馬にも盲腸はある? | AR  KITCHEN 教えて!馬学の時間

馬にも盲腸はある?

盲腸1

人では、盲腸といえば無用の長物。そればかりでなく、盲腸炎をおこすと手術が必要になるなど厄介物とすら思われています。実際、人の盲腸、正確には虫垂と呼びますが、わずか指先程度の大きさで、消化器官としてはほとんど生理的役割を持っていないと考えられています。これに対して馬の盲腸は、長さ1メートル、体積は30リットルにもおよびます。一升びんであればおよそ 16本分にもなるのです。馬の盲腸は人の盲腸と違って、大きさもさることながら、消化器官として重要な役割を担っています。


盲腸2

馬が主食としている草は、水分を除いてその4分の3はセルロース(いわゆる線維)と呼ばれる物質でできています。この物質は便秘や大腸ガンの予防など、人の健康維持の面では有用で、最近は健康食品としてもてはやされています。しかし、人はセルロースを消化できないため、エネルギーとして利用することはできません。

ところが、馬はそのセルロースを、走るためのエネルギーとして利用する能力があります。ただし、馬がセルロースを分解できる強力な消化酵素を分泌する能力を持っているわけではありません。秘密は馬の大きな盲腸にあります。

 馬の盲腸には、たくさんの微生物が住んでいます。この微生物は盲腸に入ってきたセルロースを分解し、消化管で吸収できる糖に変えているのです。微生物の作り出したこの糖を、馬は盲腸ならびに結腸で吸収します。馬はこのようにして、セルロースのおよそ40パーセントをエネルギーとして使うことができるのです。


盲腸3

大きな盲腸を腹部に収めて、そこにすむ微生物がもたらしてくれたエネルギーで、サラブレッドはターフを駆け抜けているのです。


盲腸4

(2007年9月22日放送)