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キノコ類大量摂取およびアシクロビル服用が奏功した「うつ病性障害」の1例
 
【抄録】
 アシクロビル服用およびキノコ類大量摂取がうつ病性障害に奏功していた症例を経験した。アシクロビルはヘルペス属ウイルスの単純ヘルペス1型および2型・帯状ヘルペスに特異的に効果を示すものとされている。同じヘルペス属ウイルスのヒトヘルペス6型・Epstein-Barr・サイトメガロに対する効果は弱いとされている。ヘルペスウイルスは神経組織に潜在し,アシクロビルはヘルペスウイルスの増殖を阻止するのみの効力しか持たない21)。服薬時の一時的寛解のみで再発したことは,この症例のうつ病性障害はヘルペス属ウイルス感染症であったことを支持�キるものである。
 また、キノコ類は免疫能を上昇させ悪性腫瘍などに効果が有ると基礎医学的に証明され9~12)臨床医学的にも応用され始めている。症例は自身の病気を慢性疲労症候群の一亜型と自己診断し,ウイルス全身感染治癒のためにはキノコ類大量摂取が最も有効と考え,それを自ら行い,それが奏功していた。 
『精神疾患はある種の神経親和性ウイルスの感染を基盤とする。それはそのウイルスの神経感染による神経過敏性(神経興奮)に寄る。その器質的脆弱性の元に精神疾患が起こる。』との仮説が成り立つことを示唆する貴重な症例と考え,ここに呈示する。
   
【key words】アシクロビル(acyclovir)、キノコ(mushroom)うつ病性障害(depressive disorders)、ヘルペス属ウイルス(herpes virus group)

【はじめに】
 ヘルペス属ウイルスは神経親和性ウイルスとして有名である。ヘルペス属ウイルスは神経細胞内に潜伏感染し,ストレスなどにより個体の免疫能が低下したときに増殖し,疾病を起こす15)。
 この症例では,ウイルス感染による身体疲弊が引き金となりうつ病性障害発症へと導かれたと考えることもできる。

【症例】32歳,男性。未婚。
頭部CT:特記すべき所見なし。
神経学的:特記すべき所見なし。
脳波:特記すべき所見なし。
免疫学的所見:
 単純ヘルペス1型抗体陽性、単純ヘルペス2型抗体陰性、帯状ヘルペス抗体陰性(2000年1月6日採血)。
 サイトメガロウイルス抗体価は2000年2月5日採血では4未満(基準値:4未満)であったが2000年5月26日採血では4以上に変化していた。また2000年9月29日採血では8以上に変化していた。
 ヒトヘルペス6型・Epstein-barr ウイルスの抗体価は未計測。
 HTLV-1および HIV-1,2 抗体価は基準値以下(2000年1月6日採血)
 アデノウイルス抗体価:基準値以下(2000年2月16日採血)
 オーム病クラミジア抗体価:基準値以下(2000年2月16日採血)
 RSV抗体価:基準値以下(2000年3月15日採血)
 マイコプラズマニューモニエ抗体価は2000年2月5日採血では4未満(基準値;4未満)であったが同年5月26日採血では4以上に変化していた。
 T・B細胞100分率:T細胞84%(基準値;66~89%)
  B細胞 8%(基準値; 4~13%)(2000年4月1日採血)
生化学的所見:フェリチン精密 44 ng/dl(基準値;24~286)(2000年1月6日採血)
       β-2 microglobline 1.5 ng/dl(基準値;1.0~1.9)(2000年1月6日採血)
       
