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【症例報告】

          ある慢性疲労症候群の1例

 (SSRIの長期大量服薬により発症したと推定され、キノコ類の大量摂取により寛解傾向にある1例)

                             

         

 慢性疲労症候群は現在蔓延してきた難治の疾患とされており未だその原因も確定されていない。しかし『ウイルスに因る』と一般に信じられている。しかし未だ何のウイルスによるものか確定されていない。

 ここに時間をかけ、詳細にウイルス抗体価などを調べた慢性疲労症候群の症例が1例存在する。(ここでは慢性疲労症候群に類似した症状を呈するならば慢性疲労症候群と呼ぶことにする)この症例は長期に渡りSSRIを大量に服薬してきた。その経過を詳細に記し、考察を加える。また新しい慢性疲労症候群の診断基準を提示する。

【key words】chronic fatigue syndrome, serotonine selective reuptake inhibitor, social phobia

【症例】

 症例は29歳、男性。平成11年5月終旬よりfluvoxamine maleate(以下、 fluvoxamine と略す。)150mg/day の服薬(すべて夕食後)を開始。その頃より激しい全身倦怠感を自覚し始める。fluvoxamine による副作用に間違いないと思われた(fluvoxamine 150mg/day の服薬(すべて夕食後)を75mg/day や50mg/day に減らした翌日は僅かながら全身倦怠感は軽かった。症例は18歳の時より、社会恐怖(対人緊張)で非常に悩み苦しんできた故、激しい全身倦怠感にも拘わず病気を治したい一心で服薬を続ける。主治医にはその激しい倦怠感を隠し続け、激しい全身倦怠感に耐えるため、毎晩ステーキを大量に食するなどにより、体重が65kgから86kgにまで2カ月ほどで増加した。

 fluvoxamine の服薬量は最初こそ150mg/day であったが、効かないということで1カ月後には300mg/day (朝、昼間に服薬すると仕事中眠くなるということで夕食後のみ服薬。主治医には朝、昼間に服薬すると仕事中眠くなるということを隠していた。)に増量。この極量摂取を5カ月間続ける。しかし本症例はすでに平成12年6月よりインターネットより fluoxetine を購入し、それも同時に服薬していた。 しかしこれにても対人緊張は少しも軽くならず、 さらにsertraline をインターネットより購入し、その服薬をも開始する( fluvoxamine 、 fluoxetine、sertraline の3種のSSRIを同時服薬していたことになる)。

 症例は学歴が極めて良く、英語が極めて堪能であり、社長も症例には特別扱い状態であり、症例は会社に出てくると会社の保健室のベットにて臥床するという毎日を繰り返していた。外国からの客の来たときのみベットより起き出しネクタイを締め、その外国人客の応対をするという毎日を行っていた。他の部署に症例が顔を出すと厄介者扱いされるというような状態であった。外部からの外国人客が来たときのみ応対をしてくれれば良いという社長の方針のため会社を休むことを社長は許さなかったが、そのように仕事は非常に楽であった。

 そしてまたその疲労のため、通訳の仕事に於いて、および主に英文の書類作成に於いて、ミスが重なった。

 休日はほとんど臥床状態で(週休2日あるいは週休1日が交互という状態であった)あった。症例はまた独身であった。

 症例の肝機能は fluvoxamine を服薬していた最初の2カ月半、GOT,GPT などが僅かに正常値を超えていたのみで、その後は肝機能値も正常値内であり、肝臓から来る全身倦怠感は考えられなかった。またうつ病、うつ状態ではなかった。

 マイコプラズマニューモニエ抗体価は平成12年2月5日採血では(4未満)(基準値;4未満)であったが平成12年5月22日および5月31日採血では(4以上)に変化していた。

 サイトメガロウイルス抗体価は平成12年2月5日採血では(4未満)(基準値;4未満)であったが平成12年5月31日採血では(4以上)に変化していた。また平成12年9月29日採血では(8以上)に変化していた。

 アデノウイルス抗体価は平成12年2月5日および5月31日、オーム病クラミジア抗体価は平成12年2月5日および平成12年9月29日、RSV抗体価は平成12年5月31日、HTLV-1は平成12年2月5日, HIV1-2 抗体価は平成12年2月5日に各々採血したが全て基準値以下であった。

 また全身倦怠感が激しくなった平成11年5月頃より、それまで吃音が強く、その吃音を押さえるため比較的多量のbenzodiazepine系のクスリの服薬を必要としていたが、その必要性が無くなる。

 平成12年8月より軽い抑鬱状態にあることを自覚する。

 平成13年1月、正月休暇で故郷に帰省したときの帰り、疲労のためと思われるが自動車事故を起こす。(症例は真面目な性格である故か自動車運転に於いて安全運転であり、毎日のように自動車の運転を行っていたが少なくとも10年間無事故無違反であった。)

 症例は強い全身倦怠感を克服するため、平成12年7月頃のある日、スーパーよりキノコの1種であるマイタケを買い、それを水炊きし食する。(その量は1パック130円を3パックで比較的大量であった。夜食は全てそれで賄われた。)そのマイタケのみの夜食を2晩続ける。1晩目は劇的に、2晩目もかなり身体が楽になる効果を症例は自覚した。しかし3回目以降は全身倦怠感の軽減の自覚は減少した。しかしマイタケを水炊きして食すると翌日の全身倦怠感が軽減するのを自覚する故に、夜食はマイタケのみの摂取をできる限り行ない続けた。しかし次第にマイタケを食しても翌日の全身倦怠感が軽減しなくなるのを自覚し始める。

