【麻酔計画】GOS+caudal。換気はマスク。
caudalは1%Xyを0.8ml/kg。

【麻酔の実際】
GOSでslow inductionの後ルートキープ、1号液開始。
マスク換気のまま左側臥位となり、看護師さんにマスクをおさえてもらう。
すかさずコーダル。針は22Gのインサイト。仙骨裂孔を触れ、針を皮膚から40度くらいの角度で穿刺、貫通感を感じ針先が当たったら寝かせて2-3mm進め、内筒を少し引き抜き、外筒だけを持って根元まで入れる。
終わったら仰向けになり手術開始。
手術開始時にはコーダルはまだ効いていないこともあり、Sevoを5%にup。
マスク換気は、自発を完全に消さないように、しかし麻酔が浅くなりすぎないように、という値でSevoを調節する。年齢にもよるけどGOS=2L:2L:2.2-3%、という感じ。
【症例】80代女性。大腿骨頚部骨折に対しγネイル予定。
【合併症】15年前に脳梗塞、その際にOMI、DMを指摘。ECGで前壁中隔の広範な梗塞所見、UCGでEF45%かそれ以下、心尖部は無収縮。DMはA1c6.1%。内服はβ-blocker、NTG、CCB。BUN30台、Cre1.0-1.2、eGFR40と低下。尿量はループ利尿薬使用で1日2000mlあり。SpO2はO2マスク3Lで98%。
【術前評価】
術前診察前日に採ったBGAでO249mmHg(マスク3L)、CO2 35mmHgと低値。
術前診察当日はマスク5LでO2 150mmHgと改善見られていた。
D-dimerも、特異性は高くないものの、陽性。
酸素化の増悪みられず、下肢の主張や胸痛、血痰などの症状もなかったが、
高齢で臥床中でありDVT、PEハイリスクと考えられたため、造影CT施行。
結果、DVTとPEは否定され、手術可能と判断。

【麻酔計画】アンダーマスク、Epi、Spinal、Aライン。ミルリノン、NTGも術中から使用予定。

【麻酔の実際】
入室と同時にミルリノン0.125γ、NTG0.05γ開始。
患側を上にして等比重マーカイン2.2mlをL3/4から注入。
そのまま同じところからEpi、しかし入らずL2/3から挿入。
cold testでは患側T10-S。
Propにて軽度鎮静で手術開始。Hbは9.1、昨日尿量少なく術前の輸液もあり希釈気味か。
出血量は少ないから輸血はたぶん要らないだろう。
術中尿量十分にありHbは手術終了時には10台。ICU入室。
飲水開始と同時に、アセトアミノフェン、抑肝散の内服を開始。

ICU入室後、HR120前後まで上昇あり。
創痛はなし、動悸や胸苦の自覚症状もなし。
ランジオロールは効かなさそうだし、キシロカイン使うほどかな、と思って経過観察とした。
inは絞りめで、呼吸は改善。
ただ、あまりout overになるとBUN上がってきてhypoとなり、それも良くない。

その後血圧低下、Hb低下あり、輸血施行。
γネイルは出血それほどしないと思っていたが、ガーゼ汚染もあり。

翌日の採決ではBUN、Creとも術前より低下。in/out balanceはトントン。
ミルリノンとNTGを切って無事ICU退室となった。

【教わったこと】
NTGはコラテを開く作用があるらしい。だから普段から内服している人はできるだけ術直前まで飲んでもらう。午後からの手術なら昼の分を飲んでから、など。
シグマートは周術期心筋虚血に有効とされているが、内服していない人は必ずしも使う必要はない、らしい。

【調べもの】
不整脈治療薬ファイルp65-
・マイナーな器質的心筋変性病変・・・PVC散発は予後に影響なし
・心筋梗塞後や心筋症患者では、PVCの頻度が予後に影響する
・しかし、予後改善を狙ってPVCの薬物治療を行っても予後改善に直結しない(むしろ生存率低下!)
 これがCAST study
・Lownの分類はあまり役に立たない
 ∵①よく見るPVCのほとんどが予後に影響しない ②gradeの高いものもしばしばみられる
・PVCの治療目的は症状の緩和。症状の訴えがあって初めて治療を考える、くらいでいい。
・βblockerはそれほど有効でない。
・使うならまずⅠb群メキシチールやサンリズム。
・心不全に伴うPVCなら、心不全そのものを治療するべし。