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白血球 4,400/ml、neutrophile 40%、lymphocyte 52%。(1999年5月7日採血)
白血球 3,600/ml、neutrophile 47%、lymphocyte 45%。(1999年7月19日採血)
白血球 4,900/ml、neutrophile 46%、lymphocyte 46%。(2000年2月5日採血)
白血球 3,300/ml、neutrophile 38%、lymphocyte 56%。(2000年4月1日採血)
白血球 7,100/ml、neutrophile 61%、lymphocyte 34%。(2000年5月26日採血)
白血球 5,000/ml、neutrophile 42%、lymphocyte 49%。(2000年7月7日採血)
白血球 4,700/ml、neutrophile 47%、lymphocyte 43%。(2000年10月18日採血)
 (全ての採血に於いて赤血球像の異常は認められない。)
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(生育歴)正常分娩にて出生。幼少時より内向的傾向有るも,小学生時代より,成績優秀、性格穏和であり,人気者であった。現役時(18歳時),大学受験に失敗。一浪後,現役時に容易に入れた大学に不本意ながら入学。それ故もあり,大学の授業へあまり出席せず。4年間で卒業できるところを8年懸かって卒業する。
(家族歴)特記すべきことなし。
(性格)真面目。努力家。勤勉。凝り性。素直。物事を非常に真っ直ぐに考える傾向がある。真面目さ・優しさ・素直さが目立ち,性格の障害はほとんど感じられない。
(既往歴)高校3年時の大学入試2次試験直前,社会不安障害を発症。22歳時,精神科受診。それよりbromazepam を主とした抗不安薬を継続服用。
(現病歴)1999年5月18日本院初診。22歳時より社会不安障害に対し抗不安薬を投与されてきたこと,今まで幾つかの精神科の病院や医院を受診してきたこと,様々な抗不安薬,抗うつ薬,抗精神病薬を試験的に服用してきたことを述べる。bromazepam 20mg/日の投与にて治療開始。症例はインターネットより日本で使用開始になる fluvoxamine が社会不安障害に効果があることを知る。5月30日来院時,実際は抑うつ気分は無いが,筆者に抑うつ気分を訴え fluvoxamine の投与を希望する。
 1999年5月30日よりfluvoxamine の追加投与を開始。その頃より強い倦怠感を自覚し始める。fluvoxamine の服用量を減量した翌日は倦怠感が多少軽い故に fluvoxamine の副作用が考えられた。しかし,職場の人間関係に悩み抜いていたこと,fluvoxamine の服用量を減量し�トも倦怠感の軽減は僅かであること,肝機能障害は僅かしか存在しないこと,それらよりうつ病性障害発症による倦怠感も考えられた。倦怠感の出現とともに口唇ヘルペスも出現する。acyclovir 軟膏塗布を開始する。
 症例は fluvoxamine の副作用の可能性を考えながらも社会不安障害で非常に悩み苦しんでいた故,筆者にその強い倦怠感を隠し続け,社会不安障害を治したい一心で fluvoxamine 150mg/日 の服用を続ける。症例は肝機能障害には動物性蛋白が必要と考え,毎晩ステーキを大量に食�キるなどにより,2ヶ月間ほどで体重が65kgから86kgにまで増加した。
  fluvoxamine の服用を3ヶ月間続ける。倦怠感は不変。また社会不安障害に対する効果も判然とせず。fluvoxamine 中止後,trazodone の投与を開始。しかし,trazodone は最初の数日間服用したのみで,その後は処方されるも服用せず。 1999年8月より筆者には内緒にインターネットより fluoxetine を個人輸入し,その服用を開始していた。しかしこれにても症例の社会不安障害は軽症化の傾向を見せず。倦怠感もほぼ不変。更に本院よりsetiptiline maleate,milnacipran などを処方するも,それらはあまり服用せず。社会不安障害に効果が有るという�Cンターネットよりの情報を頼りにsertraline およびparoxetine をインターネットを介し個人輸入し,その服用を行う。しかし,これにても社会不安障害は軽症化の傾向を見せず。また倦怠感も不変。
 社長は症例に対し特別扱い状態であり,症例は出社すると自室のベットにて臥床するという毎日を繰り返していた。外国人客の来たときのみベットより起き出しネクタイを締め,その外国人客の応対をするという毎日を行っていた。他の部署に症例が顔を出すと厄介者扱いされる状態であった。外国人客が来たときに応対をするのみで充分という社長の方針のため会社を休むことを社長は許さなかったが,そのように仕事は非常に楽であった。
 また,強い倦怠感のため,通訳の仕事に於いて,および書類作成に於いて,ミスが重なる。
 抑うつ気分,希死念慮,罪業観念,物事への興味の減弱など,うつ病性障害に相当するものは存在せず,強い倦怠感が存在しているのみであった。微熱は存在せず,慢性疲労症候群の診断基準は満たさないことを症例自身も理解していた。しかし症例は慢性疲労症候群の一亜型と考え,盛んにインターネットより慢性疲労症候群およびそれに類する文献を多量に読破し,慢性疲労症候群およびそれに関連するものの知識は豊富であった。
 1999年10月,症例は社会不安障害を癒したいためにインターネットを利用してsertraline,paroxetine など社会不安障害に強い効能が有るとされる抗うつ薬を個人輸入して服用していることを筆者に告白。以後,本院からは抗不安薬のみ処方することとなる。
 強い倦怠感のため,休日はほとんど臥床状態であった。
 2000年7月,症例はウイルス感染にはキノコ類大量摂取が有効と考え,強い倦怠感を克服するため,スーパーよりキノコの1種であるマイタケを買い,それを水炊きし食する。(その量は1パック130円を3パックで比較的大量であった。夜食の半分以上はそれで賄われた)そのマイタケの大量摂取を2晩続ける。1晩目は劇的に,2晩目も強く倦怠感が軽減する効果を症例は自覚した。しかし3回目以降は倦怠感軽減の自覚は減少した。しかしマイタケを水煮して食すると翌日の倦怠感が軽減するのを自覚する故に,夜食はマイタケの大量摂取をできる限り行ない続けた。しかし次第にマイタケを食しても翌日の倦怠感が軽減しなくなるのを自覚し始める。
 次にシイタケを食する。初日こそ比較的強い効果を覚えたがマイタケと同じように次第に効果は弱くなってゆく。次にシメジを食する。初日はかなり強い効果を覚えたが次第に効果は弱くなってゆく。次にエノキダケを食する。エノキダケはマイタケとほぼ同じ程度の強い効力があることを知る。しかしエノキダケは簡単な調理法である水煮では美味でなく,一人暮らしである症例は水煮で美味であるマイタケを好んで食し,エノキダケはあまり食しなかった。
 その後,この4種類のキノコ類を交互に食することを行い,症例は次のように結論した。
「マイタケ・エノキダケが最も効力が強く,次にシメジ,最も効果が弱いのがシイタケである。マイタケ・エノキダケに比べてシメジの効力は80%ほど,シイタケの効力は40%ほどである。また,一種類のキノコ類のみ連日食するより,他のキノコ類と交代させながら食する方が効果が強い。そしてこれは各々のキノコ類の有効成分とされる多糖類が各々微妙に異なるためと推測される。」
 症例は社会不安障害の治癒を願いSSRIに代わり2000年6月より服用していたmoclobemide を自身の社会不安障害に無効と判断し,2000年10月,服用中止する。同時にキノコ類大量摂取も,社会不安障害に無効であること,水煮を行うことの億劫さ,主にその2つの理由で中止する。
 2000年12月中旬,希死念慮,悲哀感を自覚。うつ状態に有ることを認める。moclobemideの服用を再開する。しかし,キノコ類大量摂取は,社会不安障害に効果がないこと,水煮を行うことが億劫であること,数回実施して以前経験した強い効果が感じられなかったこと,それ�轤フ理由で数回実施するのみで中止する。
 2001年1月,正月休暇で故郷に帰省した帰り,自動車事故を起こす。症例は真面目な性格である故,自動車運転に於いて安全運転であり,毎日のように自動車の運転を行っていたが少なくとも過去10年間無事故であった。
 2001年2月,再び自動車事故を起こす。
 この頃より朝の起床困難は更に強くなる。ほぼ毎日の遅刻は30分程度であったのが1時間程度と強くなる。
 trazodone を眠前に服用した翌朝は起床が比較的困難でなく,trazodone を服用しない翌朝は起床が極めて困難であることを繰り返し経験している。
 しかし症例はSSRIを代表とする抗うつ薬を服用すると性機能障害,倦怠感が惹起されるため,その服用を好まない。
 また,三環形抗うつ薬のamoxapine に朝の起床困難だけでなく倦怠感に対する効果も弱いながら存在することを自覚するが,症例は抗コリン作用に敏感であり,当院来院前,社会不安障害に対し imipramine の投与を比較的長期間受け、前立腺肥大を起こし,前立腺肥大による排尿障害が重篤化するということで服用を好まない。 
 症例は現在もmoclobemide が自身に最も合うとしてmoclobemide の服用を続けている。