 次にシイタケを食する。初日こそ比較的強い効果を覚えたがマイタケと同じように次第に効果は弱くなってゆく。次にシメジを食する。やはり初日はかなり強い効果を覚えたが次第に効果は弱くなってゆく。次にエノキダケを食する。エノキダケはマイタケとほぼ同じ程度の強い効力があることを知る。しかしエノキダケは簡単な調理法である水煮では美味でなく、一人暮らしである症例は水煮で美味であるマイタケを好んで食し、エノキダケはあまり食しないでいた。

 その後、この4種類のキノコ類を交互に食するなどを行い、症例は次のように結論した。

 マイタケ・エノキダケが最も効力が強く、次にシメジ、最も効果が弱かったのがシイタケであった。シメジの効力はマイタケ・エノキダケの80%ほど、シイタケの効力はマイタケの40%ほどと症例は定義した。また、マイタケが効力が強く美味である故にマイタケのみ連日食するより、マイタケ・エノキダケ・シメジ・他のキノコ類を交代させながら食する方法が効果が強い、ことも解った。(これは各々のキノコ類の免疫力を強くさせる多糖類と推測される物質が各々異なるためと推測される。)

 症例はSSRIおよびMAO 阻害剤であるmoclobemide を服薬することを中止する(平成12年10月)。またSSRI、SNRI(serotonine noradrenarin reuptake inhibitor)およびMAO 阻害剤を服薬するとキノコ類の摂取により寛快状態であった慢性疲労症候群が服薬直後に重篤化することも知る。

 また症例は運動の重要性も強調する。症例は慢性疲労症候群に罹患する以前、2年間同じコースを夜走っていた。それはほぼ40分のコースであり最も速いときには35分で走っていた。それが平成11年5月、慢性疲労症候群に罹患して以来、同じコースを最大限の力を発揮しても最短55分のタイムでしか走れないようになった。そして走った翌朝、起床するのが普段以上に非常に大変な労力を必要とすることを自覚していた。しかし症例は努力家であり週に2回ほど走った。

 現在ではこれらキノコ類を比較的大量に食し、菜食主義に徹し、肉類は決して食しないようにし、また運動もできる限り心掛けるようにすると、長年の社会恐怖(social phobia)が寛解する可能性も有り得ると症例は考えている。

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fluvoxamine;平成11年5月より服薬開始。平成11年6月中旬からは一日量300mgに増加する。平成11年11月、服薬中止。

仕事上の信じられないようなミスは平成11年5月より始まっている。

fluoxetine;�ス成11年9月より服薬開始。一日量は40mgで固定していた。 平成12年6月服薬中止。

sertraline;平成11年11月より服薬開始。一日量は100mgで固定していた。 平成12年6月服薬中止。

(これらSSRIは併用して服薬していたことが多かった。)

MAO 阻害剤であるmoclobemide ;平成12年6月よりSSRIを一気に中止し、その代用として服薬開始。その服薬量は比較的大量であった。慢性疲労は不変か、やや軽快を示す。

平成12年7月初旬よりキノコ類(特にマイタケ)の大量摂取開始。慢性疲労は急激に軽快を示す。

平成12年11月、軽度の抑鬱状態に有ることを自覚。

平成13年1月、自動車事故を起こす。

平成13年2月、再び自動車事故を起こす。

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【考察1】

 平成12年の2月から5月頃の間にマイコプラズマニューモニエ抗体価およびサイトメガロウイルス抗体価の陽転化が起こったことになる。これはこのとき症例の細胞性免疫能が低下していた故とも考えられる。しかし本患者が慢性疲労症候群に類似した症状を自覚し始めた時期は平成11年5月である。症例は平成12年の2月から5月頃の間に副腎皮質ステロイド薬の投与を受けてはいない(副腎皮質ステロイド薬の投与は症例が強い疲労感を自覚し初めて以来、症例自身頑なに拒否していた)。また感冒に罹患した記憶もない。(平成11年1月に症例は小学生時以来の激しいインフルエンザに罹患した。)しかし症例は平成12年2月から5月の間のある時期に細胞性免疫能が低下していたと考えるのが妥当と思われる(しかし2月・3月はウイルス感染の起こり易い時期ではある)。

 症例は平成11年9月から平成12年6月の間、fluoxetineとsertraline などSSRIの比較的大量の服薬を行っていた。

(症例には糖尿病は無い。HIV(-)。この細胞性免疫能の低下は『SSRIの比較的大量服薬を1年間近くに渡り続けたため』と推測するより、『インフルエンザなどウイルス感染を受けやすい時期にSSRIを比較的大量に服薬していたため』と推測する方が妥当と思われる。)

(また症例は平成12年6月よりMAO 阻害剤であるmoclobemide をインターネットにより購入し、その極量に近い服薬を fluoxetine などSSRIの代わりに開始した。----平成11年10月頃より、服薬するSSRIは fluvoxamine は中止し、fluoxetineとsertraline に変わっていた。)

 平成12年2月5日の採血に於いて銅 94 ug/dl (基準値;78~131)、フェリチン精密 44 ng/dl(基準値;24~286)。

平成11年7月7日の採血に於いて白血球 4,400/ml、neutrophile 40%、lymphocyte 52%。

 平成11年7月19日の採血に於いて白血球 3,600/ml、neutrophile 47%、lymphocyte 45%。

平成12年2月5日の採血に於いて白血球 4,900/ml、neutrophile 46%、lymphocyte 46%。

 平成12年4月1日の採血に於いて白血球 3,300/ml、neutrophile 38%、lymphocyte 56%。

 平成12年5月26日の採血に於いて白血球 7,100/ml、neutrophile 61%、lymphocyte 34%。

 平成12年7月7日の採血に於いて白血球 5,000/ml、neutrophile 42%、lymphocyte 49%。

 平成12年9月29日の採血に於いて白血球 4,000/ml、neutrophile、lymphocyte などは検査せず。

 平成12年10月18日の採血に於いて白血球 4,700/ml、neutrophile 47%、lymphocyte 43%。

 (全ての採血に於いて赤血球像の異常は認められない。)

