【症例】60台♀。40hrs前に発症の胆石胆嚢炎に対して臨時で腹腔鏡下胆嚢摘出術。2hs予定。

【合併症】2年前冠攣縮性狭心症(VSA)の診断でCa拮抗薬、フランドルテープ使用中。CAGでは0VD、UCGではAS mild、PG max=23mmHg、EF80%。時折数分持続する胸痛発作があり本日も来院時に胸痛があった。心電図は正常。145cm60kg、obesityあり。データ上はK=3.4やや低値、WBC9000、CRP8、体温37度台。昨日から何も食べていない、水を少し飲んでいるだけ。

【麻酔計画】挿管、Aライン、末梢2本。開腹になったらepi。
VSAの既往あるので、術中に発作が起こらないようにする。
術前K値低めなので、術前点滴は乳酸リンゲル液にKCL20mEqを混注したものをオーダー。
術中はBGAの値を見てK>4を目標に補充し、また硫酸マグネシウム2gを補充する。
過換気、浅麻酔、hypovolemiaを避ける。
発症からそれほど時間も経っておらず、SIRSでもないので、それほど構えなくても大丈夫か。

【実際】
導入
酸素投与開始しレミフェンタニル12ml/hとProp800mg/hでciv開始。入室時SpO296%。
入眠を確認したところでロクロニウム60mgをivし、ラパロなので胃に空気が入らないようにマスク換気はしないで挿管しようとしたがすぐにSpO2低下してきたのでやむなくマスク換気。
すぐSpO2低下するし体型的にも無気肺がかなり起こりやすいとみて挿管したあとすぐにPEEP4をかける。
呼吸
BGAではP/F200程度と悪い。術中PEEPかけて様子見るしかないだろう。etCO2とPaCO2の差をチェックし、PaCO2が40程度になるようにetCO2を調節。
酸素化についてはPEEPを6まで上げ、P/Fは320まで改善。抜管も加圧で行った。抜管後も酸素化問題なし。
循環
末梢もう1本とりHESを1本投与。脱水はかなりあるので、定期のラパコレより入れないとダメだろう。血圧下がればフェニレフリン(場合によってはciv)必要かもしれないが心機能いいので大丈夫だろう。
AS mildあるが心機能はよく、意外と脱水もそれほどでもなかったようで、フェニレフリン1回使用で血圧は安定。
麻酔
術中はレミフェンタニル15ml/h≒0.4γ程度、Prop15ml/h、etSevo1%のやや深めのOAPSで行った。
手術開始時は痛がるが徐々に痛みの程度が軽くなってくるのか、後半はレミフェンタニルを徐々に下げていける。
フェンタニルは手術開始時200μg、あとは1時間毎に100ずつでtotal400μg。
手術終了時に術野で0.75%ロピバカインを使ってくれるので、覚醒時に創痛はほとんどない。
出血20Hr200でin/outで+2000。シバリングなし。

【考えごと】
ラパコレは前にいた病院では必ずepiを入れていたが、
ロピバカイン使うことも合って全然痛がらない。
全国的な流れでも、ラパコレにはepiを入れないようになっているようだ。
周術期冠攣縮のリスクとしては、
過換気、低K、低Mg、hypovolemia、浅麻酔、低潅流圧等があるが、
BGAや各種モニタリングによりそれらを避けることが重要だろう。
冠攣縮が起こった場合には、ニコランジル、ニトログリセリン等の投与が必要だが、
今回は起こらなかった。