【アシクロビル服薬】
 1999年5月,うつ病性障害発症と時を同じくして口唇ヘルペス発症。vidarabine の軟膏およびacyclovir の軟膏を塗布することにて対処する。しかし口唇ヘルペスはvidarabine の軟膏塗布にて極く軽度軽症化するのみであり、acyclovir の軟膏を塗布にて軽度軽症化していた。
 1999年7月より単純ヘルペス感染症として月5日間のみacyclovir 錠(200mg) 一日5錠処方を開始。acyclovir の軟膏塗布と併用するが口唇ヘルペスは軽度軽症化するのみに留まる。また、強い倦怠感はacyclovir 服用にても不変。
 2001年3月、帯状疱疹の保健病名の下、acyclovir (200mg) 一日20錠を7日分処方。症例はこの一日20錠服用を7日間続ける。服用2日目より強い倦怠感の劇的な軽症化が起こる。服用6日目に口唇ヘルペスの消失が起こる。そしてこの強い倦怠感の劇的な軽症化および口唇ヘルペスの消失は服用終了後、7日間ほど持続する。しかし服用終了後8日目ほどより強い倦怠感および口唇ヘルペスは再燃する。
 症例はacyclovir 錠(200mg) 一日20錠服用している7日間,“朝悪く夜良い”という日内変動が消失し“一日中普通”という状態になる。それまで有った“夜間の絶好調”が無くなり,夜,早めに就寝する。これは出勤中の半分以上は,いつも会社の自室のベットで横になっていたが,アシクロビルを服薬中は,それを行わなかったためであるのではないか,と言う。
 それまでどんなに早く就寝しても早朝は心も体も非常に重く,たとえトイレへ起きても再び床に着くということを繰り返していた。ところがこの7日間は午前6時に起床する。
 2001年6月、アシクロビルのインターネットよりの個人輸入(400 mg錠・100 錠)を行う。うつ病性障害は一日4000mg ほどの服薬にて翌日より再び寛快状態となる。社会不安障害の寛解を願い、一日6000mg ほどの服薬をも行う。しかしこれにても社会不安障害は不変に留まる。
 個人輸入したアシクロビルが無くなり,アシクロビル服薬中止後,10日ほどして再び『朝の起床困難を主としたうつ病性障害』再燃。
 2001年10月、症例はアシクロビルのプロドラッグであり一日3回の服薬で充分という新しく開発されたvalacyclovir 500mg錠・42錠をインターネットより個人輸入する。アシクロビルよりもvalacyclovir が僅かであるが安価であること,およびvalacyclovir の方が効果が高�「のではないか,という考えからであった。症例はvalacyclovir が到着すると3000mg/日 で充分とされているところを4000mg/日 のペースで服薬。服用2日目より全身倦怠感の劇的な軽症化および口唇ヘルペスの消失が起こる。そしてこの全身倦怠感の劇的な軽症化および口唇ヘルペスの消失は服用終了後、8日間ほど持続する。しかし服用終了後9日目より全身倦怠感および口唇ヘルペスは再燃する。また、これにても社会不安障害は不変に留まる。

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 fluvoxamine;1999年5月30日より服用開始。同年8月,服用中止。

 仕事上の信じられないようなミスは1999年5月下旬頃より始まっている。

 fluoxetine;1999年8月より服用開始。 2000年6月服用中止。

 sertraline;1999年11月より服用開始。 2000年6月服用中止。

 paroxetine;2000年3月より服用開始。 同年6月服用中止。

(これらSSRIは併用して服用していたことが多かった。その量は比較的大量であった。)

 RIMA(Reversible Inhibitors of Monoamine oxitase type A)であるmoclobemide ;2000年6月よりSSRIを一気に中止し,服用開始。その服用量は比較的大量であった。倦怠感は不変か,やや軽快を示す。同年10月,社会不安障害に効果がないと服用中止。しかし同�N12月中旬,服用再開。

 2000年7月初旬よりキノコ類(特にマイタケ)の大量摂取開始。倦怠感は急激に軽快を示す。しかし軽快のみであり,朝の起床困難は続く。

 2000年12月中旬,希死念慮,悲哀感を自覚し,うつ状態であることを認める。朝の起床困難は更に強くなる。

 2001年1月,自動車事故を起こす。

 2001年2月,再び自動車事故を起こす。
                 
 2001年3月、acyclovir (200mg) 一日20錠服用を7日間続ける。服用2日目より全身倦怠感の劇的な軽症化および口唇ヘルペスの消失が起こる。しかし服用中止後、8日目ほどに強い倦怠感と口唇ヘルペスの再燃が起こる。

 2001年6月、アシクロビルのインターネットよりの個人輸入(400 mg錠・100 錠)を行う。うつ病性障害は一日4000mg ほどの服薬にて翌日より再び寛快状態となる。

 2001年10月、症例はアシクロビルのプロドラッグであり一日3回の服薬で充分という新しく開発されたvalacyclovir 500mg錠・42錠をインターネットより個人輸入する。3000mg/日 で充分とされているところを4000mg/日 のペースで服薬。服用2日目より全身倦怠感の劇的な�y症化および口唇ヘルペスの消失が起こる。
         