【明日のために】
・PVCは、たとえ多源性であっても、症状の訴えがなければ必ずしも治療を考えなくてもいい、かもしれない。
【症例】30代女性。50kg。陣発のため緊急カイザー。最終飲食入室の2時間半前。
【合併症】特になし。
【麻酔計画】普通ならCSEAといきたいところだが、最終飲食から時間経っていないためクラッシュで。
チアミラールとロクロニウムで。


【麻酔の実際】
入室と同時に酸素マスク10L。密着はさせない程度に。
バルーンを入れ、術野を消毒してもらい、覆い布をかけ、タイムアウト。
チアミラールを300mg ivと同時に看護師さんによるcricoid pressure開始。
入眠を確認後にロクロニウム120mg iv、執刀開始。
APLゼロにしマスクを密着させ、自発呼吸の消失を確認してから挿管。
チューブは通常通りの7.0。挿管後も純酸素で。
挿管チューブの固定が終わったころに児娩出、ここで抗生剤開始、メチルエルゴメトリン0.2mg iv、フェンタニル100μg、レミフェンタニル0.2γ、TCI 2μg/mlで開始。
セボフルランは使用せず。
このころからPVC2連発が散発、自脈40台と徐脈を認めアトロピン0.3mgiv、改善なく残りの0.2mgをivし2%キシロカイン2.5ml=50mgiv、PVCは消失。
胃管を挿入し胃内容物を吸引。
閉創開始頃からレミフェンタニル0.1γとし、手術終了前に止め。
抜管前にT12/L1からEpi挿入、1.5%XyEを注入後インフューザーを接続し、5cc注入してから抜管。

【教わったこと】
ロクロニウムiv後3分以内に胎児娩出すれば大丈夫と言われている、らしい。
実際に執刀開始から児娩出までは1-2分だった。
今はサクシニルコリンは使わない。
チアミラールの直後にロクロニウムをいく先生もいる、らしい。
プロポフォールでもいい、らしい。(添付文書では禁忌となっていたような)

【調べもの】
まだ

【明日のために】
色々なやり方がある。
挿管さえ問題なくできれば後は普通。
【症例】80代男性。虫垂炎疑いに対して臨時腹腔鏡下虫垂切除。1hr予定。
【合併症】20年前開腹distal gastrectomy、8年前ileusで保存的治療、5年前からProstate Caに対して定期注射。内服なし、HT、DMなし、胸部症状なし、NYHAⅠ°。認知症は軽度。本人はけろっとしている。ECGにてCRBBB、Xpはnp。sepsisなし、CRP=25、Hb=13、BUN/Cre=34/1.7と上昇(普段はCre=1.0)。交差適合試験未施行、準備血なし。
【麻酔計画】挿管、Epi、A-line、CVシングル。他の臨時があり入室までに時間があったので細胞外液を200ml/hrで落としてもらい脱水を補正。脱水だがHb13くらいあり、血が出る手術でもないし、輸血は要らないだろう。

