定住しようという気はないようです。彼の録音はデッカから継続的に発売されていますが、まとまった全集はあまり眼中には無いようですね。先頃、ショスタコーヴィチの交響曲全集が発売されましたが、オーケストラはここに収められているロイヤル・フィルとの5番を始め、サンクト・ペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団、そして、我がNHK交響楽団との演奏が収録されています。
 
 さて、プロコフィエフの交響曲第1番は交響的スケッチ「秋」とともに、デビュー盤として1974年に発売されました。まだ、足が地に着いていないのか何処となくおっとりとしたテンポ運びです。お国ものの作品を選んだということでは安全運転を狙ったのかもしれませんが、名演として知られるショルティ/シカゴのきびきびとした演奏と比べると演奏の切れというものがちょっと感じられません。しかし、初録音ということで自身も確かめるべく、各フレーズのバランスと楽器の響かせ方に注意を払っているのが手に取るように分かります。やや、面白みには欠けますが、曲の構造が手に取るように分かる演奏です。構成的には「古典」といわれているように伝統的な形式に基づきながらもプロコフィエフの独特の和音が響く近代音楽を分かりやすく、無難に料理しています。

 

 これに対して当時手兵となったロイヤル・フィルとのショスタコーヴィチの交響曲第5番は、指揮者アシュケナージの成長の跡が伺える演奏となっています。こちらも、ロイヤル・フィル就任第1弾となった録音です。なかなか、このCDは憎いばかりの選曲となっていますが、これはバッタもんシリーズの一枚なんですね。ロイヤル・フィルはポップスまでこなすオール・マイティのオケですが、そういう特色輪生かして実にパワフルな響きをこのオケから引き出して、名演がひしめくこの曲に確固たる足跡を残しました。それが、証拠にロイヤル・フィルと録音した第4番はNHK交響楽団の演奏に差し替えられましたが、この録音は一番古いにも関わらず全集に収録されています。

 

ショスタコーヴィチ/交響曲第5番演奏時間比較

 

演奏、録音年 第1楽章 第2楽章 第3楽章 第4楽章
アシュケナージ/ロイヤルフィル/87 16:31 5:15 14:43 10:55
ヤンソンス/オスロフィル/87 14:02 4:50 11:54 10:12
ハイティンク/コンセルトヘボウO/79 18:02 5:22 15:41 10:35
バーンスタイン/ニューヨークフィル/65 16:14 4:55 15:34 8:56

 第1楽章から緊張感ある響きで、オケを纏め上げ金管はロシアのおけら近いパワフルなサウンドを聴かせます。デッカの録音は左右の広がりをたっぷり取った重心の低い録音です。まあ、難点はアシュケナージのうなり声がそこかしこに聴かれることです。ピアノでは自分の指先で音楽を表現出来るのでそんなことは無いのですが、指揮では自分で音を出す方法はうなりしか無いんでしょうね。

 

 

 

 

 

 圧巻は何といっても第4楽章です。ここは指揮者の解釈で速いテンポで畳み掛けるように演奏したり、じっくり地に着いたテンポで粛々と主題を奏でる演奏に別れるのですが、アシュケナージは後者の方法で同郷の作曲家の意志を明確に刻みます。この楽章ではホルンが突出して響く箇所があります。そこが他の指揮者とやや違った演奏に聴こえます。普通はトロンボーンの吹く主旋律が当然なようにメインで響くのですが、アシュケナージはそれ以上にホルンの旋律を強奏させています。このバランスは最初違和感がありますが、何回も聴いているとアシュケナージのヴォルコフの証言に対する一つの解答のような気もしてきて、自分では納得しています。

 

 それにしても、このデッカの録音は凄いです。第4楽章の最後のティンパニの打ち込みは地響きがする迫力です。テラークの録音の比ではありません。こんな優秀録音がバッタもんCDとして流布していたのですから恐れ入ります。これは掘り出し物です。