今日の一冊 03/11「棒ふり旅ガラス」 | geezenstacの森

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「棒ふり旅がらす」/岩城宏之

朝日文庫

 最近はブログなるものの力があるので意見の発表の場の機会はたくさんあり指揮者の世界でも何人かはそういう形で発言しているのを見かける。金聖響氏や下野竜也氏なんかが代表的な存在である。

金聖響   http://blog.eplus.co.jp/seikyo/  
下野竜也  http://seikyo.blogzine.jp/tatsu/

 しばらく前までは左右いう活動をしていたのはおそらく「岩城宏之」氏一人であったろうと思われる。もちろん氏は積極的に自ら発言していた訳でなく、雑誌への連載という形でエッセイを発表していたのだか指揮者からの毎週の発言というのは前例がないと思う。そして、この本以外にも同種のエッセイを「棒ふりプレイバック'84」とか「棒ふりの休日」などの形で春日カズ発表している。小生はそのすべてを読んだわけではないが彼の淡々とした文章に含まれるユーモアを楽しませてもらっている一人である。
 表題作はメルボルン交響楽団の常任指揮者として世界を股にかけて活躍していた1982年から1983年にかけての世界13カ国38都市での出来事、出会いを綴ったものとなっている。氏の文章を読んでいるとなぜか「星新一」氏のショート、ショートをを思い出すが軽快なテンポでエピソードが語られていくのでついついのめり込んでしまうのだ。話題も豊富で音楽の話はもちろんだが熱狂的なジャイアンツファンであることから世界のどこにいてもジャイアンツの情報は仕入れていてその活躍に一喜一憂している姿が微笑ましい。そんな中当時のナゴヤ球場での一文がおもしろい。
 応援の声援の声を分析し、中日側のそれはメトロノーム126のテンポで、対するジャイアンツはメトロノーム135のテンポ。それが試合が盛り上がっていくにつれ中日はメトロノーム140を超え、巨人は160を超えてヒート。9回裏のピークにはメトロノーム200ぐらいのプレストまでに達したというのだ。
いやあ。野球も自然と音楽的興奮に包まれ感動を盛り上げているのだという分析に感心しました。
 さて、氏の作品の中で最近面白く読んだのは下記の2冊。
指揮のおけいこ 2003 文藝春秋文庫
オーケストラの職人たち 2002 文藝春秋
お進めします。