カルロ・マリア・ジュリーニ
フィルハーモニア管弦楽団
東芝EMI TOCE6128-30
1990/02/21発売

ジュリーニ若かりし頃の演奏ですが、このフィルハーモニア管弦楽団との交響曲全集はLPでは未発売の交響曲第4番が含まれています。ジュリーニはあまりレパートリーの広くない指揮者で同じ曲を何度も再録音しています。このブラームスも然りで、後に1,2番はロスアンジェルス・フィルと4番はシカゴ響とそして全曲をウィーン・フィルと再録音しています。その中で4番はフィルハーモニア(当時はニュー・フィルハーモニア管弦楽団と名乗っていました)との録音のわずか1年後の1969年の録音で、当時はシカゴ響とのシリーズが立て続けに発売されたために発売されること無くお蔵入りになってしまったものです。
それがこのセットで初めて陽の目を見たという訳なのですが、発売当初はあまり話題にならず直ぐに廃盤になってしまったのです。昨年ジュリーニが亡くなったおりの再発でもこれらの録音は復活していませんので今となっては貴重なCDとなりました。
この全集は1番が1962年1月、2、3番が1962年10月、そして4番が1968年4月の録音となっています。もともとジュリーニはテンポは遅いのですが晩年はさらに遅くなっています。交響曲第1番はホームページで紹介していますので、ここでは第4番を取り上げてみます。
オーケストラ | 第1楽章 | 第2楽章 | 第3楽章 | 第4楽章 |
フィルハーモニア管 | 13:17 | 11:55 | 7:19 | 10:28 |
シカゴ響 | 12:47 | 12:13 | 6:57 | 10:47 |
ウィーン・フィル | 14:18 | 9:32 | 7:10 | 11:51 |
という具合です。4番では第3楽章だけはフィルハーモニア管弦楽団との演奏が一番遅いのですが、全体のバランスの中では全く自然に流れます。後年のウィーンフィルとの録音は、さらにスローでやや鈍重なイメージがあるのですが、その点フィルハーモニアとの録音はリズムが生きていて充実したブラームスの響きになっています。
EMIとしての録音の中ではベストに近いバランスで当時のデッカの録音に負けない馬力のある音場になっています。この4番だけはウォルター・レッグのプロデュースではなくクリストファー・ビショップが担当していますがまるでフェイズ4ばりの金管の鳴らし方で渋いブラームスから一皮むけたサウンドとなっています。同じジュリーニでもこのジュリーニは一度聴いたら忘れられない演奏となること請け合いです。
カタログを見ていると同じ演奏が何度も品番を替えて再発されることが多いですが、こういう隠れた名盤をメーカーは発掘して発売してほしいものです。
最近そういうことにかけてはタワーレコードが積極的なようなのでぜひとも期待したいものです。