【麻酔の実際】
外科病棟で胃管は挿入済み。
先輩の先生に事前にEpiを入れてきてもらっていたので、入室と同時に導入開始。
入室時の血圧は110台。
フェンタニル50μg、レミフェンタニル0.2γ、TCI=3μg/mlで開始したところ、ディプリバンが流れておらず、慌ててはじめたところ、突然患者さんが手足をばたつかせて目が上ずった。
最初何が起きたのかわからず、ひとまずみんなで押さえつけてPropを切ってマスク換気。
アルチバだけ入ってしまって呼吸困難になったか?
ということになり、その後は普通に導入を続けて問題なく挿管。
入室後すぐにEpiに1.5%XyEを3cc注入したところ挿管前に血圧80台へ低下、挿管後には50台まで低下してしまった。ここで昇圧薬を使いながら、ようやく外液からHESに変更し全開で投与。0.75%アナペインは通常量の5ml/hrで持続注入開始。
右内頚からCVシングル挿入。内頸静脈はペタペタでいかにもhypoだった。
手術開始、カメラを腹腔内に挿入すると膿汁が・・・
これは1時間では終わらないパターンだ。
やっぱり尿がほとんど出ないなあ、と思いながらHES2本目を入れている途中でDOB2γで開始。
血圧が20程度上昇し、ボリュームもある程度入ったこともあり尿流出少しずつ出てきた。
FrotraqでSVVを見ることができたらよかったかも。
Hbは入室時の11から8.5まで低下、高齢、胃切除後、Prostate Caもあり、もともと10前後くらいの人だったんだろう。
これから尿が出て手術終了時には9点台後半くらいならいいかな、と思っていたが・・・
血圧は100、レートはおおむね70台で経過。
手伝いにきてくれた先輩の先生は輸血を考えた方がいいかも、と。
しかしHES2本入り終わった後はそれ以上HES使うのもはばかられ、だからといって外液をじゃんじゃん入れるのもちょっとどうかと思った。RCCとFFPを入れられたらとも思ったが、不規則抗体も提出されておらず、準備血もなし。これは「輸血はなるべくlしないでくれ」というメッセージととらえて、なるべく輸血しない管理を目指すことになる。
ならばアルブミンは・・・というと、なぜかうちの病院はアルブミン製剤は使いたい時にすぐ使うことができないようになっている。
HESによるボリューム↑効果も低下してきたか、血圧も下がり気味になり尿量もしぶってきた。上の先生のすすめもありhANP開始。
結局手術は3hrs近くかかった。手術終了時麻酔を徐々に切っていったらBP↑してきたのでDOBを3→2→1γへと間隔をあけずに減量していったら、急に血圧70台へ。あわててネオシネジンとDOB増量。良く考えたらICU入室するので無理してoffする必要なし。
自発はしっかり出ている。血圧は導入時に50台に下がってしまったので覚醒がやや遅れるかも、と思いつつ、少しずつ従命がとれてきたので抜管。退室時にはだいぶはっきりしてきた。
手術時間3時間、麻酔時間3時間50分、出血100+α、尿量350、輸液2000。

【ICU入室後】
Hbは9.5。血圧は80前後と低め。DOB4γへup。hANpは0.0125γで継続。
濃いのを入れてもらおうと思ったが、外科の先生は「輸血はしたくないなあ」と言っていた。アルブミン製剤を朝までに2本入れてもらうこととした。HRは90台。
翌日朝Hb=10。DOBmax5γまで上がったがそれでも低め。HRは70台で落ち着いていた。

【教えてもらったこと】
・心臓は悪くなくても、septicのケが少しでもあり、高齢、Ca持ち、hypoの人なら、輸液・輸血をじゃんじゃん入れて「たくさん入れてたくさん出す!」という方針の方が術後の回復が早い印象がある
(たしかに、上の先生がお手伝いに来てくれると、「えっ、そんなに頼むんですか?」というくらい輸血をオーダーしてくれる。特にFFP。でも結局後から振り返ってみると、ICU入室後脱水気味だったりして、頼んでおいてもよかったんだなあ、ということになる)出すためにhANPをいく。
・0.75%アナペインも5ml/hrだと持続でも血圧下がる

【反省点】
・TCIの年齢設定は意味がない(12歳以下に使わないようにしているだけ)ので、20歳の60kgも80歳の60kgも同様の投与量となる。すなわち、高齢者では導入、維持の目標血中濃度を減量する必要あり。
・不規則抗体もなく準備血もなく、輸血しなくてもできそうだったのであえて輸血はオーダーしなかったが、悪い意味で空気を読みすぎていたかもしれない。外科の先生は輸血をいくかいかないかを術中出血量を中心に考えている。ところが麻酔科としては出血量はもちろんだが、その人の臓器合併症や術前状態を重視する。この人は一見元気で心臓も悪くはないがよく考えたら高齢で癌の術後であり癌の治療中であり、術後の回復のことまで考えると薄まっただけとはいえHb=8.6を見て輸血を渋る理由はあまりない。これが若い人なら話は別だったが。もっと患者さんをトータルにとらえた方がいい術中術後管理ができる。