 なお、同じ平成12年7月7日の採血に於いてβ-2 microglobline 1.5(基準値;1.0~1.9)、フェリチン精密 50 ng/ml (基準値;24~286)、マイコプラズマニューモニエ抗体価4以上�i基準値;4未満)、シアル酸 48 mg/dl (基準値;46~74)。

 平成12年10月18日の採血に於いて、コルチゾール 13.8(基準値;4.0~18.3)、そして今まで基準値より高い価(常に4以上)を示していたマイコプラズマ抗体価が4未満(基準値4未満)に変化していた。

 平成12年11月8日採血に於いてT・B細胞100分率に於けるT細胞100分率は 84%(基準値;66~89%), B細胞100分率は 8%(基準値;4~13%)。

【考察2】

 慢性疲労症候群に対する有効な治療法はキノコ類の大量摂取を代表とする新鮮な野菜類の大量摂取などを含める玄米自然食である。そして野菜類は水煮して食しないと効果はあまり望めない。これは水煮しない生の野菜は体を冷やす作用があるためと思われる。水煮することにより野菜も体を温める作用を持つように変わるためと思われる。1)~21)

 この地方の慢性疲労症候群は大基準は満たすが小基準はあまり満たさない。微熱、非浸出性喉頭炎、直径2cm以下の頚部あるいは腋下リンパ節触知あるいは圧痛、という3項目の身体所見は皆無といって良いほどであり、また小基準では(4)全身の筋力低下(瞬発力は多少衰えるのみであり、持久力は強く衰える)、(6)運動後1日以上続く疲労感、(9)神経精神症状である(c)健忘、(d)易刺激性、(f)思考力低下、(g)集中力低下、(h)抑鬱、以外診断基準を満たすものが存在しない故、他の地方における慢性疲労症候群とは異なるウイルスによるものと思われる。 

 この症例には微熱が存在しない。しかしこれは敢えて病名を付けるならば慢性疲労症候群となる。またこれは明らかに『うつ病、うつ状態』ではない。何かのウイルス感染と考えるより他はない。筆者は慢性疲労症候群とはウイルス感染と確信している。慢性疲労症候群が発症する契機となるのが『感冒』であることが非常に多いためである。また少なくともこの症例においては肉、卵類を摂取した翌日は非常に全身倦怠感が強く、肉、卵類を摂取することなく、キノコ類や新鮮な野菜類そして玄米を食した翌日は全身倦怠感は非常に軽い。肉・卵類の摂取によって免疫力の低下が起こりウイルスが活性化し、それ故に全身倦怠感が強くなるものと考えられる1)~21)。

 またそのウイルスが異なるとき、また異なる故に、発熱が有るものと無いものが存在するものと考えている。

 また恐慌性障害、うつ状態、分類不能の精神疾患のなかに慢性疲労症候群類似症としか名付けることの出来ない症例を幾例か経験してきた。それらは明らかにウイルス感染による身体の疲弊と考えられた。それらは精神疾患の中の一部に過ぎないのか、それとも一部ではなく多数あるいは大多数を占めるものなのか(分裂病の疲弊期とはこのことであるのか)。またそれならばそれらの精神疾患を寛解に導くためには『免疫力』を強化することと考えられる。

 またそれ故に筆者は精神疾患(精神分裂病も含む)の患者にはキノコ類および新鮮な野菜、そして玄米自然食を強く勧めている。また筆者は精神疾患の患者には極力、ノイロトロピン錠30)を処方している。しかしキノコ類および新鮮な野菜の水煮、そして玄米自然食1)~21)が精神疾患を寛解に導くことは考え難いらしく、この指導に従う患者は少ない。またノイロトロピン錠にも拒否反応を示す患者が多い。

 精神疾患は極めて難治とされているが、新しい画期的な薬剤の出現を待つことなく(新しい画期的な薬剤の出現は不可能とも思われる)、玄米自然食のみでは寛解困難であっても運動療法(激しいスポーツが最も効果があると考えられるが、20分ほどのジョギングや早歩き歩行でも効果は強いと考える)を加えることにより玄米自然食の効果が大幅に増強されると考える。

【最後に】

 この地方に於ける慢性疲労症候群に於いて微熱、非浸出性喉頭炎、頚部あるいは腋下リンパ節の触知あるいは圧痛、という身体所見上の基準は見られない。これは他の地方に於いて慢性疲労症候群を起こしているウイルスと異なるウイルスの感染に依る故と考えられる。 

 これらは同じ給水地域に集発しているとも充分考えられる。それ故のその地域特異性のある慢性疲労症候群なのかもしれない。

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      慢性疲労症候群・新しい診断基準(提案)