【明日のために】
ラパコレは術後痛くない。
特に何事もなく手術が終わり、患者さんにとってはいいことだった。
【症例】50代男性。直腸癌に対して腹腔鏡下低位前方切除術、側方リンパ節郭清。4hrs予定。
【合併症】脳出血の既往あり左片麻痺あり。高血圧でARB、α遮断薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、利尿薬等多剤内服。血圧は120台と安定。血便があり輸血してHb9点台まで上昇。
【麻酔計画】epi、挿管、AラインFrotraq、CVシングル。術前心エコー等はされていないが、脳出血の既往から動脈硬化は進行していることや、降圧薬を多剤飲んでいることから、麻酔導入で血圧低下が起こる可能性も考え、一応三活を多めにつけておく(DOB+NAd)。貧血があり、側方リンパ節郭清である程度出血することが予想されるので、太い末梢をもう一本ほしいところ。
【麻酔の実際】
・通常左側臥位でepiをするが、入室後に患者さんに確認したところ左側臥位は難しいとのこと。右側臥位でepiをT12/L1から挿入しtest doseを注入。
・cold testで左右とも効いていることを確認し、フェンタニル50μg、ロクロニウム40mg、レミフェンタニル0.2γ、プロポフォール3μg/mlで導入。点滴全開でも落ちがいまいちで、なんだか末梢ルートがあやしい感じだが、一応薬は入っているようなのでそのまま導入。少し血圧が低下傾向となり、血圧が下がる要素しかないのでエフェドリン5mg ivした後に挿管。
・すぐさまヘッドダウン、CV挿入へ。エコーでスキャンするが内頚動脈と内頸静脈が離れている(重なっていない)タイプ。あまりいないけどこういう人はエコーで見ないとなかなか血管に当たらないことになる。(通常は、内頸動脈のすぐ隣に走っていることが多いので、ブラインドでやるならまず内頚動脈のすぐそばから狙っていくことが多いため)しかも内頸静脈はペタペタで血管内容量が減少しているんだろう。末梢18Gを看護師さんにとってもらう。試験穿刺をして血管には当たる。本穿刺で逆血は引けるがガイドワイヤーが何度やっても入っていかない、というか入るんだけど抵抗感がある。本当に入る時はするする入るものだから、ちょっとでも変な抵抗感がある時はやり直したほうがいいというのを経験的にわかってるので、何度もやり直すが入らない。こういうときのために一緒に消毒しておいた左頚部から刺すことにする。こちらは動脈の直近でスムーズに入った。右の長さ+2cmで17cm固定。後からCTを見直してみると、左の内頸静脈の方が右よりも明らかに太かった。こういう場合もあるから、右であまり粘らないで左から刺すべきだったか。
・Aラインは麻痺側からは原則とれない(いざとなればとるしかないが・・・)ので、健側から。ところがCVで時間がかかったことで焦ってしまいなかなか入らず、上の先生に入れてもらった。
・この間も意外とバイタルは安定。外液だけ700mlほど入ったところでBGAをとるとHb7点台。おぉもうこんなに低い。術中に2単位くらい入れなきゃダメかな、と予想して準備血を用意してもらう。50代と若いけど術前にも輸血しているので、外科の先生の心証もそれほど悪くはないだろう。
・ラパロ開始で血圧が一過性に上昇する。レミフェンタニル0.1γとフェンタニル最初から合計100μgで徐々にバイタルは安定してくる。しかしこういうときも術後痛がったりするので、シバリング対策が必要と考えてフルルビプロフェンとペチジンを取り寄せてもらう。