【もしも同じ症例を最初からかけられるとしたら】
「80代だけど意外に元気だな、内服もないし心臓も悪くなさそうだ」
 ⇒術前診察でけろっとしているが80代という年齢も考慮し隠れた重症の可能性を念頭に置いて、慎重に準備
「普通のA-lineで大丈夫だな」
 ⇒血液検査では明らかな脱水あり、重要臓器の合併症はないがボリューム管理のためにFrotraqでもよかったか
「CVもシングルでいいだろう(hANPは要らないかな)」
 ⇒CVはhANP投与のためダブルで準備。普段からCre1.0程度eGFR40-50程度の人なのでhANPは最初から使うつもりでもいい。
「1hr予定だし、Hbも13あるし、HES2本くらい入れておけば間に合うだろう。不規則抗体もとられていないし出血もしないだろうし輸血は要らないな」
 ⇒予想外の重症appeによる手術時間の延長や、予想以上のhypoに備えアルブミン製剤を2本ほど保温庫に入れておく(全身状態や合併症によっては外科の先生にお願いしてRCC、FFPも遠慮なくオーダー)大は小を兼ねる!の精神で余分に準備しておくのが大事
「入室してとりあえず外液を早めに入れて、途中でHESに変えよう」
 ⇒入室と同時にHESに変え全開投与「80代だけど元気だから普通の導入量、維持量でいいだろう」⇒導入はこわれやすい紙風船を扱うようにやさしく、導入はフェンタニル25μg、レミフェンタニル0.1γ、TCI=2μg/ml、Sevo2%とかで。Epiの術中持続も0.75%アナペイン通常5ml/hrのところを4とかで。
「ボリューム入れてもダメならDOB始めるかな」
 ⇒相当hypoなのでHbが下がりすぎない程度に輸液、CV入ってボリュームをある程度入れたら血圧維持と尿量確保のためDOB2-3γとhANP0.0125-0.025γで開始。術後HR↑があったとしてもDOBの影響なのでDOBを下げられればHRも落ち着いてくるはず。ランジオロールを併用したりしなくても大丈夫、かな?

【明日のために】
・高齢者の導入・維持は、臓器合併症がなくても、ふんわりとやんわりと慎重に。少なめでいい。血圧が保てなければ麻酔を浅くすることも積極的に考えていいこともある。
・hypoが少しでも疑われるなら、frotraqつけて、入室と同時にHES開始。臓器合併症があればRCC、FFPも遠慮なく。「麻酔は誰のためにしているのか」を考える。
【症例】50代男性。膵頭部Caに対して7hrsのPD予定。
【合併症】アルコール性急性膵炎の既往複数回、心不全(EF=45%)とAfでβblocker2剤+ジゴキシン内服中、Xpで心拡大なし、UCGで左室肥大なし、弁膜症なし。コントロール不良のDMでHbA1c=8%台。呼吸機能障害なし、腎機能障害なし。
【麻酔計画】
全身麻酔、Epi、AラインFrotraq、CVプリセップカテーテル、末梢1本追加。
導入時の血圧低下にはネオシネジンone shot & civかDOB、
CV挿入後血圧低下にはNAd、頻脈にはlandiololでHR=100bpm位までを目標に調節、
アルコール性心筋症の合併(収縮能低下、拡張能低下)もあるかもしれないのでボリュームの安全域が狭くあまり入れられないはず。心不全もありHb=10g/dlを目標に早めに輸血。
ScvO2>73と尿量>1ml/kg/hrを保つように適宜Alb、FFP等濃いめのものを入れて。
FrotraqのSVVはAfではあてにならないけどCOの目安にはなることを期待して。

