キノコ類大量摂取およびアシクロビル服用が奏功した「うつ病性障害」の1例 | gcc01474のブログ

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キノコ類大量摂取およびアシクロビル服用が奏功した「うつ病性障害」の1例
 
【抄録】
 アシクロビル服用およびキノコ類大量摂取がうつ病性障害に奏功していた症例を経験した。アシクロビルはヘルペス属ウイルスの単純ヘルペス1型および2型・帯状ヘルペスに特異的に効果を示すものとされている。同じヘルペス属ウイルスのヒトヘルペス6型・Epstein-Barr・サイトメガロに対する効果は弱いとされている。ヘルペスウイルスは神経組織に潜在し,アシクロビルはヘルペスウイルスの増殖を阻止するのみの効力しか持たない21)。服薬時の一時的寛解のみで再発したことは,この症例のうつ病性障害はヘルペス属ウイルス感染症であったことを支持�キるものである。
 また、キノコ類は免疫能を上昇させ悪性腫瘍などに効果が有ると基礎医学的に証明され9~12)臨床医学的にも応用され始めている。症例は自身の病気を慢性疲労症候群の一亜型と自己診断し,ウイルス全身感染治癒のためにはキノコ類大量摂取が最も有効と考え,それを自ら行い,それが奏功していた。 
『精神疾患はある種の神経親和性ウイルスの感染を基盤とする。それはそのウイルスの神経感染による神経過敏性(神経興奮)に寄る。その器質的脆弱性の元に精神疾患が起こる。』との仮説が成り立つことを示唆する貴重な症例と考え,ここに呈示する。
   
【key words】アシクロビル(acyclovir)、キノコ(mushroom)うつ病性障害(depressive disorders)、ヘルペス属ウイルス(herpes virus group)

【はじめに】
 ヘルペス属ウイルスは神経親和性ウイルスとして有名である。ヘルペス属ウイルスは神経細胞内に潜伏感染し,ストレスなどにより個体の免疫能が低下したときに増殖し,疾病を起こす15)。
 この症例では,ウイルス感染による身体疲弊が引き金となりうつ病性障害発症へと導かれたと考えることもできる。

【症例】32歳,男性。未婚。
頭部CT:特記すべき所見なし。
神経学的:特記すべき所見なし。
脳波:特記すべき所見なし。
免疫学的所見:
 単純ヘルペス1型抗体陽性、単純ヘルペス2型抗体陰性、帯状ヘルペス抗体陰性(2000年1月6日採血)。
 サイトメガロウイルス抗体価は2000年2月5日採血では4未満(基準値:4未満)であったが2000年5月26日採血では4以上に変化していた。また2000年9月29日採血では8以上に変化していた。
 ヒトヘルペス6型・Epstein-barr ウイルスの抗体価は未計測。
 HTLV-1および HIV-1,2 抗体価は基準値以下(2000年1月6日採血)
 アデノウイルス抗体価:基準値以下(2000年2月16日採血)
 オーム病クラミジア抗体価:基準値以下(2000年2月16日採血)
 RSV抗体価:基準値以下(2000年3月15日採血)
 マイコプラズマニューモニエ抗体価は2000年2月5日採血では4未満(基準値;4未満)であったが同年5月26日採血では4以上に変化していた。
 T・B細胞100分率:T細胞84%(基準値;66~89%)
  B細胞 8%(基準値; 4~13%)(2000年4月1日採血)
生化学的所見:フェリチン精密 44 ng/dl(基準値;24~286)(2000年1月6日採血)
       β-2 microglobline 1.5 ng/dl(基準値;1.0~1.9)(2000年1月6日採血)
       
