懐かしのN響アワー | geezenstacの森

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N響アワー

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 今回は1980年代のNHK教育テレビで放送されていた「N響アワー」を取り上げます。この頃のN響アワーはFMと同時放送をしていました。というのも教育テレビはまだステレオ放送をしていなかったので画像はテレビで,音声はFMのステレオ放送で楽しむという方法をとっていたのです。

 当時我が家にはこのサイマルキャスト放送に対応するビデオデッキが偶然ありました。日立のマスタックスVT-86という機種で、当然ながらそういう形で録画が可能でした。つまり、画像はテレビ。音声はFMということでの録画です。ただ、時間帯が昼の午後1時からということで、当時日曜日も仕事をしていたのでなかなか録画チャンスには恵まれませんでした。

 「N響アワー」は芥川也寸志、なかにし礼、それに木村尚三郎という三人の座談会形式でうんちく話を盛り込みながら進んでいきました。メンデルスゾーンは絵も描いたということでこの回は「メンデルスゾーンの絵画展」というサブタイトルが付き,下記の曲目が演奏されました。

1.序曲「フィンガルの洞窟」Op.26 指揮/ウォルフガング・サヴァリッシュ
2.交響曲第5番Op.107「宗教改革」 指揮/イルジー・ビエロフラーベェク

 もっぱら風景画を主体とした作品でしたが、茶系統を主体とした色使いで生活感のない絵でした。インターネットで検索とても彼の絵が出てこないのでとりあえず番組の中で紹介された絵をキャプチャしたものを紹介しておきます。人物の描かれたものもありますが、まるで漫画のようにカリカチュアされたものでちょっと違和感がありました。まあ、金持ちのオボッちゃまが余技で書いた作品という程度でしょうか。音楽に関しては才能が開花したけれど絵画の方は天才肌ではなかったということでしょうね。
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 1曲目の序曲「フィンガルの洞窟」Op.26は冒頭NHKのカメラマンが撮影したフィンガルの洞窟の風景を流しながら始まりました。「フィンガルの洞窟」はメンデルスゾーンが曲で紹介してから有名になったところで、入り口の高さ約69m、奥行き約20mであり、メンデルスゾーンは、1829年に訪問しています 。

 サヴァリッシュの指揮は実に手慣れたものでさっそうとした中にも風格があります。この頃は1000回目の記念定期でメンデルズーンの「エリア」を指揮していますが彼の作品はお手のものだったでしょう。この頃の特徴で左手指先を頻繁に動かし細かい指示を与えています。サヴァリッシュはこの曲を何回も取り上げていますが、この回は1984年5月9日の第931回定期公演のものが放送されました。レコードではニュー・フィルハーモニア管弦楽団と録音を残していて、それも好きな演奏で下が、映像を伴うこの日の演奏は音作りの様が手に取るように分かり非常に興味深いものです。2006年に事実上引退してしまったサヴァリッシュですがこういうNHKに残された映像がアーカイブの形で陽の目を見るといいですね。

 さて、もう一曲はビエロフラーベックの指揮する「宗教改革」です。この人も80年代頻繁にN響に登場しましたが、最近はとんと名前を耳にしません。チェコフィルの常任になったかと思えば民主選挙で追い出されそれ以来鳴かず飛ばずです。しかし、音楽の作りはきっちりしているしN響との相性も悪くはなかったと思うんですがね。2006年7月からはBBC交響楽団の首席指揮者に就任していますからまだまだ活躍してくれるでしょう。

 きっちりと分かりやすい指揮をする人でやや面白みには欠けますが悪くはありません。「宗教改革」はメンデルスゾーンの交響曲の中ではあまり聴かない方ですが、この演奏は見入ってしまいました。この曲がこんなに魅力的に聴こえたのも初めてといっていいほど新鮮に響きました。

 第1楽章から弦を恣意的に強調するように響かせ、スケールの大きなうねりを作り出しています。この頃の編成は左から第1、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ。コントラバスという並び方でこれはサヴァリッシュ、ビエロフラーヴェク共通のようです。

 第3楽章と第4楽章は続けて演奏されています。中庸のテンポでですが推進力があり音楽が流れています。歯切れのいいリズムで躍動感があります。清々しい感じでこの曲を楽しむことができました。
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