【麻酔の実際】
HRは90台、血圧は120前後。
T8/9からのEpi、test doseは3%Xyを2cc、cold lossはOK。
awakeでAラインをとり、BGAで導入前の時点でK=4.9、BE=-6mEq/Lと低値、手先も冷たい。
導入前にはABP=90台まで低下、epiのone shotは使わずロピバカイン10ml/hrのepi注を開始、TCI=2μg/mlとレミフェンタニル0.1γ、フェンタニル1μg/kgで入眠を得たのち、Sevo1%、ロクロニウムで挿管。
入眠直後からsABP=60台まで低下、ネオシネジン50-100μgで対処しようと考えていたが一時的に上がるもののすぐに低下。そこで応援の先生が来てくれてDOB3γでciv開始。それでも安定はせず適宜ネオシネジン使いながら。振りかえるとここでボリュームをあまり入れなかったのがまずかった。
CV挿入後はCVメインに維持液をつなぎカテコラミンルートとしNAd 0.05γで開始、サブルートからはPGE1 0.005γ、HR>100landiolol 3γで開始。
手術開始前にフェンタニル50μg+生食5mlをepi注、ミラクリッド20万単位をiv。
手術開始してもバイタルは全然安定せず、血圧は低下。
麻酔を浅くし(Sev 0.8+TCI 1.0μg/ml)、痛がっているのがhypoかよくわからないHR↑も認め、NAdが届くまでネオシネジンで頑張る・・・。
このころようやく「末梢開いた分は入れてもいいのかな」と気づき、サリンヘスと外液でvolumeをどしどし入れ始め、
少しレートも血圧も落ち着いてきた。尿バッグを見るとほとんど出ていない。ガスをとるとK=6mEq/Lとなぜか急上昇。血糖も入室時のガスから200台後半でありインスリン3U/hrでciv開始。Kはインスリンで下がるだろうけどラシックスもいこうかと思ったがHr流出あり様子見とした。volumeはひとまずいいかと思いきや、今度はHRが徐々に上昇。オノアクトを10γまで上げるがHR上昇は一向にやまない。浅麻酔を否定したいがSevoやPropを上げると血圧も下がりそうで躊躇していたところに指導医の先生登場。そこでしてくれたことは・・・
・K上昇にびっくりして外液は生食に、維持液は1号液に変更。
・浅麻酔によるHR↑を否定するために麻酔はしっかり深く、とのことでフェンタニル50μgを2回iv、Sevoも1%、TCIも1.2μg/mlに増やした。
・CIが4-5もあったので、DOB 5→1γへ徐々に減量
・ミルリーラ0.125γで開始
・BE=-6に対してメイロン50mldiv ⇒時間をかけてBE=-2台まで改善
・「手先を触って温かいから末梢開いているよ」とのことでhypoによるHR↑を考えアルブミンdiv、RCCとFFPを多めにオーダー。
それでもHRは上昇傾向止まらず、130台へ。オノアクトを10γ以上上げる気になれずHRが120を越えたあたりからなぜか洞調律化し、SVVも信頼できる値を表示、HR↑してもカテコラミンで支えていたため血圧は保たれていたが、HR↑には困っていた。そこでまた指導医の先生登場。
・サンリズム1A50mg+生食100mlを30分でdiv
これを落とし始めるとみるみるHRが100前後まで低下!
こりゃすごい、と思っていたが、落とし終わるとまた徐々にHR上昇。
結局術中110-120台のAfリズムで経過。オノアクトは効いているのか正直よくわからなかったが、術前にも2剤飲んでいたし減らさない方がいいとのことで10γのまま。
Hbが10前後となるようにRCCを、FFPはボリューム源としてどんどん入れた。
腫瘍摘出前には膵炎による癒着剥離のため短時間で1000近く出血し、
RCCとFFPを混ぜて温まり次第どんどん入れていった。
尿量は利尿剤使用なしで比較的よく保たれていた。totalで2ml/kg/hr以上。
血圧とレートは術中を通して終始安定せず、気が抜けることがない12時間の麻酔時間だった。

手術終了間際に麻酔を浅くしていったら血圧は出てきたのでNAdとDOBはoff。
退室後ICUでも高めのHRは持続、尿量も少なく濃縮気味、オノアクトは継続するもhypoによるHR↑には無効か。

指導医の先生いわく、「拡張型心筋症みたいな低心機能の人はカテコラミンあんまり効かないから、ボリューム管理がメインになる。この人もアルコール歴長そうだし、そういうのがあるのかもしれない」ということだった。


