インフィニティ・デジタルと言うレーベルの「英雄」 |
曲目
1.ベートーヴェン交響曲第3番編ホ長調Op.55「英雄」
2.エグモント序曲op.84*
3.アテネの廃墟序曲Op.113*
指揮/アレクサンダー・ティトフ
演奏/サンクド・ペテルブルク音楽院管弦楽団
サンクド・ペテルブルク新フィルハーモニー管弦楽団
録音 1993,サンクト・ペテルスブルク
SONY infinity digital QK57219

日本ではついぞ発売される事の無かったソニーのレーベルブランドです。CD全盛期の1993-4年頃、欧米を中心に発売されました。全曲デジタル録音が売りでしたが、廉価盤としてのレーベルだったので日本では陽の目を見なかったのでしょう。欧米ではNAXOSを始めPRTやカプリッチョなど廉価でデジタルを売りにした基本レパートリーを充実させたレーベルが台頭していて、それに対抗するために低コストのロシアのアーティストを採用しての発売だったのでしょう。このCDもそのシリーズで発売された一枚です。
アレクサンダー・ティトフの名前は最近ちょくちょく耳にするようになりました。主にイギリスのオケを振った録音が多いようですが、ここではロシアのオケを振っています。ロシアのオーケストラはソ連崩壊後混乱し、まともに以前の陣容を保っているものが少なく、ここで聴かれるオーケストラも新参者です。ロシアのオケについてはこちらを参考にして下さい。
http://www.geocities.jp/orcheseek/orch/russia.html
http://www.paccbet.net/russia_index_orchestra.html#st_peterburg
http://www.paccbet.net/russia_index_orchestra.html#st_peterburg
「英雄」を演奏しているサンクド・ペテルブルク音楽院管弦楽団は編成も小さく、ほとんどオレジナルに近い規模と思われます。録音会場の特性か低音がダブついて聴こえるのが残念です。特にティンパニの残響が異常に響くのが耳障りです。レベル的には素人に毛の生えた程度で、とてもほめられたものではありません。しかし、ティトフの指揮のもとひたむきに音楽を作っていこうという熱意は伝わってきます。
第1楽章はけっこう推進力のある演奏で、快調なアレグロ・コンブリオです。木管楽器の音色が1本調子で変化に乏しいのが難点ですが、緩急のテンポの変化もあり、スケール感のある演奏を展開しています。コーダのトランペットもオリジナルの鳴らせ方で好感が持てます。
第2楽章は、じっくりとしたテンポでドラマチックに葬送行進曲を歌い上げています。ここでもフルートが調子ハズレの音量で雰囲気をぶちこわしているのが気になりますが、きわめて陰影の深い音作りで全体の出来としては全曲の中で一番聴き応えがあります。
第3楽章はバランスの採れた演奏で、各楽器がよくブレンドしています。第4楽章も焦らず、じっくりと音楽を作り上げています。変奏曲は躍動感あるリズムで聴き応えがあります。音楽院といういわばアマのオーケストラをここまで引っ張って、熱い演奏を作り上げるティトフの実力はたいしたものです。
これに対して、序曲は充実した響きでプロ・オーケストラとしての安定感があります。録音のバランスもこちらの方が良く、安定しています。