【考察】
 うつ病性障害は精神的また肉体的疲弊を基盤として発症することが知られている2,3,13)。この症例のうつ病性障害発症には職場の人間関係不良という精神的疲弊があった。また,週末は大学の研究室で研究を行ない,週日は夜遅くまでインターネットや書籍で研究を行うという肉体�I疲弊があった。
 症例はfluvoxamine による倦怠感を疑いながらも社会不安障害を治したい一心でfluvoxamine の服用を3ヶ月間行った。そしてインターネットより抗うつ薬が個人輸入できることを知ると fluoxetine,sertraline,paroxetine などを輸入し,これも社会不安障害を治したい一心で�Cその比較的大量服用を行う。しかし症例の社会不安障害は軽快せず。また倦怠感も不変。
 症例は「自分の倦怠感は悪性腫瘍,または後天性免疫不全症候群などウイルス感染のような内科的疾患から由来していると思う。」と頑迷に主張する。私費も含め上記の多数の検査を行った。
 症例は自身の対人恐怖(対人緊張)のため精神医学に関する書籍を大学時代より多量に読破し,うつ病性障害の概念が出来上がっており,自身の病態がうつ病性障害の病態と異なるという考えは不変であった。
 症例には倦怠感を早く治し,大学での研究を再開したい,という焦燥が強く存在していた。
 症例は一民間企業に通訳のような存在として勤務していることに強い不満を持っており,論文を書き,大学教授に成るという野心を持っていた。また症例の性格特性として「頑固,執着性」というものが存在する。
 ヘルペス属ウイルスは全世界に蔓延化しているウイルスである。筆者の勤務する病院は顔面神経マヒに鍼を使って治すことで有名であり,120例を越す患者のヘルペス抗体価を測定してある。
 少なくとも筆者の統計上,単純ヘルペス1型抗体陽性の確率は90%,単純ヘルペス2型抗体陽性の確率は30%,帯状ヘルペス抗体陽性の確率は40%である。他のヘルペス属ウイルスの抗体価は測定していない。
 アシクロビルはヘルペス属ウイルス,すなわち単純ヘルペス1型および2型・帯状ヘルペス・ヒトヘルペス6型・Epstein-Barr・サイトメガロなどに効果がある21)。
 アシクロビルはヘルペス属ウイルスに感染した細胞内でヘルペス属ウイルス由来のチミジンキナーゼという酵素によりリン酸化されアシクロGMPになる。アシクロGMPは人のキナーゼにより更にリン酸化され,リン酸が3個附いたアシクロビル三リン酸(アシクロGTP)となる。このアシクロビル三リン酸がウイルスDNAポリメラーゼの阻害物質及び基質(d-GTPと競合)として作用し,ウイルスDNA合成を阻害する。このようにして薬効を発揮する。よって正常な細胞は全く害を受けず,ヘルペス属ウイルスが感染した細胞のみが害を受ける21)。
  アシクロビル・valacyclovir は副作用が非常に軽度である。しかし比較的高価である。
 valacyclovir はアシクロビルのプロドラッグであり,生物学的作用が高く,一日3回の服薬で充分とされている。valacyclovir がアシクロビルより今後は主流になってゆくと思われる。
 上記の2症例が最初に服薬したアシクロビル4000 mg/日 あるいはそれ以上服薬という量は帯状ヘルペス感染すなわち帯状疱疹のときに用いる量とほぼ同じか,やや多い,という量である。単純ヘルペス感染すなわち単純疱疹及び水痘では1000 mg/日 となっている21)。
 帯状ヘルペスウイルスと単純ヘルペスウイルスのアシクロビル薬剤感受性は異なり,帯状ヘルペスウイルスの場合は4000 mg/日 の服薬が必要であるが,単純ヘルペスウイルスの場合は1000 mg/日 の服薬で充分となっている。
 4000 mg/日 あるいはそれ以上の比較的大量服薬で反応し,3000 mg/日 程度の服薬量では充分な反応を示さなかったことより単純ヘルペスウイルス感染による倦怠感は考え難い。また臨床経過より帯状ヘルペスウイルスも考え難い。帯状ヘルペスウイルスと同じ程度のアシクロビル薬剤感受性を持つ他のヘルペス属ウイルスによるものと推測される。
 ストレスが過剰に掛かったときなど,免疫機能が低下し,神経細胞に潜伏していたある種のウイルスが活性化し,神経細胞は過敏状態となる。そこにある因子が加わり,発病に至る。そして神経細胞のある種のウイルス感染による慢性炎症が続き,精神疾患も続く。この神経細胞のある種のウイルス感染による炎症を軽症化あるいは沈静化させると,精神疾患は軽症化あるいは寛快する,と考えられる。
 アシクロビル・valacyclovir はヘルペス属ウイルスの増殖を阻止するのみであり,ヘルペス属ウイルスに罹患した神経細胞からヘルペス属ウイルスを駆逐することは不可能である。つまり神経細胞に潜伏しているヘルペス属ウイルスにはアシクロビル・valacyclovir は効果が無いとされている21)。
 神経細胞に潜伏しているヘルペス属ウイルスに対しても効果のある新薬の出現を待つしかないか,それともアシクロビル・valacyclovir で充分であるか,未だ1症例であり,今後の再試を要する。 
 キノコ類に免疫力増強作用が存在することは文献的にも知られている9~12)。症例の倦怠感は症例のキノコ類大量摂取が行ったり行わなかったりと徹底してなく,大量摂取を行ったときは軽症化し,大量摂取を行わなかったときは重篤化するという一進一退を続けた。
 症例自身がうつ病性障害であることを自覚した12月,以前奏功していたキノコ類大量摂取を再開したが,このときは効果をあまり感じることができず,数回行ったのみで中止した。うつ病性障害の重篤化故に男性には面倒なその調理を行う気力が湧かなかったことが関係したとも考えられる。しかし「重篤化した12月には僅かしか効果を感じなかったために数回行ったのみで中止した」と症例は述べる。ウイルスの神経細胞への感染が重篤化し,キノコ類大量摂取による免疫力の強化では効果を及ぼすことが困難になったためと考えることができる。