1)朝、起床時、中等度以上、起床し難い。

2)誘因と思われるもの(風邪、ステロイド服薬・注入、また特に免疫力を弱めることの予想される薬の服薬、SSRIの長期大量服薬など)が存在する。

3)易疲労感の出現。

4)体力が以前より中等度以上弱くなった。

5)他の疾患が除外される。

6)キノコ類(とくにマイタケ、エノキダケ)の大量摂取により体調が非常に良好となる。

7)新鮮な野菜類を水煮したものを摂取することにより体調が非常に好調となる。

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【文献】

1)甲田光雄;慢性疲労症候群克服への道;東方出版;p299, 1999

2)森下敬一;自然食健康法;潮文社;p398, 1980

3)森下敬一;ガンは恐くない;生命科学出版;p285, 1980

4)森下敬一;ガン『消去法』;自然の友社;p291, 1982

5)森下敬一;慢性病は食べ物で治る;経営実務出版;p281, 1983

6)森下敬一;自然医食による育児教室;ペガサス;p287, 1983

7)森下敬一;百歳突破の長寿食;潮文社;p323, 1983

8)森下敬一;ガン 治す食べ物/ならない食べ物;経営実務出版;p277, 1983

9)森下敬一;牛乳を飲むとガンになる!?;ペガサス;p244, 1984

10)森下敬一;薬効食;柏樹社;p231, 1986

11)森下敬一;浄血健康法;時事通信社;p265, 1988

12)森下敬一;クスリにかわる食べ物;ペガサス;p342, 1989

13)森下敬一;健康的にやせたい人が読む本;三笠書房;p254, 1990

14)森下敬一;クスリをいっさい使わないで病気を治す本(知的生き方文庫);三笠書房;p254, 1990

15)森下敬一;クスリを一切使わないでガンを防ぎ、治す本;三笠書房;p212, 1993

16)森下敬一;自然医食療法;文理書院;p323, 1994

17)森下敬一;消『癌』作戦;文理書院;p278, 1995

18)森下敬一;クスリをいっさい使わないで病気を治す森下健康法;三笠書房;p276, 1996

19)森下敬一;宝石の気能;美土里社;p287, 1997

20)森下敬一;浄血すればガンは治る!;白亜書房;p246, 1998

21)森下敬一;クスリをいっさい使わないで病気を治す本;三笠書房;p287, 1999

22)Richard T. Johnson; 植木幸明;訳、金沢光男;監訳;神経系のウイルス感染症;西村書店;p344, 1987

23)木谷照夫;欧米における現況とわが国の対応;モダンメディシン vol-12; pp18~21, 1991

24)橋本信也;慢性疲労症候群の臨床像;モダンメディシン vol-12; pp22~28, 1991

25)金山良男;慢性疲労症候群の免疫学的側面;モダンメディシン vol-12; pp29~32;

26)高田賢蔵、山本直樹、小柳義夫;慢性疲労症候群とウイルス感染;モダンメディシン vol-12; pp33~37, 1991

27)筒井末春;慢性疲労症候群の心身症的側面;モダンメディシン vol-12; pp38~40, 1991

28)中島照夫、工藤義雄、山下格、他;選択的セロトニン再取り込み阻害薬 fluvoxamine (SME3110)の強迫性障害に対する長期投与臨床試験;臨床医薬12巻4号;pp679~700, 1996

29)�寤莓柾t、長田洋文、村中一文、他;選択的セロトニン再取り込み阻害薬塩酸セルトラリンの恐慌性障害に対する臨床評価ーー前期第二相試験ーー;神経臨床薬理19巻;pp625~637, 1997

30)ノイロトロピン;日本臓器製薬社内資料;p324, 1990

31)武田弘志、辻稔、松宮輝彦;ストレス適応の形成機構----Glucocorticoids と脳内serotonin 神経機能的連関の役割;日本神経精神薬理学雑誌、第20巻3号;pp83~92, 2000

32)朝倉幹雄、長島秀明、藤井佐知子、他;慢性ストレスによる生体反応の変容;日本神経精神薬理学雑誌、第20巻3号;pp97~106, 2000

33)Yamashiki M, Nishimura A, Sakaguchi S, et al.: Effects of the Japanese herbal medicine "Sho-saiko-to" as a cytokine inducer. Environ Toxcol Pharmacol (Section of Eu

rop J Pharmacol), vol-2: pp301~306, 1996

 

*A case of chronic fatigue syndrome*

        (high dose of SSRI intake case)

** Japan**

 

http://homepage2.nifty.com/mmm23232/2975.html





 

                                  


(SSRIの長期大量服薬により発症したと推定され、キノコ類の大量摂取により寛解傾向にある1例)
【研究報告】

「パニック発作」に対する flunitrazepam 口腔咽頭内頓服服用の有用性

                              *


【抄録】
 flunitrazepam の口腔咽頭内溶解頓服服用が奏功する「パニック障害」を経験した。flunitrazepam は催眠鎮静剤に分類されているため、「パニック障害」に対する保健上の認可は得ていない。flunitrazepam は交感神経機能亢進状態を抑える非常に強い作用を持っている。それはベンゾジアゼピン系薬物中、最強と位置づけられる。パニック発作が出現し始めてそのパニック発作を口腔咽頭内溶解により鎮静させることのできる薬物は、ベンゾジアゼピン系薬物に慣れてゆくに従い、最終的には flunitrazepam に行き着く。
 flunitrazepam の効能に「パニック障害」を加えるべきであり、かつ今後、flunitrazepam を「パニック障害」に頻用するべきと考える。
 また、flunitrazepam の口腔咽頭内溶解は効果が早く現れるため flunitrazepam の過量服用を防ぐ効果も存在する。

