鎌倉湘南殺人ワールド | geezenstacの森

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鎌倉湘南殺人ワールド

著者 斉藤 栄
出版社 徳間書店 徳間文庫

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 関東新聞文化部の柏木太郎は、かつて学芸部で親しくしていた先輩記者の渡辺公一と「鎌倉シネマワールド」を訪れた。「関東のテーマパーク」の取材だったのだが、場内が一瞬停電した隙に、公一は毒を塗った星型のボールをぶつけられ昏倒、鶴来総合病院長・柏木陽一の適切な処置で一命をとりとめた。プレイボーイの公一に恨みを持つ女が六人も浮上し、太陽は、この六人と柏木院長らが一同に集まる機会を作った。が、会場となったホテルのエレベーター内で、公一は毒殺されてしまったのだ。---データベース---

 「佐賀空港マラソン殺人事件」では散々だった柏木太陽ですが、ここでは、記者仲間が襲われ、殺されるという事件に遭遇しています。時期的には毎朝新聞に出向する前の関東新聞時代の出来事です。鎌倉シネマワールドが出てくる懐かしい設定です。1995年から1998年の3年間しか存在しなかった施設ですからもう記憶の彼方にしかありません。ウィキペディアには以下の記述しかありません。

 「1995年に松竹創立100周年記念事業として松竹大船撮影所の敷地内に建てられた。3階建てで延べ28000平方メートル。時代劇のセット、黄金期のハリウッドを再現したゾーンがあった。オープン当時は好調だったが、2年目以降になると、映画「男はつらいよ」主演の渥美清死去もあり、入場者数は激減し、1998年2月期の決算では16億円もの巨額な赤字を出し、営業も困難なため1998年12月15日に閉鎖した。」

 この施設の中で傷害事件が起こります。突然停電し、どこからか毒を塗ったボールが投げつけられます。この設定、後からよくよく考えますと凄い無理があります。まず、停電させるということは施設の電気関係に精通していなければなりません。また、ボール型の凶器を投げつけるのですが、皮膚を傷つけなけれは意味がありませんので露出している部分を狙わなければなりません。ということはコントロールがしっかりしていなければ成立しない事になります。果たして、一人て可能なのかなという事件です。ましてや、素手で投げれば自分もけがをして加害者ならぬ被害者になってしまいます。こんな不思議な事件です。

 まあ、細かい突っ込みはそれ位にして、太陽は警察にも連絡せず、負傷した公一を知り合いの病院まで連れて行ってしまいます。殺人未遂にもかかわらず、ここら辺の初期設定はどうもルール違反ですね。

 犯人は関係する6人の女性ら絞り込まれます。それにしても、ここで使われた毒というのはSSBと呼ばれる麻薬の一種です。こういう麻薬がある事すら知りませんでしたが、こんなものを扱うことができる人物は芸術家関係しかいないのではという推測も成り立ちます。そこで、6人の女性を鎌倉プリンスホテルへ集めます。なぜ、ここが舞台かというとここには「斜行エレベーター」なる珍しい施設があるからです。そして、これが殺人の舞台となります。容疑者は以下の6人です。
木村 弘子 関東新聞社学芸部記者。
須川 恵美 関東新聞社社会部記者。
岩倉 加津 関東新聞社総務部員。
秋田 年子 ホワイト銀行窓口係。
高沢 味知 鎌倉在住の新進画家。
赤司 文代 湘花高校国語教師。

 殺人事件に発展し、いよいよ警察の登場です。かつての二階堂警部の部下の後藤という鎌倉南署部長刑事がお飾り的に登場します。事件は、あくまで太陽と鶴来総合病院長・柏木陽一、それに病院のリエゾンナース、水沢春花が解決して行きます。

 開始は、やや違和感がありましたが、結末は意外な隠し球が待っています。まあ、これがあるからそこそこ読み応えのある作品に仕上がっています。