【症例】40台女性、胃がんに対し開腹胃全摘術。4hrs。
【合併症】Hb=9g/dlの貧血で鉄剤内服中。
【麻酔計画】硬膜外麻酔、AラインFrotraq、CVシングル。必要時末梢もう一本。
【麻酔の実際】
T8/9からEpi。
血管内チュービングで多少時間がかかったがいい位置にするするとチュービングできた。
cold testではT5か6から12まで。やや上への広がりが悪い気がするがそのまま導入。
導入しながら1.5%XyE 2mlを投与、血管内チュービングを否定して5mlを追加、直後から0.75%ロピバカインの持続投与を開始。挿管後レミフェンタニルは0.05γへダウン。
挿管して右内頸静脈からCV、左手からAライン、胃管挿入。
いつもなら手術開始前にフェンタニルepi注しているが今回はこれでどこまで広がっているかを見てみようと思いそのままで手術開始。皮切入ってもバイタルは変動なし。
しかし剣状突起のあたりにメスが入ると痛がってしまった。
上への広がりはやっぱりいまいちだったよう。
1%Xy5mlにフェンタニル50μgを混ぜてEpi注射。
すると血圧が低下、エフェドリンでも回復せず。
なんだか心電図の波形が変?よく見るとⅡ誘導でSTが-1.5mV、水平型の低下を示している。
虚血??リスクファクターはないはず。
ひとまずフェニレフリン0.1mgをiv+CO2ため気味にして冠血流を増やそうと試みる。
これでもなかなかバイタルは安定せず、フェニレフリン反復投与しながらHESを全開で投与。
どうしようかなと思いながらレミフェンタニルを0.1γに上げるとバイタルはすっと落ち着いた(たまたまだったのかもしれないけど)。
STも徐々に元に戻っていった。何だったんだろうか。
そのしばらく後で0.05γに下げてみるとHR↑BP↑となった、まだ若いから0.1γくらいは必要なんだろうな。
尿はすごいペースで出続けている。普段から血圧高くないから血圧80台でもじゃんじゃん出る。
最初のBGAではHb=8.3g/dl。
もともと貧血はありHb8台で経過していたとのこと。
不規則抗体のスクリーニングはしているものの準備血もなく、外科Drも「若いからなるべく輸血したくない」と言っていた。
最初になるべく薄めて、最後に尿が出て濃くなってほどほどのHbになって帳尻が合えばいいかなと考える。
しかし尿量の出が良すぎて輸液(末梢20G1本だけ)が追いつかない。SVV=7前後となるように。9になると血圧が保てなくなりフェニレフリンが必要となった。
バイタルはおおむね安定していたが時々HR↑BP↓となりフェニレフリンのivとHES、Albの全開投与が必要となった。HESはもっと使ってもよかったかもしれないが止血凝固障害のこととFFPを使いづらいことを考えて1000mlまでにした。出血カウントは最終で600だったがHbは7.5までしか低下せず。ガーゼもそんなに血性ではなくserousっぽかった。
閉創時にフェンタニル50μgをepi注し0.75%ロピバカインを5から10ml/hにup、30分程してからインフューザーに変更。
結局手術4.5時間麻酔5.5時間、輸液3800のうちAlb製剤500mlHES1000ml、出血600、尿量2500。なんとか入れたという感じ。
抜管後は創痛なし、嘔気なし、シバリングなし。フェンタニル200μg、レミフェンタニル1.3mgの使用。
体温は加温機を使用して36℃台を維持、末梢もあたたかかった。
ICU入室後はin
【調べもの】
麻酔科トラブルシューティング「冠スパスムが発生した」より
・ST低下よりST上昇の現れる症例が多い(感度は80%)
・硬膜外腔への局所麻酔薬投与に起因する低血圧後や、術野での迷走神経刺激後、子宮収縮薬やエフェドリン投与を契機に突如発生したST上昇であれば、冠スパスムの発生を疑う
・治療はNTG50-200μgのivまたは0.5-2γciv、ジルチアゼム、ニカルジピン、ニコランジル、ダメならNAd

エビデンスに基づく実践麻酔科学より
・術後のHb<7g/dlで死亡率↑、<5g/dlで死亡率↑↑
・著者らは、心血管系疾患がない無症状の患者での輸血開始基準はHb<7g/dlを推奨
・心血管系疾患患者では、9-10g/dlを基準に
硬膜外麻酔の臨床より
・胃の内臓痛支配神経はT6-9の脊髄神経と、延髄からの迷走神経、そしてT5-11の腹腔神経節の交感神経が関与
・胃癌の手術ではT2-L1までの完全な麻痺が望ましい(全麻併用の場合はより狭くてもOK)