【key words】panic attack、flunitrazepam、atrial tachycardia、benzodiazepine

【症例】
(症例1)41歳、男性。既婚。
(生育歴)特記すべきことなし。
(家族歴)少なくとも近親に精神的疾患を持つ者はいない。
(性格)真面目。努力家。明朗で友人も多い。
(診断名)中等症うつ病エピソード Moderate depressive episode F31.11(ICD-10)
パニック障害 Panic disorder F41.0 (ICD-10)
(既往歴)中学2年時、慢性副鼻腔炎の外科的手術を受ける。これ以外は、極めて健康で病気知らずであった。薬剤を服用したことは慢性副鼻腔炎の手術の時以外はないという。
(現病歴) 28歳時、一念発起してそれまでのサラリーマン生活から整体術師養成学校に1年余り通い、そののちある中国整体院で5年間修行を積み、妻の故郷である九州で開業する。
 開業して7年目の1月(平成17年1月)軽い抑鬱症状が出現。精神科医院に自ら通院し始める。症例は sulpiride 以外の抗うつ薬に極めて過敏に反応し、SSRIsや三環系四環系の抗うつ薬を服用すると数日間は床に伏し仕事を休むことを繰り返す。
 次q第に病態は重症化し自動車を運転中にパニック発作(心房頻拍)を起こすようになる。この時点で本院来院。sulpiride 50mg/日(朝)、alprazolam 2.4mg/日(朝昼夕・分3)、flunitrazepam 2mg/日(眠前)と処方されていた。筆者は flunitrazepam は眠前薬として用いるのではなく、 パニック発作(心房頻拍)が起こり掛けているときに口腔内で噛み砕き、口腔咽頭粘膜より吸収させるように服用するよう指導する。なお、症例には睡眠障害は存在しなかった。
 指導通りにパニック発作(心房頻拍)が起こり掛けているときに flunitrazepam を口腔内で噛み砕き口腔咽頭粘膜より吸収させるように服用すると起こり掛けていたパニック発作(心房頻拍)が収まることを知る。また、他のベンゾジアゼピン系薬物では口腔内で噛み砕き口腔咽頭粘膜より吸収させても起こり掛けているパニック発作(心房頻拍)を抑えることは難しいことも知る。
 現在(平成18年7月)、flunitrazepam 2mg/日、sulpiride 50mg/日、alprazolam 2
.4mg/日、bromazepam 15mg/日 処方している。alprazolam、 bromazepam はパニック発作(心房頻拍)を予防するため、flunitrazepam はパニック発作(心房頻拍)が起こり始めたとき服用するため、sulpiride は抗うつ薬として眠前3時間ほどに 50mg 服用している。
 症例はsulpiride を一日に100mg 以上服用すると疲労感に包まれる。また、sulpiride を服用中止後、3日以上経過すると“うつ状態”に陥りがちである。
  flunitrazepam はパニック発作(心房頻拍)が起こり始めたときに直ちに服用できるよう 2mg錠を数個、常にポケットの中に入れている。  
 

(症例2)31歳、男性。未婚。
(生育歴)特記すべきものなし。
(家族歴)母親が統合失調症にて入院歴在り。
(性格)真面目でも努力家でもない。極く普通の性格。明朗で友人も多い。
(診断名)パニック障害 Panic disorder F41.0 (ICD-10)
(既往歴)生来、健康で病気知らずであった。特記すべきものなし。
(現病歴)長崎から東京まで鮮魚を輸送する大型トラックの運転手である。しかし9ヶ月ほど前よりトラックの運転中、パニック発作(心房頻拍)を起こすようになる。ある日曜日、筆者当直中に来院。掛かり付けの精神科クリニックでの処方は alprazolam 3.2mg/日と paroxetine 40mg/日 の処方であった。alprazolam 3.2mg/日の処方であっても14日分のクスリを10日ほどで服用してしまっていた。 paroxetine は処方どおりに服用していた。
『今夜より東京までトラックを運転して行かねばならないが、alprazolam がないためトラックを運転中、パニック発作(心房頻拍)を起こすようで心配になり来院した。行きつけの医院から保健上、これ以上出せないと断られた。』
『今まで、alprazolam をトラックの運転中、頓服服用してきた。眠くなったときにはパーキングエリアに入って仮眠を取っていた。』と言う。 
  etizolam と bromazepam を処方する。症例は現在までalprazolam のみ処方されていた。 etizolam と bromazepam は症例には始めて服用するものであり、始めて服用するときは強く効くことを強調して処方した。
 3日後『東京までトラックで魚を運んで今帰ってきたところです』との電話あり。それ以来、alprazolam、etizolam、bromazepam、cloxazolam などをトラックを運転するときに頓服で予防的に服用するようになる。paroxetine 40mg/日 の処方も続ける。
 2ヶ月後、トラックの運転中にパニック発作(心房頻拍)が起こる。トラックを左路肩へ停め、ただちに教えられていたとおり flunitrazepam 2mg錠を1錠口腔咽頭内溶解し口腔咽頭粘膜より吸収させたところパニック発作(心房頻拍)は収まり、そのまま東京までトラックを運転して行くことができたと報告有り。今では左路肩へ停めず、そのまま運転を続けながらflunitrazepam を口腔内で噛み砕き口腔咽頭粘膜より吸収させて対処していると言う。flunitrazepam は直ちに服用できるよう2mg錠を2錠トラックのダッシュボードの上にお守りのように置いているという。 

【考察】
 flunitrazepam は強い催眠鎮静作用があるため不眠性障害に頻用されているベンゾジアゼピン系薬物である。アメリカでは flunitrazepam が性犯罪を主とした犯罪に用いられることが多いため、flunitrazepam に対し準麻薬的な強い規制が施行されており、医師の処方箋無しに flunitrazepam を所有していると逮捕・監禁される。
 flunitrazepam は少なくとも我が国では交感神経機能亢進状態を抑える効果が最も強いベンゾジアゼピン系薬物である。その強い作用により、ベンゾジアゼピン系薬物に慣れた症例に於いても、パニック発作が起こりかけたときに於ける頓服服用で充分な効果が得られる。他のベンゾジアゼピン系薬物では起こりかけたパニック発作を頓挫させることはベンゾジアゼピン系薬物に慣れているならば容易ではない。
 flunitrazepam は統合失調症の患者が昼間服用すると「抑えが効かなくなる」状態になることが多い。電話では饒舌・多弁となり長時間電話を切らない。よって統合失調症の患者に対しては眠前薬以外に用いることは避けるべきである。
「パニック障害」であっても flunitrazepam を習慣性に陥らないように注意しつつ、パニック発作が起こりかけたとき、頓服服用を行い続けると仕事や学業を続けることが可能である。
 flunitrazepam は口腔咽頭内に入れるだけで早く溶解するが、噛み砕くと更に早く口腔咽頭内で溶解するため、噛み砕くべきと考える。そして口腔咽頭粘膜より吸収させるべきである。胃に落とす(呑み込む)と効果の発現が遅くなる。
 起こりかけたパニック発作を頓挫させることが可能なものは flunitrazepam の口腔咽頭内溶解以外には etizolam 3mgの顆粒方剤などがある。etizolam 3mg顆粒方剤をパニック発作が起こりかけた直ぐに口腔咽頭内に投与して口腔咽頭粘膜より吸収させるとflunitrazepam 2mg錠の口腔咽頭内溶解と同じほど迅速で強い効果が有る。
 症例1はパニック発作が起こり掛けたとき、一度に大量の bromazepam を口腔内で噛み砕き口腔咽頭粘膜より吸収するように服用したことがある。それはbromazepam 5mg錠6個であった。このときパニック発作は際どいながらも頓挫した。しかし、flunitrazepam のような劇的で即効的なパニック発作の頓挫ではなかったと言う。
 ベンゾジアゼピン系薬物を服用続けるとベンゾジアゼピン系薬物に耐性が付いてしまうため、休日で外出することのない日および仕事が休みでパニック発作が起こる可能性が低いときにはベンゾジアゼピン系薬物はでき得る限り服用せず休薬日にすることを説明している。