【調べもの】
不整脈治療薬ファイル
○サンリズム®(ピルジカイニド)
・Ⅰc群(=APD:action potentioal durationを延長しない)抗不整脈薬。
・日本で最も売れている抗不整脈薬。
・経口投与でも静注に匹敵する速やかな効果
・適応・・・①器質的心疾患や心機能低下がなく、②pAfの出現から間もない
・経口・・・150mg(50mg錠なら3錠)を多めの水で服用、あるいは3T/3x
・静注・・・1A50mg+PS10mlを側管から5分かけてiv max100mg
・75人でのトライアルで有意差あり、副作用なし、使いやすい
・抗不整脈薬には珍しく、腎排泄
○アスペノン®(アプリンジン)
・Ⅰb群(APDを短縮する)
・リドカインとメキシチレンよりもチャネルとの結合・解離が遅い⇒Afの治療にも使える
・適応・・・高齢者、器質的心疾患 ∵陰性変力作用や催不整脈作用少ない

麻酔と心血管作動薬
○ドブタミン
・慢性的にβ遮断薬による治療を受けている患者に投与しても、期待したポンプ機能の改善が得られず、むしろ遮断されたβ2受容体よりも遮断されていないα受容体が活性化されるので、好ましくない血管収縮反応を出現させる可能性がある


ハリソン内科学p1547
http://rockymuku.sakura.ne.jp/zyunnkannkinaika/aruko-rusinnkinnsyou.pdf
アルコール(性)心筋症・アルコールの心毒性
・DCMに類似した臨床像
・禁酒により軽快することもあり
・明らかな心不全のない患者にみられる再発性のAf、PVC(holiday heart症候群:暴飲後の不整脈)
・EF等心機能正常でも収縮能低下、左室拡大、拡張障害(拡張期中隔厚↑)がみられることがある


【もしも同じ症例を最初からかけられるとしたら】
・冷たい指先と低いBEを見た瞬間に「末梢締まってる!」と察知して麻酔導入前からがんがんボリューム入れる。普段導入後に取っている末梢もう一本も導入前からとっておけばよかった。DOBやネオシネを末梢から流して届いたのを確認してから導入したら血圧も下がらなかったか。landiololも導入前から開始しちゃってもよかったかも。いったん痛がらせるとアルチバ上げてもなかなか血圧が下がらないのと同じように、いったん頻脈のクセがつくと戻すのはなかなか難しそうな気もする。
・入室時のBS200台後半を見てCV入れたらすぐインスリンciv開始するべきだった。Kのこともあるし。
・NAdとともにミルリーラも始める。
・輸血はどうせすることになるのだから躊躇せず早めに入れる。

【考えごと】
結局HR↑の原因は最後までよくわからなかった。浅麻酔でもなく、FFP2単位一気に入れたら一時的にHR↓するところを見るとhypoは絡んでいると思う。ただ、またすぐにHRは元に戻ってしまうことを考えるとhypoだけではないのか?こういう場合オノアクトでどうにもならない場合はどうすればいいんだろう?サンリズムは比較的安全だと思うがあくまでも対症的だしいつでも使っていいとは限らないか。でも水が飲めるようになったら3T/3xとかで飲んでもらうのもいいかも。
術後管理は外科の先生の手に。オノアクトとDOB継続中で血圧はまあまあだが尿量少なくHRは130、外液やアルブミン製剤で補正しているがFFPとか行かないとhypoは治らないのでは?このままHR高値が持続するとうっ血性心不全⇒BP↓とならないか心配。2-3日して水が引けてきてマイナスバランスにならないと無理なのかもしれない。
この人は数年間β遮断薬2剤飲んでいる人だった。DOBはあまりよくなかったのかもしれない?がCIはしっかり上がっていた印象。landiolol+DOBっていう組み合わせは良くないのだろうか?

【明日のために】
・心不全患者には周到な計画と素早い判断を。
・K高値をみたら少なくともKを全く含まない点滴に変える。
・輸血のオーダーは早めに。
・抗不整脈薬は必要に応じて術中から使っていってもいいかもしれない。

【その後】
・術後数日はHR=110-120の頻脈が持続、3日後くらいからHR徐々に低下しバイタルも安定。