【最後に】
 アシクロビル服用およびキノコ類大量摂取が社会不安障害には効果が無かったことは社会不安障害はウイルス感染ではないことを示唆していると考えることもできるが,症例の社会不安障害が高校3年時(大学入試2次試験直前)からのものであり,うつ病性障害とは比較できないほど慢性化していることを考慮して考えるべきである。同年12月のうつ病性障害の悪化時,キノコ類大量摂取が僅かしかうつ病性障害に効果が無かったことを考え併せると,社会不安障害もまたウイルス感染である可能性を否定できない。ストレス過剰状態(大学入試2次試験直前)に置かれたとき,免疫力が低下し,ある領域の中枢神経細胞内に潜伏感染していたウイルスが増殖し,その領域の神経細胞が過敏状態となり,そして社会不安障害が発症したと考えることも可能である。
 
【文献】
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2)Anisman H:Vulnerability to depression: Contribution of stress.Neurology of mood disorders Vol 1,Williams & Wilkins,Baltimore,1984
3)Chrousos G P, Gold P W:The concepts of stress and stress system disorders, Overview of physical and behavioral homeostasis.JAMA 267:1244,1992
4)Deresiewicz R L, Thaler S J, Hsu L et al:Clinical and neuroradiographic manifestations of eastern equine encephalitis.N Engl J Med:1867-1869,1997
5)Dunn V, Bale J F, Zimmerman R A:MRI in children with postinfectious disseminated encephalomyelitis.Magn Reson Imaging 25:110-114,1986
6)Johnson R T:The pathogeneses of acute viral encephalitis and post-infectious encephalitis.J Infect Dis 19:359-363,1987
21)McCullers J A, Lakeman F D, Whitley R J:Human herpes-virus 6 is associated with focal encephalitis.Clin Infect Dis 18:571-573,1995
8)Merikangas K R, Kupfer D J:Mood disorders, generic aspect.Comprehensive Textbook of Psychiatry-Ⅵ,Williams &Wilkins,Baltimore,1995
9)Mizuno T (ed):Special issue on mushrooms. bioactive substances and medical utilization.Food Rev 11(1):1-7, 1995
10)Mizuno T (ed):Special issue on mushrooms. breeding and cultivation.Food Rev 13(3):327-331,1997
11)Mizuno T (ed):The extraction and development of anti-tumor-active polysaccharides from medical mushroom in japan. J of Med Mushrooms 1(1):9-11,1998
12)Mizuno T (ed):Bioactive substances in yamabushitake, and its medical utilization.J of Med Mushrooms 2(3):105,1999
13)Negrao A B, Gold P W:Major depressive disorder.Encyclopedia of stress Vol 2,Academic Press,San Diego,2000
14)小田垣雄二:塩酸amantadine 投与により劇的な改善を示した難治性うつ病の1症例,臨床精神医学 11:468-471,1999
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18)七戸満雄:メニエール病に対するアシクロビルの治療効果,医学の歩み 169:796-798,1994
19)七戸満雄:メニエール病に対するアシクロビルの治療効果(第二報),診療と治療 32:1860-1862,1994
20)田中文雅,木村清次,根津敦夫:突発性発疹症に伴う限局性中枢神経障害の2例,脳と発達 65:345-349,1998
21)Tilson H H:Monitoring the safety of antiviral--the example of the acyclovir experience.Am J Med 116:187-189,1998
22)William L L:Evidence of persistent viral infection on Meniere's disease.Arch Otolaryngol Head Neck Surg 113:397-399,1987
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A case of high dose intake of mushroom and acyclovir effected depressive disorders

http://homepage2.nifty.com/mmm23232/2975.html
肘圧による社会恐怖(social phobia)への挑戦
                       

 社会恐怖の患者には脊椎起立筋の特に第一および第二胸椎横部に硬結が存在することを社会恐怖の患者の3症例中全てに見出した。その硬結は第一および第二胸椎横部の奥深いところに存在し、指圧や手掌圧にて弛めることは不可能であり、肘圧を使用しないことには不可能である。そしてそれは麻酔薬のその硬結への注入にては一時的な硬結の消失しか観察されない。しかし強い肘圧をその部分を重点的にそして全身に行うと一時的でなく長時間の硬結の消失が観察されることから、その硬結は全身の骨格の力学的不均衡に由来すると考える。 

【始めに】
 すべての精神的疾患は、全身“気血水の流れの異常による”との考えのもと、鍼・灸・星状神経節ブロック・整体・足の裏反射療法・玄米菜食療法・気功法・低出力レーザー療法・漢方などを行ってきた。 現在は玄米菜食療法、整体療法を主として精神疾患に挑戦している。以下、症例とともに整体療法による精神疾患への挑戦を克明に記した。

【key words】social phobia, “気の滞まり”、

【症例】
(症例1)22歳、男性。中肉中背、やや痩せ型。発症は14歳時(中学3年次)と推定されるが、詳しいことは語らない。兄と2人兄弟。兄は大学在学中であるが本患者は中学卒業後、高校にも専門学校にも行っていない。第一回目の肘圧の時には全身の力学的不均衡は発見できなかったが、第二回目の肘圧のときに第一第二胸椎横部(左側)の脊柱起立筋の奥深くに硬結があるのを発見できた。右利き。