・輸液は外液を維持量程度に落とし、血圧低下やSVVの上昇に対してはHESのボーラス投与で対処するいつもの感じで。こうするとへたにinがかさまなくて済む。あまり外液ばかり入れると腸管浮腫がくる。アルブミン製剤も以前いた病院ではよく使っていたが、今の病院でアルブミンが使いづらくなってHESで代用してやってみると、ぜんぜんいけるんだということがわかった。
・昼交代を挟んで戻るともう吻合している。側方郭清があるわりに早いな、と思いつつ、少しずつ覚醒へ向けて準備する。Hrの量をみてin/outバランスを計算し、極端に+や-にバランスが偏らないようにする。足りなければ入れるし、多すぎれば絞るかラシックスを使うか、という感じ。今回は血圧がある程度保たれていたこともあってか尿の流出がとてもよく、-バランスに傾いていたので、途中から外液やHESを入れ気味にする。そうするとどうしても薄まってしまい、Hb=7まで低下したところでRCC2Uを投与。
・シバリング対策としてフルルビプロフェン50mg divとペチジン17.5mg iv、17.5mgをimとする。
・閉腹し「ありがとうございました」と外科Drが言った時点では、もう麻薬も〆てもらっていた。そこで急に「リンパ節郭清を忘れた!」と言われ再度麻酔を深くすることに。まだ抜管していなくて良かった。さて、どうしよう。こういうときどうしようか考えるのが楽しい。
・麻薬はもう〆てしまったが、フェンタニル1Aなら伝票を書き変えずに使えそうだ。それまで250μg使用して最後にフェンタニル50μgをepiに注入してから1.5時間くらい経っている。ひとまず25μgをivした。レミフェンタニルは使えないのでセボフルランを2%、TCIで2μg/mlとし、インフューザーをつないだ脇から2%Xyを3ml注入して気腹開始時の刺激を抑えるようにした。気腹開始時多少血圧は上昇したがバイタルは徐々に安定してきたのでセボフルランを1.5%に、TCIも血圧を見ながら徐々に下げていった。腹腔鏡なのでさすがに筋弛緩も足したが、途中からTOF=0でも自発呼吸が出現しetCO2アラームが鳴り出した。Pressure Controlモードにしてみると呼吸回数は12-13回もある。そうこうしているうちにリンパ節郭清は終わり、残りのフェンタニル25μgを追加し50μgをepiに注入。呼吸回数は8-10回に落ち着いた。閉創終了後純酸素8L/minとし、スガマデクスでリバースし、十分に自発呼吸が出ている状態でetSevも0.2以下となり、すやすやと眠っている状態。こういう時はヘタに刺激せず自然に醒めるのを待った方がいい。2-3分すると自然と開眼したので、口腔内と気管内をサクションし速やかに抜管。覚醒は良好。シバリングもなく落ち着いた状態で退室となった。退室していく患者さんの「もう手術終わったんですか?」という一言を聞くと、いい麻酔だったのかもしれないという気がしてくる。
・手術時間6h麻酔時間7hでin/outはin3300(うちHES800ml、RCC2U)、outがHr1700、出血カウント約500、+1100。バランスでいうと+2ml/kg/hとかなり控え目だが、術後の尿の流出もよく、inにはRCCも入っているので、こんなものでもいいんだろうという感じ。