【文献】
1) Alcaras NM, Roper JM.:Chest pain among combat veterans: a conceptual framework.
Mil Med. ;171(6):478-483. 2006
2) Eser D, Schule C, Baghai TC, et al:Neuroactive steroids and affective disorders. Pharmacol Biochem Behav. 8; 2006
3) Kim W, Choi YH, Yoon KS, et al:Tryptophan hydroxylase and serotonin transporter gene polymorphism does not affect the diagnosis, clinical features and treatment outcome of panic disorder in the Korean population. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 3, 2006
4) Pinto A, Mancebo MC, Eisen JL, et al:The Brown Longitudinal Obsessive Compulsive Study: clinical features and symptoms of the sample at intake. J Clin Psychiatry. ;67(5):703-11. 2006
5) Santos JM, Martinez RC, Brandao ML:Effects of acute and subchronic treatments with fluoxetine and desipramine on the memory of fear in moderate and high-intensity contextual conditioning. Eur J Pharmacol. 15; 2006

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Toshiro Mifune:The Effectiveness of Take a Dose of Flunitrazepam for Panic-Attack from Mucous Membrane in Oral and Pharyngeal Cavity.

http://homepage2.nifty.com/mmm23232/2975.html


整体
                               

【key words】meridian, shiatsu, mild depressive episode, dissociative disorder

【始めに】
『身体が緩めば心も緩む』との考えのもと、不安障害などの治療に整体術を用いた。これは運動療法に適応しなかった、または同意しなかった患者、また運動療法で症状が快方に向かわない患者を対象に行った。
 整体は指圧・手掌圧・肘圧を用いて行った。カイロプラクテック的な方法は採らなかった。
 不安障害などの患者の背中には必ず脊椎起立筋の何処かに硬結がある。そこを揉みほぐす。しかしそれを揉みほぐすことは至難の業であるが、患部でなく、足・股関節・肩関節を強く揉みほぐしていくうちにその硬結が消失してゆくことがある。(それと同時に不安障害も寛解する。)
 この全身を揉みほぐすうちに脊柱起立筋の硬結も消失してゆくメカニズムは東洋医学の経絡の概念で説明可能かもしれない。

【症例】
(症例1)
 年齢40歳。28歳時、一念発起してそれまでのサラリーマン生活から整体術師養成学校に1年余り通い、そののちある中国整体院で5年間修行を積み、妻の故郷である九州で開業する。
 中国整体術は術者の肉体的負担が大きい。頑健な男性の中国整体術師も一日6人の治療が限界であるという。中国では堆拿(ついな)と呼ばれている。カイロプラクテックと異なり全て指圧・手掌圧・肘圧による。そして患者の体全体から揉みほぐしてゆく。外傷性頚部症候群に対しても足から揉みほぐしてゆく。肩痛に対しても同じである。体全体から揉みほぐさないことには効果は一時的であるという考えに基づいている。右利きの中国整体術師は右手を多く使用し、肉体に掛かる力学的左右差は大きい。それにより中国整体術師は頻繁に肉体的不調が生じる。
 開業して6年目の3月、腰を痛める。両側外側大腿皮神経が圧迫されている症状が出現。同時に抑鬱症状も出現。精神科医院に通院し始める。投薬内容は trazodone hydrochloride 25mg/day, sulpiride 50mg/day, alprazolam 1.2mg/day であり、この投薬内容がそのまま4カ月続けられた。しかし症状は改善傾向を見せず、ペインクリニックを受診。ここで腰痛部位へのトリガーポイント注射、大腿外側皮神経ブロック、星状神経節ブロックなどを受ける。また imipramine hydrochloride, alprazolam の投薬も受ける。しかし腰痛および抑鬱状態、および自動車を運転中に起こるパニック発作の改善傾向を認めず。また処方された imipramine hydrochloride に因ると思われる頻尿などの副作用のため imipramine hydrochloride の服薬を自ら中止する。
 著者を受診。遠方からの来院のため1カ月で服薬するようにとsulpilide 100mg/day, alprazolam 2.4mg/day, etizolam 3mg/day, flunitrazepam 4mg/day, trazodone hydrochloride 100mg/day, mianserin hydrochloride 60mg/day を2週間分処方。しかし sulpiride は一回服薬するのみで中止する(服薬すると体が疲労感で一杯になるということであった)。また mianserin hydrochloride は激しい眠気などのため1回服薬するのみで中止する。 trazodone hydrochloride も服薬しようとしない。頑健な体をしているが急激に衰弱傾向を示し、このように薬剤に対し敏感になったものと思われる。鍼治療に1ヶ月前に掛かったときの鍼の跡が今でも赤く腫れ上がっていた。
 現在、alprazolam 1.2mg/day, flunitrazepam 1mg/day(眠前)のみ服薬している。 sulpiride, trazodone hydrochloride, mianserin hydrochloride などに過敏に反応するため、それらを服薬しようとしない傾向は変わらない。
 現在でもまだ軽症うつ病エピソードのまま自宅療養中である。運動を行おうにも腰痛のため運動ができない。散歩程度しかできない。
 中国整体術師であるT氏は主張する。
『整体をしていると腰が悪いので腰を庇うため自然と胸部交感神経節を圧迫してしまう体勢になる。以前、腰が悪くなかった頃はそういうことはなかった。それが現在の私の身体・精神というか、その不調のもっとも大きな理由のような気がする。』