(症例2)28歳、男性。ドグマチールを前医から投薬されて2年前に体重が3カ月ほどで32kg増加し、現在の体重は96kg。2年前、急に96kgまで太った後、体重は全く減少しない。発症は大学卒業時の22歳の時。母親が過保護である。境界例とも考えられる。第一第二胸椎横部(左側)の脊柱起立筋の奥深くに硬結がある。右利き。

(症例3)38歳、男性。発症は高校3年次。大学入試直前に発症したと言う。すでに罹患して20年を経過している。今まで様々な治療を受けてきた。絶食療法、気功、漢方、星状神経節ブロック、整体、鍼、またインターネットより fluoxetine などを購入し1年半ほどかなり大量に服薬したが効果はなかったという。右利き。第一第二胸椎横部(左側)の脊柱起立筋の奥深くに硬結がある。すでに第二胸椎の左側の浅いところに硬結があり、患者はこの部分への麻酔薬の注射を受けてきたという。また第二胸椎左側の浅いところの硬結をカイロプラクテック的に整骨院で長年治療を受けてきた。この部分を治療してもらうと効果は半日も続かないが一時的ながら自律神経失調状態が軽くなるという。



【考察】
 “気の滞まり”が社会恐怖など不安障害の根本的な原因であり、それにトリガーとなるものが加わって社会恐怖などの不安障害が発症するものと考える。“気の滞まり”は自律神経の失調を招き、そこにストレスとなるものが加わることによって社会恐怖など不安障害が発症すると考える。
 この治療法は指圧とほぼ同じものである。ただ上部胸椎横部を重点的に弛緩させることが異なるのみである。指圧や掌圧では不可能である。たとえ患者が女性でも肘圧でないと効果を得られない。
 肘なら施行者の体重がかなり乗るが、指圧では僅か乗るのみである。掌圧では両手で押すとかなり体重が乗るが、脊椎横部の深部の硬結を解すのは肘圧でないと不可能である。

【最後に】
 不安障害の患者の上後背部には必ず硬結が存在する。その硬結は深部に存在する。先負に

【参考文献】
1)Novelly, R. A., Schwartz, M. M., Mattson, R. H. et al. : Behavioral toxicity associated with antiepileptic drugs : Concepts and methods of assessment. Epilepsia, 27 ; 331-340, 1986.
2)Naito, H., Matsui, N. : Temporal lobe epilepsy with ictal ectatic state and interictal behavior of hypergraphia. J Nerv Ment Dis, 176 ; 123-124, 1988.
3)Murder, D. W., Daly, D. :Psychiatric symptoms associated with lesions of temporal lobe. JAMA, 150; 173-176, 1952.


http://homepage2.nifty.com/mmm23232/2975.html


仮面うつ病で発症し脊椎横突起骨折よりパニック障害へ至った一例                                 


【key words】mild depressive episode, dissociative disorder

【始めに】
『身体が緩めば心も緩む』との考えのもと、不安障害などの治療に整体術を用いた。これは運動療法に適応しなかった、または同意しなかった患者、また運動療法で症状が快方に向かわない患者を対象に行った。
 整体は指圧・手掌圧・肘圧を用いて行った。カイロプラクテック的な方法は採らなかった。
 不安障害などの患者の背中には必ず脊椎起立筋の何処かに硬結がある。そこを揉みほぐす。しかしそれを揉みほぐすことは至難の業であるが、患部でなく、足・股関節・肩関節を強く揉みほぐしていくうちにその硬結が消失してゆくことがある。(それと同時に不安障害も治癒する。)
 この全身を揉みほぐすうちに脊柱起立筋の硬結も消失してゆくメカニズムは東洋医学の経絡の概念で説明可能かもしれない。

【症例】
(症例1)
 年齢40歳。28歳時、一念発起してそれまでのサラリーマン生活から整体術師養成学校に1年余り通い、そののちある中国整体院で5年間修行を積み、妻の故郷である九州で開業する。
 中国整体術は術者の肉体的負担が大きい。頑健な男性の中国整体術師も一日6人の治療が限界であるという。中国では堆拿(ついな)と呼ばれている。カイロプラクテックと異なり全て指圧・手掌圧・肘圧による。そして患者の体全体から揉みほぐしてゆく。外傷性頚部症候群に対しても足から揉みほぐしてゆく。肩痛に対しても同じである。体全体から揉みほぐさないことには効果は一時的であるという考えに基づいている。右利きの中国整体術師は右手を多く使用し、肉体に掛かる力学的左右差は大きい。それにより中国整体術師は頻繁に肉体的不調が生じる。
 開業して6年目の3月、腰を痛める。両側外側大腿皮神経が圧迫されている症状が出現。同時に抑鬱症状も出現。精神科医院に通院し始める。投薬内容は trazodone hydrochloride 25mg/day, sulpiride 50mg/day, alprazolam 1.2mg/day であり、この投薬内容がそのまま4カ月続けられた。しかし症状は改善傾向を見せず、ペインクリニックを受診。ここで腰痛部位へのトリガーポイント注射、大腿外側皮神経ブロック、星状神経節ブロックなどを受ける。また imipramine hydrochloride, alprazolam の投薬も受ける。しかし腰痛および抑鬱状態、および自動車を運転中に起こるパニック発作の改善傾向を認めず。また処方された imipramine hydrochloride に因ると思われる頻尿などの副作用のため imipramine hydrochloride の服薬を自ら中止する。
 著者を受診。遠方からの来院のため1カ月で服薬するようにとsulpilide 100mg/day, alprazolam 2.4mg/day, etizolam 3mg/day, flunitrazepam 4mg/day, trazodone hydrochloride 100mg/day, mianserin hydrochloride 60mg/day を2週間分処方。しかし sulpiride は一回服薬するのみで中止する(服薬すると体が疲労感で一杯になるということであった)。また mianserin hydrochloride は激しい眠気などのため1回服薬するのみで中止する。 trazodone hydrochloride も服薬しようとしない。頑健な体をしているが急激に衰弱傾向を示し、このように薬剤に対し敏感になったものと思われる。鍼治療に1ヶ月前に掛かったときの鍼の跡が今でも赤く腫れ上がっていた。
 現在、alprazolam 1.2mg/day, flunitrazepam 1mg/day(眠前)のみ服薬している。 sulpiride, trazodone hydrochloride, mianserin hydrochloride などに過敏に反応するため、それらを服薬しようとしない傾向は変わらない。
 現在でもまだ軽症うつ病エピソードのまま自宅療養中である。運動を行おうにも腰痛のため運動ができない。散歩程度しかできない。
 中国整体術師であるT氏は主張する。
『整体をしていると腰が悪いので腰を庇うため自然と胸部交感神経節を圧迫してしまう体勢になる。以前、腰が悪くなかった頃はそういうことはなかった。それが現在の私の身体・精神というか、その不調のもっとも大きな理由のような気がする。』