【明日のために】
・CV、右でダメなら左がある。さっさと左を刺す勇気を。
・普通の麻酔なら誰でもできるようになる。どんな事態にでも対応できる実力をつけていく大切。
・終了間際のロピオンとペチジンが、シバリングをかなり防いでくれている。
【症例】60代男性、160cm50kg、直腸癌に対してラパロ下切除。5hrs予定。
【合併症】特になし、ASA1。腫瘍はAV=10cm、全周性で癒着が強い、側方リンパ節郭清も予定。
【麻酔計画】epi、CV、AラインFrotraq。シバリング対策が必要。
【麻酔の実際】T12/L1からepi、挿管、CV、A-line。
合併症のない若い人だし、フェンタニルは4Aくらいは使いたい。
レミフェンタニル0.05-0.1γで術中キープしてフェンタニルを使わないというのがうちの病院のやり方だけど、今日はシバリング対策としてフェンタニルをそこそこ併用しレミフェンタニルは0.03γで固定にしてみる。
輸液は、外液をどばどば入れるのもオシャレじゃないので、外液しぼって+血圧下がった時やボリューム欲しいときにHESをポイントポイントで使う、という感じでやってみる。こういう輸液のしかたの方が、外液じゃばじゃばという古典的な輸液法よりも術後合併症等が少ないよっていう報告が出てきているらしい。
エピはちゃんと効いている、はずだがやはり気腹の刺激でHR↑する。
BPも↓したのでhypoと考えてさっそくHESを100-150mlずつ入れてみるとバイタルは比較的安定。
フェンタニルは手術開始前に100μg、1時間後にBP↑したときがあり浅麻酔否定のため100μg、その2時間後にまだまだかかりそうということを確認して100μg iv。
手は温かく、ガスでもLacは上がっていないので、末梢循環はそれなりに保たれている。
術中時々in/outバランスを計算して、最終的に(出血量にもよるが)+1000-1500くらいのバランスで帰れるように意識して輸液を調節。
全体としては、最初は腸管がむくむのも嫌だし絞り気味で、最後はシバリング予防&術後の低血圧を防ぐために、だんだんプラスバランスに傾けていく、という感じにした。最後の方は侵襲が強く、血管透過性も亢進しているだろうから、外液を入れても血管内に残らなさそうということで、HESをいくことに。だからといって外液もそれなりに入れないと浸透圧が上がって腎障害が起こりそうだし・・・半々くらいがいいかな。
バイタルはおおむね安定、でもレートや血圧が若干フラフラしていて、hypoか浅麻酔か・・・と思っていたが、後から考えると麻酔が浅かったのかもしれない。
こういう長時間手術で必発だけど、だんだん心拍数が上がってくる。
フェンタニル入れてもレミフェンタニル早送りしてもHES全開にしてもランジオロール使っても下がらない、心拍数の上昇がある。
手術侵襲そのもの・炎症によるもの?、のような話を聞いたことがあり、しばしばフルルビプロフェン=抗炎症薬で心拍数が低下することを経験する。今回もそうだった。
モノがとれた所でバランスは+1000もない。けど尿量も十分すぎるくらい保たれている。さっきまで温かかった指先は冷たくなっている。体温は大きな変化がない。
ふとレスピレーターの圧波形を見ると、変な波形になっている。
もしや・・・と思い、自発モードにしてみると、立派な自発呼吸が出ている。
経験上、こういう時はシバリング必発という法則がある・・・
閉創に入り、シバリング対策を開始。
フルルビプロフェンdiv、ペチジン17.5mgをiv、残り17.5mgをim。HESを1本早めにどーっと。
自発呼吸が出てからはプレッシャーサポートモードとして、呼吸回数が12回くらいだったのでフェンタニルの入れしろがあるだろうということで50μgをivし8回へ減少。ここまでで400μg使用。
最後にepiに50μgを入れてインフューザーをつなげた。
いくら対策してもシバリングするだろうな~という予想とは裏腹にシバリングせずすっきり覚醒。
自発呼吸も十分で抜管後のガスも問題なし。
手術6時間麻酔7時間in3000(うちHES1500)、出血600、尿量1200で+1200のバランス。
バランスだけ見ると相当絞ったように見えるけど、実際1500mlはHESなわけで、3000全部外液というのと訳が違う。術後も血圧は安定(心拍数は90台、これは仕方ないかな)
長い手術ってわかってるから、最初からフルルビプロフェンを予防的に入れたりするのはどうなんだろうか。婦人科の長い手術だと最初と最後に1Aずつ入れたりする。
あと最初からランジオロールを使ってると頻脈になりにくかったりするのか?機序を考えると関係ないような気もするが興味あるところ。
HESも1000mlまでとか20ml/kgまでとか書いてあるものもあるけど、大量出血した人に10000以上入れてもなんともありませんでしたよ的な症例報告もあり、元気な人なら意外と入れても大丈夫なんだと思う。