【考えごと】
・Epioneshot後にST低下を伴うエフェドリン抵抗性の血圧低下を呈した。一時的な冠スパスムの可能性もあったかもしれない。対応としてはNTGが第一選択のよう。

【明日のために】
・Epi one shotには要注意。
・心臓大丈夫な人ならHb<7g/dlとなるまで積極的な輸血は不要。
・マーゲンは術野が広く広範囲の硬膜外ブロックが必要。手術開始前に1%Xyとフェンタニルでしっかり効果範囲を広げておこう。
【症例】50代女性。左前頭葉の転移性脳腫瘍に対する摘出術、6hrs予定。
【合併症】BMI30台の肥満の他は特になし。
【麻酔計画】spiral tubeの挿管、AラインFrotraq、femoralからのCVダブルルーメン、末梢もう1本。

【麻酔の実際】
入室後まず酸素投与で深呼吸を促す。
フェンタニル50μg、TCI 3μg/kg、レミフェンタニル0.2γで入眠後ロクロニウム50mg、Sevo1.5%で3分間ほど、ICPを上げないように過換気気味でマスク換気。
挿管後Sevoは1%、etCO2は30前半を目安に。レミフェンタニルは0.1-0.05γにダウン。
AラインをとりBGAでPaCO2を確認、35mmHgを目標に呼吸器を調節。
あまりPIPを上げすぎるとICP↑となるので、TVは少なめ、回数多めで。
肥満があり酸素化が悪く、PEEP4-5も併用。
右大腿にエコーを当てAとVの位置関係を確認、針をかなり立て気味にしてやっと当たる。
SVVがあるのでCVPは目安程度、深すぎない45cmで固定。
手術開始前からマンニトール60gをゆっくりdiv開始。
手術開始直前にウリナスタチン10万単位をiv、フェンタニル50μgを5回に分けてiv。
これでtotal300μg。これ以降フェンタニルは使わず。
皮切が入り前頭部の骨膜をむきむきにするところで結構痛がる。0.3γまでレミフェンタニルを増量。
開頭し硬膜切開のところでまた少し痛がる。0.2γ+早送りで対応。
マイクロが入る頃にはレミフェンタニルは0.15γ。徐々に減量していき0.1γで維持。
血圧とSVVを見ながらボリュームは適宜。
HESは凝固止血機能に影響するのであまり入れないように、1000mlで打ち切りにしてアルブミン製剤を1本250ml使用。
最初は外液メインで入れたけどその後は基本的に絞って、なるべくHESでボリュームを維持する感じで。
尿量もマンニトール入れた割に反応しないなあ、術野をみるとなんだか脳も張っているようにも見えるしラシックスでも入れようかと思っていたら途中からじゃんじゃん流出。脳も徐々にしぼんでいった。
体温はうつ熱のためか上昇、掛け物を調節して37℃台後半で踏みとどまる。最初にフェンタニルを入れておいたおかげか指先はぽかぽか。
痙攣予防のフェニトイン内服中ということもありロクロニウムが切れるのが早い早い。2時間で1V使いきる感じ。
術野では血がじわじわにじみ出ているけどカウントは200とか300とかぱっとしない。
1-1.5時間おきにBGAのHb低下でなんとなく出血量を推定。
硬膜閉鎖して閉頭している時にもじわじわ出て最後までHbは少しずつ下がり続ける。
手術終了後からRCC2U入れ始めたけどもう少し早めに入れられたらよかった。
閉頭時くらいからフルルビプロフェン50mgを血圧が下がらないようにゆっくりdiv。
手術7hrs麻酔8.5hrsで出血400+α(カウント難しい)、尿量1700、RCC最後に2U、輸液は3900、balanceは+2000。ちょっと入れすぎた気もしなくもないが、SVVはずっと7前後で一定だったし、抜管時の血圧上昇はなくニカルジピンも不要だったことも考えるとそうでもなかったのかもしれない。ICUでのバイタルも安定していた。
覚醒は普通に。ややバッキングあったが自発呼吸は良好、シバリングなし、創痛なし、意識もクリアで従命も可能。

【調べもの】
麻酔科レジデントマニュアルより
・吸入麻酔薬は濃度依存性に自己調節能を障害⇒1MAC以下で
・フェンタニルはできるだけ少量 5μg/kgまで 閉頭時に投与しない
エビデンスに基づく実践麻酔科学より
・ICP↑症例のProp投与・・・低血圧となり脳潅流圧が低下しないよう注意
・重篤でなく、急激なICP↑がない症例では、Sevo+過換気ならOK