(症例2)
 左半身麻痺にて救急車で来院。年齢50歳。繁華街のスナックで働いている。仕事は夕方から夜遅くまでであり、衣装も派手なものを着用している。吐気有り。しかし嘔吐は無し。神経学上、左半身麻痺有り。現在の日付が解らないなど見当識障害有り。頭部CT上、特記すべき所見なし。しかし脳梗塞は発症直後は頭部CTに映らないためそのまま脳梗塞疑いとして入院となる。右脳梗塞が疑われたが、衣装や仕事、年齢などからヒステリーの可能性が高いと思われた。
 脳梗塞の治療を開始。入院3日目、再び頭部CT施行するも、特記すべき所見なし。血液検査上も脳梗塞は否定的。脳波上、特記すべき所見なし。しかし依然として左半身麻痺軽減せず。また現在の日付が解らないなど見当識障害も改善傾向無し。この見当識障害は、昨日行ったことを取り違える、1時間ほど前に食べた食事の内容を記憶していない、入院して何日が経過かしたかの問い(正解は7日)に『3カ月前?』と言う、現在の日付が解らないなど、強い記銘力障害によって起こっていた。
 入院8日目、キセノンCT施行。右脳灰白質に低環流域有り(写真1)。これが唯一の異常所見であった。入院9日目よりヒステリー疑いとして ethyl loflazepate 1mg 夕食後投与開始。入院13日目より alprazolam 1.2mg 分3追加投与開始。しかし改善傾向は僅かに認めたのみであった。入院17日目より alprazolam 2.4mg 分3に増量。これでも改善傾向ほとんど存在せず。よって入院21日目よりethyl loflazepate 2mg/day 夕食後投与に増量。しかしこれでも左半身麻痺および見当識障害は改善傾向をほとんど示さず。入院28日後、左半身麻痺および見当識障害は軽度軽快のみで退院となる。
 退院後、中国整体術師(T氏)に治療を受け、治療3回目にて左半身麻痺も見当識障害も劇的に全快。T氏によると“寝違い”に間違いないと思われる胸椎第2を中心とした脊椎骨の変位があったという。その変位を矯正するため全身を指圧し治療したが筋肉の硬直は強く、治療3回目にて脊椎骨の変位は元に戻ったという。

(症例3)
 18年来の対人恐怖症。男性。36歳。人格的な崩壊は無い。14年間、 minor tranquilizer を比較的多量に服薬してきた。 minor tranquilizer の比較的多量服薬により、なんとか社会生活を営んできたと思う、と言う。また不眠症も併発している。
 脊椎の左側に脊椎起立筋によるものと思われる“一本棒”が存在する。第2胸椎から第6胸椎に掛けて左側背部に筋肉の攣縮・硬縮が存在する。これは特に第2胸椎に強い。また、これは少なくとも12年前から存在している。12年前に鍼灸院でそのことを指摘されたという。背部の凝り強く、現在まで様々な整骨院・鍼灸院などで治療してきた。しかし全て一時的な効果に終わった。ヨガや気功法も行ってきたが、対人恐怖症などは一向に軽快する傾向が見られなかったという。この10年ほどは様々な整骨院・鍼灸院に通っていた。そして一時的な軽快が得られていたが、一時的(長くても半日ほど)でしかなかった。
 彼は4カ月前、ある中国整体術師(T氏)に施術してもらったところその対人恐怖症が一気に軽快した。しかし50%軽快したのみで未だ50%残っているという。一気に軽快したのはそれまでX線写真には写り難い亜脱臼を起こしていた第2胸椎と推定される脊椎骨が整復されたためではないか、とT氏も彼も考えている。
 
【考察1】
『体と心は一つである、体が柔らかくなれば心も柔らかくなる。』11)
『神経症・分裂病が発症して間もないものは整体で治すことができる。しかし慢性化し固くなったものを揉み解すのは非常に難しい。』11)
『根が浅いものは1回の施行で治癒させることが出来る。しかし根が深いものは何回やっても駄目なことが多い。』11)
『神経症・分裂症の人は背中に一本棒のように固くなったものがある。それは脊柱起立筋であったり首の奥の方の筋肉であったりする。それは固く、揉み解すのは至難を極める。しかし全身から丹念に揉み解してゆくと何回目かの治療で柔らかくなることが良くある。これは固くなっている局所だけを指圧などしてもまず不可能だ。全身から揉み解してゆかなければならない。そして土台である足が大切だ。股関節と下腿を良く揉み解さなければすぐに元に戻ってしまう。』11)
『たしかに局所だけを治療してもそのとき一時的にせよ非常に効く。しかし数時間で元に戻る。全身から治療しないと数年も数十年も形成されているアンバランスはすぐに元に戻る。』11)
『肉体の左右不均衡が自律神経のバランスを崩すこと、交感神経過緊張が肉体の左右不均衡によって起こることを世間の人はもっと知らなければならない。』11) 
『全身を揉み解すのには2時間懸かる。固くなっているところだけを揉み解しても、すぐに元に戻ってしまう。だから最低1時間は掛けないと治療にならない。』11)
『身体が曲がれば心も曲がる。心を真っ直ぐにしようと思えば身体を真っ直ぐにしなければならない。身体が真っ直ぐになれば自然と心も真っ直ぐになる。』11)
『一つ一つの骨が(下腿や上肢など)その人の身体全体を表しているという考えがある。一つの骨を緩めてゆけば身体全体が緩むという考えになる。骨が緩めば身体も緩み心も緩むということになる。』11)