【明日のために】
・シバリングしそうな人にはペチジンを。
・HESどかっと入れていい。あまり外液は入れなくていい。
【症例】80代男性。進行胃癌に対して開腹胃全摘術、4hrs予定。予想出血量500ml。
【合併症】HTでARBとCCB内服、UCGではAR1°、EF70%。Hb=10台の貧血、eGFR 40台の腎機能低下あり。
【麻酔計画】Epi、挿管、AラインFrotraq、CVシングル、DOBは使いそうだ。

【麻酔の実際】
T8/9からepi。
型のごとく麻酔導入するとやはり血圧は下がりエフェドリンを連発。
CIも低めだしCVを挿入後DOB開始。
しかもなんだか脈圧がやたら大きく、収縮期血圧は100台でも平均動脈圧は50台と低め。
出血を考えるとあまり血圧は上げたくないが、腎機能もあまりよくなく、高齢で侵襲の大きい長時間の手術ということもあり、臓器血流維持目的にDOBを2-3γで使用、平均動脈圧60以上キープを目標に調節した。
最初に外液を全開気味で500mlほど落とし、BGAでHb=8.9。
その後HESを1本を落として出血に備えて希釈しておく。
epiの効きはばっちり。レミフェンタニルは0.05γでOK。
腸間膜牽引症候群になるかなと思っていたがならず。
しかし術中2回ほど急に血圧が80前後まで下がることがあり、
フェニレフリン100μg one shot1回で回復。なんだったんだろう?
モノがとれた時点で出血カウント600。Hbは7.9。
輸血するかどうするか・・・
ScvO2があれば判定できるが、ないのでLacを見てみると、
DOB3γを使って末梢循環を確保しているからかずっと5mg/dlと低めで推移している。
これ以上は出血しないだろうし、とりあえず様子見。
手術終了時にはLac8、Hbも8.0。DOBは1.5γまで下げてBP120台。
手術4.5hrs麻酔5.5hrsでバランスは輸液2500出血600尿量300の+1600。
+2000位を目標に、特に絞ったつもりはなかったが、
開腹術としては結果的にかなり控え目のバランス。
高齢者にrefillingという負荷を考えると、あまり入れたくはない。
最初にもっと外液をどーっと入れてもよかったかな、とも思ったが、
あまり入れすぎると腸がむくむし、HESをどかどか入れるのもなんだか品がないし、
アルブミンはうちの病院ではあまり使えないし、ということでこういうバランスになった。
フェンタニルは術中100μg、+閉腹前に50μgをepi注してちょうどよく醒めた。
シバリングもなく手先は最後まで温かかった。

翌日のバイタルとデータはどうかな・・・

血圧も低くなく、Creも上がっていない。尿量も保たれていて多少のマイナスバランス。
ひとまず、よかった。

【明日のために】
高齢者は若い人に比べてあまり入れなくていいのかも。かもだけど。
【症例】60台男性。重症両下肢ASOに対して右A-F bypass、4hrs予定。
【合併症】慢性腎不全で左前腕にシャント、未透析。Cre3、K4点台、フロセミド・球形吸着炭内服。
HTで3剤内服。CXpでCTR=60%、UCGでLVH diffuseとSAMあり、LVOTOなし、LA拡大、EF70%、弁はnp。ADLは車椅子でNYHAは判定不能。脳梗塞の既往あり。腎性貧血で最近ではHb10台(以前は11台)。
【麻酔計画】
前日にT12/L1からepi。
挿管、CVトリプル(カテコラミン、ダイレーター、ワンショットor輸液輸血ルート)、Aライン2つ(右radial、とれたら足背、いざとなったら浅側頭)
右腋窩動脈をクランプしたら右radialの圧が出なくなる・・・

【前日夜に考えたこと】
まず腎保護のためにある程度ボリューム入れるのと圧を保つのとhANP。
epiで血管拡張してしまうので、締めるか、入れるかだが、フェニレフリンもずっと使えるわけではないしNAdで締めると腎血流も低下してしまう。
LVHとSAMもあり、心収縮力アップさせるβ刺激はあまりしたくない。一時的な昇圧もフェニレフリン優先で。でも腎血流を考えると使い続けるわけにもいかない。
epiで開いた分ボリュームを入れつつ、PGE1とhANPで末梢を開きながら腎血流を保ちつつ、NAdで軽く末梢を締めて血圧を保つ、という方針に。シャント開存のためにも低血圧は避けなければならない。術終了時にはなるべくNAd減量させたい。
出血はそんなにしないはずだが、Hb7台くらいになったら早めに輸血を考慮したい。動脈硬化がひどく腎機能も悪く、心臓と腎臓の2臓器に障害が起こっており、coronaryも(CAG等はされていないが)狭窄がある可能性も十分考えられるので、ある程度のHbは保ちたい。