【教わったこと】
・フェンタニルは年齢や状態にもよるが硬膜操作前に2-3A使うだけ。術後あんまり痛がらない。

【明日のために】
・開頭術にはフェンタニルはあまり要らない。
・マンニトールはじわじわ効いてくることもある。ラシックスをあせらない。
・じわじわ出血は最後まで続く。早めのRCCを。
【症例】60代男性。55kg。胆管癌に対してPD予定。7hrs予定。
【合併症】喫煙歴のみ。スパイロ正常。Hb13。DMなし。
【麻酔計画】T7/8か8/9からのEpi、Aライン、CVトリプル、S-G。
【麻酔の実際】
T8/9からEpi。cold testで効果を確認、乳頭から鼠径まで冷覚消失あり。若干右>左。
フェンタニル50μgとレミフェンタニル0.2γ、TCI 3μg/mlで入眠確認後ロクロニウム40mgで筋弛緩を得た。
入眠を待つ間にフェンタニル50μgと1.5%XyEをtotal8mlEpi注し、0.75%ロピバカイン5ml/hrで開始。
挿管し内頸静脈を張らせるためにPEEPをかけ肩枕を入れベッドを頭低位に。
エコーで内頸静脈をチラ見。大きく張っている。
まず上からS-Gのガイドワイヤーを挿入しガイドワイヤーはペアンとガーゼで覆布に固定。
その1cm下からCVのガイドワイヤーを挿入。
まずダイレーターを装着したシースにガイドワイヤーを通し、皮膚の直前まで進めてからメスで皮切を加え、根元まで刺入。ガイドワイヤーとダイレーターをいっぺんに引きぬいてきて逆血を確認。
次にCVトリプルを同様にガイドワイヤーに通してメスで皮切を加え15cm挿入。逆血確認し固定。
S-Gカテーテルを挿入。左回りのローテーションを維持しながら、まずは心拍と心拍の間に1cmずつ進める。
右室に入ったら今度は心拍と同じタイミングで1cmずつ進める。RVに入った深さから+10cmほどでPAに入り、そのまま少しずつ進めるとwedgeした。
一度バルーンを抜き、少し引いてはバルーンを入れてwedgeすることを確かめる、ということを繰り返す。
その間Epiによる血圧低下ありエフェドリンで対応。
手術開始前にウリナスタチン10万単位iv、PGE1 0.005γで開始。
手術開始し皮切後もバイタルは安定、Epiは効いているよう。
しかしそのころから急に頻脈となった。
RVEDVIは110台。
その時までに外液1本分くらいしか入っておらず、hypoを疑い、ネオシネで踏ん張りながらヴォリュームを入れる。HES1本くらい入ったらバイタルは多少落ち着いた。RVEDVIも140台まで上昇。
しかしその後も頻脈は持続。
頻脈を見たらまず浅麻酔を否定、と思いつつフェンタニル100μgivしてみたりレミフェンタニル0.5mlを早送りしてみたりするが、HRは変わらず。刺激が大きいかと思いレミフェンタニル0.05γから0.1γへup。
次にhypo、と思いつつHESを入れてみるが、少しHR↓するものの上がっていく一方。
浅麻酔とhypoを否定したのでひとまずランジオロール10mg/hで開始。
体温は37℃前後、多少上昇してきている。末梢は温かい。
RVEDVIは140。PCWPは8前後で経過。
休憩時間に二人の先生に相談すると、先生によって言うことは違うが、こんな感じのことを教えてもらった。
①RVEDVI=160、sPAP=25mmHgくらいを目標にvolumeを入れた方が管理が楽。
②volumeの一番の指標はPCWP。60代で肝臓悪くなければ10-12mmHgを目標に。PCWPの値とその時のPAPやSVVを見比べるといつもwedgeさせなくてもだいたいわかる。本当はTEEで左室の大きさを見れればさらによい。
それまで麻酔開始3時間で2000程度入っていた。そんなに入れてもいいんだと思いつつ外液とHESを入れてみるとRVEDVIとPCWPは上昇。しかしHRは少しずつ上昇する一方。
ランジオロールを20mg/hに上げてみるも効果なし。10mg/hに下げる。
レミフェンタニル早送りでややHR↓する感じがあり、刺激も考えフェンタニルを適宜追加し、total400μg使用。Epiが入っていてもこれくらい使えばシバリング予防も兼ねていいのでは、と思う。最後のフェンタニルから手術終了までに十分時間をあければ覚醒にも影響しないはず。
出血は700程度でFFPを2単位入れただけ。ScvO2の低下もなくHbは9台までの低下。尿量も200-300ml/hくらい出ていた。
こういう侵襲の大きい手術でたくさん入れてたくさん出すというのは、炎症性サイトカインを尿で体内から洗い出すという目的にも適っているのかもしれない。なんとなく血漿交換的なイメージ。
術後半でBP↓あり、しかしRVEDVIは160、PCWPも8。体温は38℃まで上昇し末梢はぽっかぽか。
これ以上volumeは入れたくない感じでフェニレフリンivで対応することに。
「EpiとかPGE1とかフェンタニルとかで末梢開きすぎてるからHR↑してるのかもね。NAd少量使ってもよかったかも」と言われなるほどと思う。
末梢締まってシバリング、というのは防げたが、末梢開きすぎて高体温と合わさって頻脈、というのはあるかもしれない。
手術8hrs、balance輸液4800、出血800、尿量2300、FFP4単位の+2300。
BGAで酸素化も悪くなく、もっと入れる人もいるんじゃないかなという感じ。

