十津川警部の事件簿 | geezenstacの森

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十津川警部の事件簿

著者/ 西村京太郎
出版/ 徳間書店 徳間文庫
発行年月 2001年06月

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 「関根パン」の製品を小売店に配達する営業員の岡田は、得意先の女主人・幸江との情事を楽しんでいた。が、ある日、幸江の店先にライバル社のパンが積まれているのを発見。他の男に乗りかえたことを覚った岡田は、嫌がらせのためにそのパンに下剤を仕込んだのだが、なぜか、それを食べた幸江が毒死してしまったのだ!?「甘い殺意」等、若き日の十津川警部の活躍を描いた六篇を収録する傑作集。---データベース---

 この本には下記の6編が収録されています。
1.甘い殺意
2.危険な賞金
3.白いスキャンダル
4.戦慄のライフル
5.白い罠
6.死者に捧げる殺人

 冒頭のデータベースは最初の「甘い殺意」を紹介しています。十津川班には次の刑事がいます。
亀井刑事
西本刑事
日下刑事
三田村刑事
北条早苗刑事
田中刑事
片山刑事
しかし、この事件には最初江本刑事があたります。しかし、犯人の供述と犯行方法があまりにも違いすぎるところに疑問を持ち十津川警部は亀井刑事に再捜査を指示します。そして、この小説で亀さんが45歳になった事が明らかにされます。十津川警部は自ら動く事は無く報告のみで事件を解決してしまいます。まあ、単純な殺人事件ですからこんなもんでしょうか。ただ、記述に古めかしいところがあり、1998年の作品にしてはパン屋が未だに木箱でパンを配達している事になっています。こんなパン屋は無いはずです。何処も業界の統一規格のプラスチック製の箱を使っているはずですから。

 「危険な賞金「白いスキャンダル」」はゆすり、たかりの類の事件です。前者は証言から医者の不審な行動を見抜く十津川警部の彗眼には恐れ入ります。後者では「ゆすり」に女の愛憎がプラスされます。うーん、実に女は恐ろしいといったところでしょうか。

 スナイパーを扱った「戦慄のライフル」はハードボイルド並みの面白さがあります。桜井と井上という刑事が登場しますが、犯人の護送中に襲われ奪取されてしまいます。新幹線の中でこんな事ってあり?と思いますがね。・・・犯人の岡部の腕は超一流です。しかし、事件は暴力団も出てきません。狙撃は確実になされました。しかし、死者は出ませんでした。と同時に犯人逮捕もされていません。いわば結末の無い事件で未解決のままのエンディングです。

 「死者に捧げる殺人」は亀さんが息子とプロ野球の観戦に出かけます。この頃は、筋金入りのアンチ巨人で、巨人ファンの息子、健一と意見が合わない親子の設定になっています。この年は巨人がリーグ優勝をしています。ところが、「午後九時の目撃者」(「行楽特急殺人事件」収録)の頃には巨人ファンに転向しています。どういう心変わりなんでしょうね。まあ、巨人も弱くなったからそういうものへの同情なのでしょうか。パ・リーグでは近鉄バファローズのファンということですが球団の無くなった現在はどうなのでしょうかね。殺人事件は亀さんの目の前で発生します。

 この事件では昭和35年4月16日に起きた全日航機の墜落事故がポイントとなっています。事件は昭和58年に起きていますから13年前の出来事ということになります。ことは事故の真相を巡っての殺人事件となるのですがスケールの大きな割にはあっけなく犯人が割れていきます。ここでは三上本部長が意外な活躍を見せます。心憎い演出です。