AR  KITCHEN 教えて!馬学の時間
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馬は立って眠ると聞きましたが、横になって眠らないのですか?また馬も眠っているときに夢をみますか?


眠り1

馬は立って眠ることができますし、横になって眠ることもあります。また、横になって眠っているときに、夢を見る馬もいるようです。

私たち人間にとって、立ったまま眠るのは至難のわざです。眠りに落ちると全身の筋肉の力が抜けるため、立ってはいられなくなるからです。ところが馬は、眠りに落ちて筋肉の力が抜けても、そのまま立っていることができます。馬の四本の脚の関節は、骨と骨をつないでいる靱帯(じんたい)でしっかり固定されており、スッと眠りに引き込まれても決してひざがガクンとしたりはしないのです。


眠り2

とはいえ、深い眠りにつくためには、やはり馬も横になる必要があります。ただし馬が横になる時間は13時間程度しかありません。しかも、この眠りは断続的で、15分ほど横になっては立ち上がるということを繰り返しながら一晩を過ごしています。


眠り3

睡眠時間が馬と同じくらい短い動物としてはゾウ、ウシ、ヒツジがあげられます。これらの動物には、比較的大型で肉食獣に襲われる危険のある草食動物というの共通点があります。体が大きいため、すっかり身を隠せる安全な場所を見つけるのは難しい動物たちです。


眠り5

 同じように肉食獣に襲われる危険のある動物でも、ネズミなどは113時間は眠ります。ネズミは体が小さいため身を隠せる安全なねぐらをどこにでも見つけることができるので、安心して熟睡するというわけです。


眠り4

 さて夢についてですが、馬は横になってすっかり頚(くび)を投げ出して眠るときがあります。このときの脳波は、人のレム睡眠と呼ばれる眠りの際の脳波によく似ています。レム睡眠のとき、人は夢を見ていることが知られています。実際、馬でも、こうした姿勢で眠っているときに、突然いなないたり四肢をばたつかせたりすることが観察されています。馬はレースに出走している夢を見ているのかもしれません。

(2007年11月17日放送)


秋華賞は牝馬だけしか出走できないそうですが、牡馬だけしか出走できないレースはあるのでしょうか?


性差1

 出走が牝馬に限定されるレースは、秋華賞の他にも、来月行われるエリザベス女王杯や、春の桜花賞、オークスなどたくさんあります。これに対して、牡馬だけしか出走できないレース、すなわち牡馬(ぼば)限定レースは、JRAの競走にはありません。皐月賞、ダービー、菊花賞、どのレースでも牝馬の挑戦は許されています。

3歳以降の競馬では、牝馬は牡馬より2キログラム負担重量が軽減されます。たとえば、ダービーでは牡馬が背にする重さは騎手も含めて57キロに対して、牝馬が負担するのは55キロです。牝馬は負担重量を2キロおまけしてもらうわけですが、この差が必ずしも牝馬に有利とはならないのは、ウォッカによるダービー制覇が、牝馬としては64年ぶりという事実からも明らかでしょう。


性差4

 一般的に、人も含めて哺乳動物のメスは、オスに比べて走能力や跳躍力は劣ります。その典型は人の陸上競技ですが、100メートル競走でもマラソンでも、男子の世界記録は女子をはるかに上回ります。


性差2

こうした動物のオスとメスの運動能力の違いの原因は、体のさまざまな部分の違いにあります。

まずパワーを生み出す筋肉ですが、メスに比べてオスのほうがはるかに多くの筋肉が体についています。一方、メスの筋肉の細胞はオスに比べて多くの水分を含んでおり、力強さに欠けます。

また、メスの心臓は小さく、血液の量も少ないのですが、このことは、オスに比べてメスのほうが持久力が劣るという結果につながります。


性差3

もっともこうしたオスとメスの体の違いは、若いうちはそれほど目立ちません。

 動物には成長の途中で性ホルモンの分泌が急にさかんになる時期があります。もっぱらオスは男性ホルモンの作用で、またメスは女性ホルモンの作用で、今言ったオスとメスとの体の違いが目立ち始めます。そうした体の構造上の違いは、サラブレッドでは2歳の秋を過ぎたころから、運動能力の差として明らかになってきます。そこで競馬では2歳の10月から、負担重量にオスとメスの間で差をつけ始めます。

(2007年10月20日放送)

馬にも盲腸はある?

盲腸1

人では、盲腸といえば無用の長物。そればかりでなく、盲腸炎をおこすと手術が必要になるなど厄介物とすら思われています。実際、人の盲腸、正確には虫垂と呼びますが、わずか指先程度の大きさで、消化器官としてはほとんど生理的役割を持っていないと考えられています。これに対して馬の盲腸は、長さ1メートル、体積は30リットルにもおよびます。一升びんであればおよそ 16本分にもなるのです。馬の盲腸は人の盲腸と違って、大きさもさることながら、消化器官として重要な役割を担っています。


盲腸2

馬が主食としている草は、水分を除いてその4分の3はセルロース(いわゆる線維)と呼ばれる物質でできています。この物質は便秘や大腸ガンの予防など、人の健康維持の面では有用で、最近は健康食品としてもてはやされています。しかし、人はセルロースを消化できないため、エネルギーとして利用することはできません。

ところが、馬はそのセルロースを、走るためのエネルギーとして利用する能力があります。ただし、馬がセルロースを分解できる強力な消化酵素を分泌する能力を持っているわけではありません。秘密は馬の大きな盲腸にあります。

 馬の盲腸には、たくさんの微生物が住んでいます。この微生物は盲腸に入ってきたセルロースを分解し、消化管で吸収できる糖に変えているのです。微生物の作り出したこの糖を、馬は盲腸ならびに結腸で吸収します。馬はこのようにして、セルロースのおよそ40パーセントをエネルギーとして使うことができるのです。


盲腸3

大きな盲腸を腹部に収めて、そこにすむ微生物がもたらしてくれたエネルギーで、サラブレッドはターフを駆け抜けているのです。


盲腸4

(2007年9月22日放送)