ストコフスキーとスタインバーグブラームス/交響曲第3,4番
曲目/ ブラームス1.交響曲第3番ヘ長調Op.90
2.交響曲第4番ホ短調op.98*
指揮/レオポルド・ストコフスキー
ウィリアム・スタインバーグ*
演奏/ヒューストン交響楽団
ピッツバーグ交響楽団*
録音/1958
BEDCOL CD517

このCDは、多分正規のライセンスを受けていないいわゆる海賊版に属するものでしょう。CDには発売元はもちろん解説も全くありません。音源は後に正規ルートで発売されていますからエヴエレストだという事はわかります。CD初期に出たこのディスクはプレスはイギリスのニンバスが行っています。録音は一応ステレオですが、Dレンジが広くなく高域がさっぱり伸びていないので、まるでAM放送で聞いている様な感じです。
こちらは20bitでリマスタリングされています
それでも、少し聴いただけでストコフスキーの演奏だという事はわかります。木簡のフレーズを独特の節回しで吹かせたり、主旋律を強調するルバートが各所で見られ、まるでジプシー音楽を聴いているように感じられます。交響曲第3番は第1楽章から快調なテンポで飛ばします。この楽章ほど指揮者による解釈の違いで演奏時間に差の出る楽章もないでしょう。ストコフスキーは10:12で演奏していますが。ハイティンク/ボストンSOなんかは14:27、かのトスカニーニでさえ、13:39かけて演奏しています。ブラームスの指定はアレグロ・コン・ブリオですから、普通に演奏すれば10分前後といったところでしょうか。ストコフスキーは妥当なテンポ設定です。
音の響かせ方が独自なのか、ちっともドイツ的な重厚さは感じられませんが、曲を面白く聴かせるという点ではストコフスキーの右に出るものはいません。長生きを下にもかかわらずストコフスキーは全集というものを録音していません。このブラームスも個々では録音していますがこの3番は一番古いステレオ録音で、いささか鮮度が落ちるのが残念です。
第4番の方はウィリアム・スタインバーグの式による演奏です。スタインバーグはいわずと知れたピンかす・スタインバーグの親父さんで、ドイツ生まれながら長くアメリカで活躍したのでアメリカの指揮者のイメージがあります。ここでは手兵のピッツバーグ交響楽団を指揮していますが、同じ頃、米コマンドにブラームスの交響曲全集を別録音しています。
こちらの録音もストコフスキーと同時期の録音と思われますが、聴感上はオーケストラの配置がコントラバスを中央に、第2ヴァイオリンを右側に配置した録音になっているように聴こえますから、ステレオ感は充分ではありません。不思議なことにストコフスキーの第3番は楽章ごとにトラックが設定してあるのにこの4番は1、2楽章と3、4楽章がが続けて収録されています。そう注意して聴くと、どうもこちらの方がひずみっぽく聴こえます。演奏は推進力のある馬力のある演奏でピッツバーグ響のレベルの高さが伺えます。ただ、内面的な充実度にはほど遠く、ブラームスの持つ室内楽的な深淵性とは無関係な演奏です。ショルティもそうですが、アメリカのオケは概して音が明るくて、渋いブラームスには合わないことが多いのか、なかなか名盤が少ないのも事実です。ショルティ/シカゴ盤は米グラミー賞を受賞しましたが、ヨーロッパや日本ではさっぱり評判になりませんでした。このスタインバーグの演奏も忘れ去られています。