 不安障害の患者には第2胸椎から第6胸椎に掛けて変位とその側方の筋肉の攣縮・硬直が見られる。そして筋肉の攣縮・硬縮の見られる側に“一本棒”と呼んでいる脊柱起立筋によるものと思われる筋肉の攣縮・硬縮が見られる。
 モアレ写真というものにより筋肉の攣縮・硬縮および椎骨の変位は比較的明瞭に観察できる。X線写真ではむち打ち損傷と同じように椎骨の変位はほとんど表示されない。モアレ写真を所有していれば上記の症例は良く説明できたと思われる2)。
 その“一本棒”は歯の噛み合わせと密接に関連している10)。しかし歯の噛み合わせから矯正することはほとんどの場合、反作用が強く、治癒まで至らせることは困難である。(しかし、確かにその治療は根本的な治療である。)
 症例2ではキセノンCTに示されるように左脳領域に比べ右脳領域が環流量が少なくなっている。これはT氏の指摘のように胸椎第2の変位によるものとも思われる。

 肉体の左右不均衡は椎骨の歪みを生み、様々な病気を起こす。とくに椎骨に付着する交感神経節を刺激し交感神経過緊張症を引き起こす。頭部CTで明らかなほどの頭蓋骨の不均衡があればその人はもし現在健康体であっても将来交感神経過緊張症による病態を起こす可能性は非常に高い。頭部CTで明らかなほどの頭蓋骨の不均衡(それは鼻中隔の歪み、後頭骨の歪みなどとして頭部CTに写ってくる。)があればその人はすでに何らかの自律神経に由来する不調を持っていると考えて良い。 

【考察2】
 人間の身体は大なり小なり歪んでいる。その歪みの強さが弱い人は一般に健康体である。しかし歪みの大きい人は様々な疾患(特に自律神経を媒体とした)に襲われてしまう。この歪みは2歳までに形成されるのがほとんどと思われる。それ以降に形成されるのは大きな交通事故などによるものしか存在しないようである。その歪みは歯の噛み合わせに由来するという理論があり10)、著者の長年の研究の結果、頭蓋骨が大きく変形している人はたしかに歯の噛み合わせが大きく変形している。そしてその変形は頚椎そして腰椎に及んでいる。しかしこの歪みを成人になってから歯の噛み合わせを人工的に操作することにより矯正することは至難を極める。歪みの軽度に人は確かにこの咬合療法で治癒していっている。しかし歪みの大きい人は咬合療法でも治癒させることは至難を極める。
“気の滞まり”が歯の噛み合わせの悪さに由来する脊椎骨の歪みによって起こる。この噛み合わせの矯正はテンプレートという患者自身で脱着可能なもので行われこのテンプレートを装着して運動を行うことによりこのテンプレートを装着したときの噛み合わせに対応した脊椎など骨格の矯正が行われる。しかしこれは30歳以下には用いることが比較的容易であるが、30歳以上には軽度の歪みしか存在しない人にしか用いることは非常に困難である。
“気の滞まり”は自律神経のアンバランスを招き、不安障害などを引き起こす。“気の滞まり”が身体全体の硬直化を招く。未だデータ上、確かめられたことではない。しかし、これは“気の滞まり”による説明なしには不可能と思われる。 
 たしかに長年の不安障害などはその硬結を揉みほぐし消失させることは困難を究める。しかし、患部でなく、下腿、肩関節、股関節などを丹念に揉みほぐすことにより消失してゆくことが多い。

【最後に】
『歪んだ体は歪んだままで一つの恒常性を保っている。それを無理矢理に矯正しようとするのは邪道だ。』との鍼灸師からの反論12)がある。たしかにアメリカ的カイロプラクテックは体の固い東洋人には向いていない。とくに日本人は東洋人の中でも特に体が固い民族の一つと言われている10)。アメリカ的カイロプラクテックはアメリカなど西洋の体の柔らかい民族に於いてのみ成り立つ治療法と考える。
 また中国人には中国人に、日本人には日本人に向いた治療法がある。中国においては民族ごとに少しづつ治療法が異なっているが民族ごとに体質が異なるならばそれが本当の姿と思う。日本人には日本人特有の治療法があって当然であるし、それでなければいけないと思われる。
 整体療法は不安障害には劇的に効果がある。しかし気分障害や分裂症にも効果があるか、未だ試みられていないようであり、不明である。整体療法は全身“気の流れ”の円滑化に帰結する。

【参考文献】
1)本間祥白;  難経の研究; p675, 1983, 医道の日本社
2)李 丁;   針灸経穴辞典; p514, 1986, 東洋学術出版社
3)郭 金凱;  鍼灸奇穴辞典; p432, 1987, 風林書房
5)小高修司; 中国医学の秘密;    p209, 1991, 講談社 
6)神川喜代男;  鍼とツボの科学; p192, 1993, 講談社
7)首藤傳明;   経絡治療のすすめ;   p259, 1983, 医道の日本社
8)入江正;    経別・経筋・奇経療法;  p273, 1988, 医道の日本社
9)井本邦昭; 整体法;   p202, 1998, 三樹書房
10)前原潔; テンプレート療法 p257, 1996, 三樹書房
11)近田耕治氏の手紙
12)近藤文雄氏の手紙

*The therapy of seitai for mental disorders.


http://homepage2.nifty.com/mmm23232/2975.html