長らくブログをサボっていた藤川です。
久しぶりとなった今回のテーマは・・・
なんと、54年製のストラトキャスター。しかも珍しいハードテイルが入荷しました。
当店は【Gibson専門店】のはずですが、こういう素晴らしいギターを敢えてお持込み頂けるお客様がいるお陰で、本当はストラト好きな私としては、ついついニヤケてしまいます。
珍しいハードテイルです。
このルックスでハードテイルといえば、ロン・ウッドの55年製ストラトを思い出す人も多いと思います。
ボディーを白くリフィニッシュすればCHICのナイル・ロジャースみたい、なんて考えるのは罰当たりなほどレアなこちら。
1954年4月に発表されたストラトは、10月から本格的に生産が開始された、との事。それまでの期間のモデルは、それ以降のモデルとは異なるプラスティックパーツや抵抗値の違うポット等を使用した、試行錯誤の痕が見えるプロトタイプ的なものが存在します。
ジャーン!
これです。
スカートの短いポットノブ。弾力性のない硬めのベイクライトを使用したパーツは割れやすいのが特徴ですが、こちら、辛うじて両面テープで止めてあります。なので、このままで使用『可』!
また、この時期のポットはテレキャスター同様のソリッドシャフトとなっています。
そして、ズングリムックリな"フットボール型"のスイッチ・チップもこの時期の特徴です。
角が丸いPUカバーも、54年独特の形状をしています。
トーンポットは100KΩ。
これが、特徴的な野太いサウンドを生み出します。
どうやら、ハンダバージンっぽいです、、、
TGのイニシャルは、この時期に働いていた、タデオ・ゴメス氏によるもの。
プロト期と言われる時期の最終の頃でしょうか?
ボディーのパーツからすると、もっと早い時期に生産されていながらハードテイルのオーダーがなかなか入らず、ようやくこの頃に組み上げられたのかもしれません。
勝手に色々と想像するのも楽しいものです。
ボディーはなんと1ピース!
くっきりとしたアッシュの木目が生々しいですが、この1ピースである所も初期54年製の特徴である"イレギュラー"感でしょうか?
ラッキーですね。
しっかりと残った"スパゲッティー"ロゴ。
ヘッド周辺の丸みを帯びた面取りのカーブもこの時期の特徴です。
やや太めの、近年のカスタムショップサイズに近いフレットに交換されています。
メイプル指板のリフレットはリスクがありますが、指板のオリジナルの塗装を残したままキレイに交換されています。
板目~追い柾目の木取りがされたネック。
現代ではもっと厳格なセオリーもありますが、、、
関係無し!と言わんばかりな所がオリジナルのフェンダーらしいですね。
60年を経た結果、実際に使えてしまうコンディション。
最近流行りの『事実は小説より奇なり』です。
程よく汚れて、威厳があって、さすがの存在感です。
ハードテイルのボディー裏、裏通しの感じは、テレキャスターの頃の名残りをそのまま引き継いでいるようにも感じます。
半魚人か、マーメイドか、最初期のストラトであれば尚更、テレキャスターからストラトへと移行する丁度その頃の面影を感じます。
サウンドは、やはり野太いというか、木の塊がそのまま鳴っているような感覚があります。テレキャスターっぽさが有ると言えばそうとも言える気がしますが、やはりストラトですね。
トレモロ独特のシャープで洗練された感じが無いこともかえって新鮮です。
クラプトンのようにトレモロを固定して使うギターリストもいますが、最初から裏通しのハードテイルには、それ相応のサウンドのベネフィットが十分にあることが分かります。
説明が難しいので、時間の有る時にHPに動画をアップしたいと思います。
100KΩポットの為だと思いますが、アウトプットされるサウンド、特にフロントとセンターは心地よいぐらいファットです。
ケースもオリジナル。
ハンドルとラッチがぶつかるこの時期のツイードケースです。
エレキギターの歴史上ではレスポールと並び最も重要なモデルとなるストラトが誕生した、歴史の始まり。
『最初から凄かった!』
と言える銘器です。
こちらは、大量のカスタムショップ製レスポールで埋められたG-Club Tokyoの2階にて、"異彩"を放っています。