(症例2)
 左半身麻痺にて救急車で来院。年齢50歳。繁華街のスナックで働いている。仕事は夕方から夜遅くまでであり、衣装も派手なものを着用している。吐気有り。しかし嘔吐は無し。神経学上、左半身麻痺有り。現在の日付が解らないなど見当識障害有り。頭部CT上、特記すべき所見なし。しかし脳梗塞は発症直後は頭部CTに映らないためそのまま脳梗塞疑いとして入院となる。右脳梗塞が疑われたが、衣装や仕事、年齢などからヒステリーの可能性が高いと思われた。
 脳梗塞の治療を開始。入院3日目、再び頭部CT施行するも、特記すべき所見なし。血液検査上も脳梗塞は否定的。脳波上、特記すべき所見なし。しかし依然として左半身麻痺軽減せず。また現在の日付が解らないなど見当識障害も改善傾向無し。この見当識障害は、昨日行ったことを取り違える、1時間ほど前に食べた食事の内容を記憶していない、入院して何日が経過かしたかの問い(正解は7日)に『3カ月前?』と言う、現在の日付が解らないなど、強い記銘力障害によって起こっていた。
 入院8日目、キセノンCT施行。右脳灰白質に低環流域有り(写真1)。これが唯一の異常所見であった。入院9日目よりヒステリー疑いとして ethyl loflazepate 1mg 夕食後投与開始。入院13日目より alprazolam 1.2mg 分3追加投与開始。しかし改善傾向は僅かに認めたのみであった。入院17日目より alprazolam 2.4mg 分3に増量。これでも改善傾向ほとんど存在せず。よって入院21日目よりethyl loflazepate 2mg/day 夕食後投与に増量。しかしこれでも左半身麻痺および見当識障害は改善傾向をほとんど示さず。入院28日後、左半身麻痺および見当識障害は軽度軽快のみで退院となる。
 退院後、中国整体術師(T氏)に治療を受け、治療3回目にて左半身麻痺も見当識障害も劇的に全快。T氏によると“寝違い”に間違いないと思われる胸椎第2を中心とした脊椎骨の変位があったという。その変位を矯正するため全身を指圧し治療したが筋肉の硬直は強く、治療3回目にて脊椎骨の変位は元に戻ったという。

(症例3)
 18年来の対人恐怖症。男性。36歳。人格的な崩壊は無い。14年間、 minor tranquilizer を比較的多量に服薬してきた。 minor tranquilizer の比較的多量服薬により、なんとか社会生活を営んできたと思う、と言う。また不眠症も併発している。
 脊椎の左側に脊椎起立筋によるものと思われる“一本棒”が存在する。第2胸椎から第6胸椎に掛けて左側背部に筋肉の攣縮・硬縮が存在する。これは特に第2胸椎に強い。また、これは少なくとも12年前から存在している。12年前に鍼灸院でそのことを指摘されたという。背部の凝り強く、現在まで様々な整骨院・鍼灸院などで治療してきた。しかし全て一時的な効果に終わった。ヨガや気功法も行ってきたが、対人恐怖症などは一向に軽快する傾向が見られなかったという。この10年ほどは様々な整骨院・鍼灸院に通っていた。そして一時的な軽快が得られていたが、一時的(長くても半日ほど)でしかなかった。
 彼は4カ月前、ある中国整体術師(T氏)に施術してもらったところその対人恐怖症が一気に軽快した。しかし50%軽快したのみで未だ50%残っているという。一気に軽快したのはそれまでX線写真には写り難い亜脱臼を起こしていた第2胸椎と推定される脊椎骨が整復されたためではないか、とT氏も彼も考えている。
 
【考察1】
『体と心は一つである、体が柔らかくなれば心も柔らかくなる。』11)
『神経症・統合失調症が発症して間もないものは整体で治すことができる。しかし慢性化し固くなったものを揉み解すのは非常に難しい。』11)
『根が浅いものは1回の施行で寛解させることが出来る。しかし根が深いものは何回やっても駄目なことが多い。』11)
『神経症・統合失調症の人は背中に一本棒のように固くなったものがある。それは脊柱起立筋であったり首の奥の方の筋肉であったりする。それは固く、揉み解すのは至難を極める。しかし全身から丹念に揉み解してゆくと何回目かの治療で柔らかくなることが良くある。これは固くなっている局所だけを指圧などしてもまず不可能だ。全身から揉み解してゆかなければならない。そして土台である足が大切だ。股関節と下腿を良く揉み解さなければすぐに元に戻ってしまう。』11)
『たしかに局所だけを治療してもそのとき一時的にせよ非常に効く。しかし数時間で元に戻る。全身から治療しないと数年も数十年も形成されているアンバランスはすぐに元に戻る。』11)
『肉体の左右不均衡が自律神経のバランスを崩すこと、交感神経過緊張が肉体の左右不均衡によって起こることを世間の人はもっと知らなければならない。』11) 
『全身を揉み解すのには2時間懸かる。固くなっているところだけを揉み解しても、すぐに元に戻ってしまう。だから最低1時間は掛けないと治療にならない。』11)
『身体が曲がれば心も曲がる。心を真っ直ぐにしようと思えば身体を真っ直ぐにしなければならない。身体が真っ直ぐになれば自然と心も真っ直ぐになる。』11)
『一つ一つの骨が(下腿や上肢など)その人の身体全体を表しているという考えがある。一つの骨を緩めてゆけば身体全体が緩むという考えになる。骨が緩めば身体も緩み心も緩むということになる。』11)

