今日の一冊 04/14 「かもめのジョナサン」/リチャード・バック | geezenstacの森

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=== カモメのジョナサン」/リチャード・バック ===

新潮社,1974年

 この小説が発売された当時は大ベストセラーになりました。彼の五木寛之先生が翻訳された小説だったんですから。そして、映画も作られました。こちらは見事にこけました。以前は、「大映」からレーザーディスクで発売されていましたが、売れなかったのかDVDではまだ発売されていないようです。何しろ「カモメ」が主役で人間なんて一人も出てこないもんだから記録映画みたいになっちゃったんですよ。
 
 元々原作が食べるよりも飛ぶことに意義を見いだしたカモメの「ジョナサン」が、何とかにして早く飛ぶかをテーマにして描かれているのですからしょうがないですね。小説では最後は新興宗教よろしく仲間を集めて更なる奥義を目指す訳ですがこんなストーリーでは映画が持たないです。はっきり言って途中で投出したくなる内容でした。

 ところが映画のサントラはこれまた大ヒットしたんです。こちらはポップス界の大御所「ニール・ダイヤモンド」が初めてサントラに挑戦したことで話題になり、当時のFMではバンバン前宣伝でサントラが紹介されました。ソニーが提供していた「ミュージック。スクエア」なんかではほとんど1ヶ月ぐらい特集していました。「ニール・ダイヤモンド」は自ら歌い「Be」「skybird」などのヒット曲が生まれました。編曲を「リー・ホルドリッジ」が担当しいいオーケストレーションですばらしいトータルアルバムに仕上がっています。ところがこちらもLPでは発売されましたがCDは国内版は出ていないようです。

「Jonathan Livingston Seagull」/Neil Diamond
1.Prologue
2.Be
3.Flight of the Gull
4.Dear Father
5.Skybird
6.Lonely Looking Sky
7.Odyssey: Be/Lonely Looking Sky/Dear Father
8.Anthem
9.Be
10.Skybird
11.Dear Father
12.Be

発売日: 1995年03月22日
オリジナル盤発売年 : 1978
カタログNo: 4676072
レーベル: 英Columbia /sony

 最近イギリスのsonyからようやく発売になったので聴くことができるようになりました。この音楽を聴きながら原作を読むとずっとイメージがわき上がり、「ジョナサン」がカモメとしての存在意義を超えて神の領域を目指す様へ感情移入できます。

 この小説を読んで宮沢賢治の「夜鷹の星」を連想した人も多いのではないでしょうか。タカの仲間でないのに「タカ」という名を持つことで、猛禽類から馬鹿にされるヨタカはその身を隠すように夜の生活を続けます。この悲しみを共有しようとしても、仲間もいません。そして孤独なヨタカは、自分が生きるということは、他の命を食べなくてはならないという宿命に大きな葛藤を抱きます。そして悩み苦しみぬいたヨタカが選んだ道は、「自らの死」。食べることを止め、飛び続けるヨタカは最期体が燃え尽きて、星になっていく・・・

 「ジョナサン」も志は違えど飛ぶことに執着を燃やし食べることよりも優先します。ただ夜鷹のように孤独を目指すことなく仲間を集うことにより自からリーダーに登り詰めていくことが飛行家としての原体験を持つリチャード・バックと宮沢賢治の思想の違いだと感じました。

 あと何かしら中島敦の「山月記」を思い出した次第です。こちらは人虎伝ともいう内容で、人間が虎になりもがき苦しむ様を描いた傑作です。文体が漢文調なのでちょっと読みづらいかもしれませんが短い小説ですから一読をお進めします。