手術終了直後、etSEV=0.6くらいで覚醒。
痛い?Epiは効いていたはず、と思いながら自発呼吸確認し抜管。
するとやや不穏気味。
「痛いですか?」と聞くと「イダグナイ。アヅイ、アヅイ」と。
暑くて不穏になっていたらしい。確かに皮膚は熱い。
ICU入室後、個室でクーラーをがんがんに効かせて落ち着いた。
痛くてではなく、暑くて目が覚めるというのは初めて見た。
うちの病院はEpiありの場合フルルビプロフェンは使わないことになっているが、使っていたらどうだったんだろうか。
術中からクーリングするべきだったか。

【明日のために】
・Epiなどで末梢ガンガンに開くときは、最初にボリュームをがんがん入れよう。
・末梢開きすぎたら、NAd少量も考慮。
・体温上昇して末梢もぽっかぽかだったら、クーリング。
【症例】10代男性。170cm60kg。既往なし。右後腹膜アプローチの下部胸椎から上部腰椎の前方固定術。5hrs予定。
【既往】特になし。自己血800mlあり。Hb=13g/dl。
【麻酔計画】ダブルルーメンチューブでの挿管、AラインFrotraq、末梢もう一本、HOTLINE。MEPを行うのでTIVAで。
【麻酔の実際】
入室しモニターとともにBISシールを貼る。
フェンタニル100μg ivし、ふわっとする感じがないか尋ねると、特にないとのこと。
感受性が高いということはなさそう。
点滴全開にしながらTCIで3μg/mlで開始、数回呼名し反応がなくなったところの脳内予測濃度を見ると1.8-1.9。
レミフェンタニル0.2γ開始、ロクロニウム50mgし挿管。
盲目的に28-29cmほど進め、白カフ5ml入れ食道挿管を否定。
白をクランプしファイバー挿入、カリーナを目視しながら青カフがほとんど見えなくなるくらいまで進めて青カフ1+1ml入れてもらい、30cmで仮固定。片方ずつクランプし分離できることを確認。
体位変換の際に一旦青カフは抜いておく。
左側臥位となり同様に聴診、OK。白、青それぞれファイバーで覗き、位置がずれていないかをチェック。
すぐに分離肺換気開始。O2は100%。呼吸器設定はTV350ml、PEEP 4で。
MEPをするのでスガマデクス200mgでリバース、HPV促進目的でフルルビプロフェン50mgをiv。
手術開始前にフェンタニル400μg追加、レミフェンタニルも0.3γへup。
TCIはひとまず2.5μg/mlで。
手術開始してもバイタルBISとも著変なし。
フェンタニルは1時間後ごとに100μg、totalで1000μg=17μg/kg。
レミフェンタニルも0.3-0.4γで上下。
TCIはBISの上昇を見て3.0μg/mlまで増やした。
輸液はあまり入れすぎると肺に水がたまる、でもある程度入れないと出血に対応できない・・・
FrotraqのSVと尿量を見ながら、必要に応じてHESを使用。
途中尿量少なく辻褄あわせのため手術終了間際にlasix5mgiv。
手術は6hs、麻酔8hrsで、輸液3000(うちHES1000)、自己血+セルセーバーで600、出血1000、尿量1000で+1600。