 不安障害の患者には第2胸椎から第6胸椎に掛けて変位とその側方の筋肉の攣縮・硬直が見られる。そして筋肉の攣縮・硬縮の見られる側に“一本棒”と呼んでいる脊柱起立筋によるものと思われる筋肉の攣縮・硬縮が見られる。
 モアレ写真というものにより筋肉の攣縮・硬縮および椎骨の変位は比較的明瞭に観察できる。X線写真ではむち打ち損傷と同じように椎骨の変位はほとんど表示されない。モアレ写真を所有していれば上記の症例は良く説明できたと思われる2)。
 その“一本棒”は歯の噛み合わせと密接に関連している10)。しかし歯の噛み合わせから矯正することはほとんどの場合、反作用が強く、寛解まで至らせることは困難である。(しかし、確かにその治療は根本的な治療である。)
 症例2ではキセノンCTに示されるように左脳領域に比べ右脳領域が環流量が少なくなっている。これはT氏の指摘のように胸椎第2の変位によるものとも思われる。

 肉体の左右不均衡は椎骨の歪みを生み、様々な病気を起こす。とくに椎骨に付着する交感神経節を刺激し交感神経過緊張症を引き起こす。頭部CTで明らかなほどの頭蓋骨の不均衡があればその人はもし現在健康体であっても将来交感神経過緊張症による病態を起こす可能性は非常に高い。頭部CTで明らかなほどの頭蓋骨の不均衡(それは鼻中隔の歪み、後頭骨の歪みなどとして頭部CTに写ってくる。)があればその人はすでに何らかの自律神経に由来する不調を持っていると考えて良い。 

【考察2】
 人間の身体は大なり小なり歪んでいる。その歪みの強さが弱い人は一般に健康体である。しかし歪みの大きい人は様々な疾患(特に自律神経を媒体とした)に襲われてしまう。この歪みは2歳までに形成されるのがほとんどと思われる。それ以降に形成されるのは大きな交通事故などによるものしか存在しないようである。その歪みは歯の噛み合わせに由来するという理論があり10)、著者の長年の研究の結果、頭蓋骨が大きく変形している人はたしかに歯の噛み合わせが大きく変形している。そしてその変形は頚椎そして腰椎に及んでいる。しかしこの歪みを成人になってから歯の噛み合わせを人工的に操作することにより矯正することは至難を極める。歪みの軽度に人は確かにこの咬合療法で寛解していっている。しかし歪みの大きい人は咬合療法でも寛解させることは至難を極める。
“気の滞まり”が歯の噛み合わせの悪さに由来する脊椎骨の歪みによって起こる。この噛み合わせの矯正はテンプレートという患者自身で脱着可能なもので行われこのテンプレートを装着して運動を行うことによりこのテンプレートを装着したときの噛み合わせに対応した脊椎など骨格の矯正が行われる。しかしこれは30歳以下には用いることが比較的容易であるが、30歳以上には軽度の歪みしか存在しない人にしか用いることは非常に困難である。
“気の滞まり”は自律神経のアンバランスを招き、不安障害などを引き起こす。“気の滞まり”が身体全体の硬直化を招く。未だデータ上、確かめられたことではない。しかし、これは“気の滞まり”による説明なしには不可能と思われる。 
 たしかに長年の不安障害などはその硬結を揉みほぐし消失させることは困難を究める。しかし、患部でなく、下腿、肩関節、股関節などを丹念に揉みほぐすことにより消失してゆくことが多い。

【最後に】
『歪んだ体は歪んだままで一つの恒常性を保っている。それを無理矢理に矯正しようとするのは邪道だ。』との鍼灸師からの反論12)がある。たしかにアメリカ的カイロプラクテックは体の固い東洋人には向いていない。とくに日本人は東洋人の中でも特に体が固い民族の一つと言われている10)。アメリカ的カイロプラクテックはアメリカなど西洋の体の柔らかい民族に於いてのみ成り立つ治療法と考える。
 また中国人には中国人に、日本人には日本人に向いた治療法がある。中国においては民族ごとに少しづつ治療法が異なっているが民族ごとに体質が異なるならばそれが本当の姿と思う。日本人には日本人特有の治療法があって当然であるし、それでなければいけないと思われる。
 整体療法は不安障害には劇的に効果がある。しかし気分障害や統合失調症にも効果があるか、未だ試みられていないようであり、不明である。整体療法は全身“気の流れ”の円滑化に帰結する。

【参考文献】
1)本間祥白;  難経の研究; p675, 1983, 医道の日本社
2)李 丁;   針灸経穴辞典; p514, 1986, 東洋学術出版社
3)郭 金凱;  鍼灸奇穴辞典; p432, 1987, 風林書房
5)小高修司; 中国医学の秘密;    p209, 1991, 講談社 
6)神川喜代男;  鍼とツボの科学; p192, 1993, 講談社
7)首藤傳明;   経絡治療のすすめ;   p259, 1983, 医道の日本社
8)入江正;    経別・経筋・奇経療法;  p273, 1988, 医道の日本社
9)井本邦昭; 整体法;   p202, 1998, 三樹書房
10)前原潔; テンプレート療法 p257, 1996, 三樹書房
11)近田耕治氏の手紙
12)近藤文雄氏の手紙

*The therapy of seitai for mental disorders.

http://homepage2.nifty.com/mmm23232/2975.html