【麻酔の実際】
awakeで右RAからAライン。
挿管、CVトリプル。このあたりでの血圧低下にはフェニレフリンで対応。術野が広いのでepiは1.5%Xylをtotal10ml入れてロピバカインの持続を開始。
CVはproxymalに維持液+カテコラミン、medialにダイレーター類(PGE10.005γ、hANP0.025γ、ランジオロール5mg/hr)+CVP、distalを万一の輸血ルート(ヘパリンやカルシウムやメイロン等)とした。
血圧はフェニレフリン入れないと維持できないので、ランジオロール開始後にNAd0.1γで開始。
輸液はリンゲル液+K freeのHESを1本。この時点でHb=7台。おっといきなり低いっすね。
バイタル的には安定している。
術野は広かったがepiが良く効いていて術中レミフェンタニルは0.05γで、フェンタニルも導入時の50μgのみで済んだ。
CVまで刺した後に足背に触れるがまったく見込みなし、ということで浅側頭動脈にカニュレーション。
RAとほぼ同じ値が出る!と感動。
ヘパリンを70U/kgivの3分後に右腋窩動脈クランプ。当たり前だがバイタルはほとんど変わらない。
デクランプでもほとんど血圧下がらず。
次は両側femoralのclamp。これでも血圧変わらず。
この間にdeclampに備えて少しボリュームを入れ、術後に備えてNAdを減らしDOBに変えていく。
トライアルとしてエフェドリンでβ刺激してみる、ちゃんと血圧も心係数も上がるのでDOB使ってもよさそうと判断。
両側femoralのdeclampではやはり血圧は低下するがフェニレフリン計0.3mgで落ち着く。
術中BE↓となり重炭酸リンゲル液をメインに入れていた。尿の出が今一つなのとKが5と高めに。GIするほどでもないので点滴を全てKフリーにしフロセミドをiv。NaHCO3もone shotで入れてみる。術後には4点台に低下。
Hbは7台で経過、femoral Aのデクランプ前にある程度ボリュームを入れ、術後マイナスバランスとなって濃縮してもHtが術前より極端に高くなることはなりそうと判断しRCCも開始。
手術終了時はHb=9。手術3時間麻酔4.5時間でバランスは出血200、尿量500、輸液2800、RCC2Uで+2400、バランスで+7-8ml/kg/h、術野を考えると多めといえば多め。腎臓が悪くなかったらこんなに入れなくても済んだんだけど・・・という感じ。
術後はNAd0.05γ+DOB1.5γの状態でICUへ。
すぐにカテコラミンはオフされ、むしろ血圧高めとなり一時的にニカルジピンcivで降圧。Hrの流出とともに血圧も落ち着いてきた。
Hrの流出は非常に良好で術後の採血でもCreの上昇なし。Kも4点台。しかしMgが3.0と高値。重炭酸リンゲルのせいか??腎不全の人は代謝性アシドーシスでだいたいBE低いからつい重炭酸リンゲル入れたくなっちゃうんだけどこれは危ないのかもしれない。適宜アセテートリンゲルなんかを使わなくちゃ。
術後Hr出るにつれて血は濃くなってきている。はたして輸血は必要だったのか・・・という気がしてきた。
【明日のために】
・腎不全患者の重炭酸リンゲル液には注意!(K、Mg)
・こういう人に「入れて出す」、という管理が正しいのかどうか??
・SAM+といってβ刺激を恐れない。やってみてOKならDOBも普通に使える可能性が出てくる。