FAR EAST/世界の車窓から | geezenstacの森

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FAR EAST/世界の車窓から
曲目
1. 世界の車窓から 6;50
2. ディライト 7:09
3. リヴィング・ストーン 5:23
4. ブルー・カクタス 7:33
5. スティル・ライフ 6:51
6. クワイエット・デイズ 3:23
7. 66マイルズ 6:08
8. アメイジング・グレイス 3:44
9. 緑の影2 5:03
10. オ・マレンナレロ 4:17
11. 世界の車窓から(オーケストラ・ヴァージョン) 3:29

チェロ/溝口肇
指揮/イェルジィ・スヴオボダ 6-11
演奏/ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団 6-11
録音 1988 ワルシャワ・フィルハーモニー・ホール 他ロンドン、バリ、ローマ、東京

ビクター・エンタティメント VICL-60158

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 ベース,ドラムを加えた小編成のコンボで演奏されたジャズ的な作品と,オーケストラを従えてのクラシック的な作品とを半分ずつ収録しています。どちらも哀愁のあるチェロの持つ深みのある澄み切った情感が響く演奏で世界旅行が味わえます。

 溝口肇のヒット曲といえば何といっても「世界の車窓から」でしょう。1986年の放送開始から続く番組で、基本的には毎日放送(地方局は放送の無い日もあるようですが・・・)されていますからこの曲が流れているのですから知らない人はいないのでは無いでしょうか。もちろんタイトルナンバーはテレビ朝日系で放送されている長寿番組、同タイトル番組のテーマ曲として知られている曲です。お膝元の名古屋ではニュースステーションー報道ステーションの後番組として放送されているのでなにげなしに見てしまう番組です。溝口肇の音楽とともに、石丸謙二郎のナレーションも切っても切れないものになっています。

 ちょっと話はそれますが、今から30年も前になりますがそれまで国内すら旅行していないのに急に思い立って卒業旅行で約1ヶ月間、ヨーロッパを旅行しました。行きと帰りの1泊だけは宿が決まっていますが後はご自由にという学生専用のパックツァーです。今でもダイヤモンド社が主催している「地球の歩き方」での旅行です。この旅行には21日分のユーレイルパスの料金が含まれていました。当然移動は鉄道でということです。いまはどうか知りませんが、イギリスは使えませんでしたからドーバー海峡を渡ってからスタートということになります。オランダから始まり、ベルギー、西ドイツ(当時はまだ東西に分裂していました)、オーストリア、イタリア、スイス、スペイン、フランスと巡りました。ユーレイルパスは1等のコンパートメント式の客車に乗ることができるので時間節約のために移動は夜行列車です。そのために、下準備でトーマスクックの時刻表と首っ引きでルート調べです。友人と二人でしたが基本的には自由行動なので時には一人で移動しました。国境で検閲はありますが、基本的にはフリーです。まるで、ヨーロッパの国々を国内にいる感覚で自由に行き来しました。列車の旅は快適で特にドイツ国鉄はどの列車にも運行表が置いてあって凄くサービスが行き届いていた記憶があります。また、スイスからスペインに入った時は「カルタン・タルゴ号」に乗り、普通は軌道の幅が違うので乗換えなくてはならないのですが、この列車だけは自動で軌道の幅を変えられるのでストレートでスペインはバルセロナまで行くことができました。

 そういった過去を思い出させてくれるのがこの番組であり、このアルバムです。この番組からの印象からもあるのでしょうが、非常にノスタルジー感のある曲であり、また、旅に出たくなるような気持ちに駆り立てられます。1曲目のバージョンはコンボで演奏されているものでジャズ・フュージョンの香りがあり、時にはSLを模した効果音的なサウンドも取り入れられていて旅の始めに相応しい演奏になっています。

 3、4曲目はロンドンでのレコーディングのようです。曲と同じリビング・ストーンスタジオでの録音と紹介されています。 ストーン・ヘイジをイメージしましたがアイルランドの「巨人のテーブル」の方のイメージのようです。カクタスはサボテンの事ですがモロッコでの出来事の着想のようです。コンピーターを使わずセッション録音でファーストテイクを収録しています。サックスの響きがいい味をだしています。

 生ギターのイントロで始まり。ピアノにかぶせてチェロが「世界の車窓から」のテーマを浪々と謳い上げます。旅の途中の間奏曲といったイメージです。タイトルにもそんな意味が込められているのでしょうか。そして、ここでがらっと曲調が変わります。

 6曲目からオーケストラをバックにした演奏になります。静寂の日々ってどういう意味なんでしょう。まあ、穏やかな列車の旅は続きますけど。夕日の中を駆け抜けていく列車をイメージすると次の曲に繋がりますね。
 7曲目はストリングスによる重厚な響きの後アフリカンリズムのようなパーカッションの響きで66マイル(約100キロ)という旅に誘ってくれます。8曲目は言わずもがなののイギリスの第2の国歌ともいうべき名曲です。切々としたチェロの調べに乗って弦楽主体のオーケストラが厳粛な響きを奏でます。9曲目は菅野ようこのピアノソロが光ります。まあ、夫婦ですから相性は10曲目の「オ・マレンナレロ」だけに男性のボーカルが入ります。サウンド的には中近東からアフリカにかけてのイメージです。歌詞カードがありませんので内容は不明ですが、渋みのある男性のヴォーカルで味わいがあります。
最後はもう一度テーマ曲が流れます。こちらは、オーケストラバージョンで旅の終着を思わせる実りのある充実感を漂わせています。

 イージー・リスニングという言葉は今は死語になってしまいましたが、それに変わるフィリーリングミュージックとして聴くならば最高の出来映えの一枚です。

 下はテレビ朝日の「世界の車窓から」のホームページです。この中から撮影日記をたどると過去の放送分の国々が紹介されています。


さて、この曲について作曲者の溝口肇さんはホームページに以下の事を書いています。これを読むと、テーマの部分以外は後になってから作曲されたんですね。
いわずとしれたテレビ朝日系列で毎日放映中の番組、「世界の車窓から」のテーマ音楽です。
これを作曲したときは、かれこれ16年近く前になりますが、まさかこの20秒の曲を フルサイズにするなんて考えなかったので、非常に苦労しました。やはりこれだけの年月と 短くても毎日の放映で音楽を覚えていただくと、逆に、あのメロディーの後は どうなっているんだ、という大きな期待が僕にもとてもプレッシャーになり、実は1年近く 書けなかったのです。僕の周りの友人でも、こんなサビはどう?なんてひやかすのも・・・。
このまま後10年くらい続いて、最長長寿番組になればいいなぁ、と期待しています。
ちなみにこの曲のミックスは、僕自身が自分のスタジオでやっています。