術中も虚脱肺と換気肺どちらも1時間毎にBGA後のタイミングでサクション。換気肺も20-30mmHgで数秒間加圧。
BGAのPaO2を見ながらFiO2を1.0→0.9→0.8と下げていった。
術野でトロッカー挿入した頃に2回目ロピオンと、トラネキサム酸1gをiv。閉創中に分離肺換気中止、両肺換気とした時にバッキングしてしまった。筋弛緩 が効いていなかった&TCI2.5、レミフェンタニル0.1γまで下げてきていたところだった。BISは60台。やっぱり覚醒予測には使えない BISなのであった。あわてて酸素流量とセボフルランのダイヤルを回して手押しで換気し寝かせる。こんなに早く起きるならフェンタも足りなかったのかと思 い50μg追加iv。Sevoは術中つかってなかったからすぐ醒めるだろうということでTCIを切りSevoで乗り切ることにした。その後バイタルは安 定。Sevoはやっぱり確実。
レントゲン撮影前にもこれでもかとサクションと加圧を繰り返し、無気肺なし、酸素化も問題なし。
覚醒し自発呼吸が十分に戻るのを確認してから抜管。呼吸問題なし。疼痛、嘔気なし。体温39℃まで上昇あったがシバリングなし。

【ICUにて】
・トラネキサム酸をもう1g iv、自己血の残りをゆっくり戻す。
・疼痛徐々に出現しフェンタニルiv、ロピオン、ピリナジン内服でコントロール。
・体温も徐々に低下。HRは90台とやや多めだがランジオロール使うほどでもないだろう。

【明日のために】
・サクションと 加圧の努力は 報われる 、かもしれない。
・閉創中のバッキングに注意。「しないだろう」ではなく、「するかもしれない」。
・フェンタニルはこれくらい使ってもだいじょうぶ。逆にこれくらい使わないとダメ?
【症例】体重15kgの幼児。扁桃肥大に対して両側口蓋扁桃摘出。
【合併症】季節の変わり目にせき込むことあり。
【麻酔の実際】
GOS=5:5:5でslow inductionの後、手背から22G確保、1号液開始。
直後にフェンタニル15μg、ロクロニウム10mg iv。
アセトアミノフェン坐薬200mgを挿肛しRAE tubeによる挿管。
圧20でもリークないことを確認し体位をとってもらう。
挿管後はGOS=1.5:1.5:2.5とし、レミフェンタニル0.2γで開始。
その間に左前胸部に片耳の聴診器を固定しておく。

手術は予定通り終了、終了前にレミフェンタニルを漸減しつつフェンタニル5μgをiv。
筋弛緩が切れていることを確認して麻酔が深いうちに口腔内と気管内をサクション。
Sevoを飛ばしていき0.4程度になったところで開眼、自発呼吸の出現がかすかにみられ、あばれて出血することを恐れてすぐに抜管。
抜管後自発呼吸なく、マスク換気は全く不能となり、SpO2が低下、チアノーゼ出現。
開口しエアウェイを入れようとするがまるで痙攣のように力が入っており不可能。
すぐにロクロニウム15mg ivしてもらい指導医Dr call。
指導医到着頃には換気可能となりSpO2も回復。
喉頭展開してサクションをし、出血はそれほどでもないことを確認。
LMA挿入し、AOS=0.8:0.4:1で筋弛緩が切れるまで少しの間換気。
ある程度切れたことを確認してからスガマデクス40mgでリバース。
自発呼吸の十分な出現を確認後LMA抜去、口腔内サクションし、Sevoをoff、純酸素で覚醒するまでマスク換気を継続。問題なく覚醒し退室となった。

【教わったこと】
・Sevo1でも2でも自発が十分に出ていれば抜管してマスク換気で醒めるのを待つのが子どもの鉄則。こうすると何か起こっても浅麻酔による喉頭痙攣は否定できる。
・小児は抜管するタイミングが大事。大人と同じようにSevoを切ってから抜管する時は、十分に醒ましてから抜管しないと今回のようなことになることがる。一度目覚めても呼吸止まる。そしてまた目覚めてまた呼吸が止まる、ということを繰り返すことがある。特にレミフェンタニルを使うようになってからこういうことがある。だから、抜管したらすぐに退室できるくらいまでしっかり自発を出してから抜管するのが大事。今回は抜管のタイミングが早すぎたんじゃないか。

【明日のために】
・子どもの抜管は、中途半端はダメ。麻酔をしっかり残したままか、すっかりなくしてからかのどちらか。
・レミフェンタニルの残存にはくれぐれも注意。