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白血球 4,400/ml、neutrophile 40%、lymphocyte 52%。(1999年5月7日採血)
白血球 3,600/ml、neutrophile 47%、lymphocyte 45%。(1999年7月19日採血)
白血球 4,900/ml、neutrophile 46%、lymphocyte 46%。(2000年2月5日採血)
白血球 3,300/ml、neutrophile 38%、lymphocyte 56%。(2000年4月1日採血)
白血球 7,100/ml、neutrophile 61%、lymphocyte 34%。(2000年5月26日採血)
白血球 5,000/ml、neutrophile 42%、lymphocyte 49%。(2000年7月7日採血)
白血球 4,700/ml、neutrophile 47%、lymphocyte 43%。(2000年10月18日採血)
 (全ての採血に於いて赤血球像の異常は認められない。)
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(生育歴)正常分娩にて出生。幼少時より内向的傾向有るも,小学生時代より,成績優秀、性格穏和であり,人気者であった。現役時(18歳時),大学受験に失敗。一浪後,現役時に容易に入れた大学に不本意ながら入学。それ故もあり,大学の授業へあまり出席せず。4年間で卒業できるところを8年懸かって卒業する。
(家族歴)特記すべきことなし。
(性格)真面目。努力家。勤勉。凝り性。素直。物事を非常に真っ直ぐに考える傾向がある。真面目さ・優しさ・素直さが目立ち,性格の障害はほとんど感じられない。
(既往歴)高校3年時の大学入試2次試験直前,社会不安障害を発症。22歳時,精神科受診。それよりbromazepam を主とした抗不安薬を継続服用。
(現病歴)1999年5月18日本院初診。22歳時より社会不安障害に対し抗不安薬を投与されてきたこと,今まで幾つかの精神科の病院や医院を受診してきたこと,様々な抗不安薬,抗うつ薬,抗精神病薬を試験的に服用してきたことを述べる。bromazepam 20mg/日の投与にて治療開始。症例はインターネットより日本で使用開始になる fluvoxamine が社会不安障害に効果があることを知る。5月30日来院時,実際は抑うつ気分は無いが,筆者に抑うつ気分を訴え fluvoxamine の投与を希望する。
 1999年5月30日よりfluvoxamine の追加投与を開始。その頃より強い倦怠感を自覚し始める。fluvoxamine の服用量を減量した翌日は倦怠感が多少軽い故に fluvoxamine の副作用が考えられた。しかし,職場の人間関係に悩み抜いていたこと,fluvoxamine の服用量を減量し�トも倦怠感の軽減は僅かであること,肝機能障害は僅かしか存在しないこと,それらよりうつ病性障害発症による倦怠感も考えられた。倦怠感の出現とともに口唇ヘルペスも出現する。acyclovir 軟膏塗布を開始する。
 症例は fluvoxamine の副作用の可能性を考えながらも社会不安障害で非常に悩み苦しんでいた故,筆者にその強い倦怠感を隠し続け,社会不安障害を治したい一心で fluvoxamine 150mg/日 の服用を続ける。症例は肝機能障害には動物性蛋白が必要と考え,毎晩ステーキを大量に食�キるなどにより,2ヶ月間ほどで体重が65kgから86kgにまで増加した。
  fluvoxamine の服用を3ヶ月間続ける。倦怠感は不変。また社会不安障害に対する効果も判然とせず。fluvoxamine 中止後,trazodone の投与を開始。しかし,trazodone は最初の数日間服用したのみで,その後は処方されるも服用せず。 1999年8月より筆者には内緒にインターネットより fluoxetine を個人輸入し,その服用を開始していた。しかしこれにても症例の社会不安障害は軽症化の傾向を見せず。倦怠感もほぼ不変。更に本院よりsetiptiline maleate,milnacipran などを処方するも,それらはあまり服用せず。社会不安障害に効果が有るという�Cンターネットよりの情報を頼りにsertraline およびparoxetine をインターネットを介し個人輸入し,その服用を行う。しかし,これにても社会不安障害は軽症化の傾向を見せず。また倦怠感も不変。
 社長は症例に対し特別扱い状態であり,症例は出社すると自室のベットにて臥床するという毎日を繰り返していた。外国人客の来たときのみベットより起き出しネクタイを締め,その外国人客の応対をするという毎日を行っていた。他の部署に症例が顔を出すと厄介者扱いされる状態であった。外国人客が来たときに応対をするのみで充分という社長の方針のため会社を休むことを社長は許さなかったが,そのように仕事は非常に楽であった。
 また,強い倦怠感のため,通訳の仕事に於いて,および書類作成に於いて,ミスが重なる。
 抑うつ気分,希死念慮,罪業観念,物事への興味の減弱など,うつ病性障害に相当するものは存在せず,強い倦怠感が存在しているのみであった。微熱は存在せず,慢性疲労症候群の診断基準は満たさないことを症例自身も理解していた。しかし症例は慢性疲労症候群の一亜型と考え,盛んにインターネットより慢性疲労症候群およびそれに類する文献を多量に読破し,慢性疲労症候群およびそれに関連するものの知識は豊富であった。
 1999年10月,症例は社会不安障害を癒したいためにインターネットを利用してsertraline,paroxetine など社会不安障害に強い効能が有るとされる抗うつ薬を個人輸入して服用していることを筆者に告白。以後,本院からは抗不安薬のみ処方することとなる。
 強い倦怠感のため,休日はほとんど臥床状態であった。
 2000年7月,症例はウイルス感染にはキノコ類大量摂取が有効と考え,強い倦怠感を克服するため,スーパーよりキノコの1種であるマイタケを買い,それを水炊きし食する。(その量は1パック130円を3パックで比較的大量であった。夜食の半分以上はそれで賄われた)そのマイタケの大量摂取を2晩続ける。1晩目は劇的に,2晩目も強く倦怠感が軽減する効果を症例は自覚した。しかし3回目以降は倦怠感軽減の自覚は減少した。しかしマイタケを水煮して食すると翌日の倦怠感が軽減するのを自覚する故に,夜食はマイタケの大量摂取をできる限り行ない続けた。しかし次第にマイタケを食しても翌日の倦怠感が軽減しなくなるのを自覚し始める。
 次にシイタケを食する。初日こそ比較的強い効果を覚えたがマイタケと同じように次第に効果は弱くなってゆく。次にシメジを食する。初日はかなり強い効果を覚えたが次第に効果は弱くなってゆく。次にエノキダケを食する。エノキダケはマイタケとほぼ同じ程度の強い効力があることを知る。しかしエノキダケは簡単な調理法である水煮では美味でなく,一人暮らしである症例は水煮で美味であるマイタケを好んで食し,エノキダケはあまり食しなかった。
 その後,この4種類のキノコ類を交互に食することを行い,症例は次のように結論した。
「マイタケ・エノキダケが最も効力が強く,次にシメジ,最も効果が弱いのがシイタケである。マイタケ・エノキダケに比べてシメジの効力は80%ほど,シイタケの効力は40%ほどである。また,一種類のキノコ類のみ連日食するより,他のキノコ類と交代させながら食する方が効果が強い。そしてこれは各々のキノコ類の有効成分とされる多糖類が各々微妙に異なるためと推測される。」
 症例は社会不安障害の治癒を願いSSRIに代わり2000年6月より服用していたmoclobemide を自身の社会不安障害に無効と判断し,2000年10月,服用中止する。同時にキノコ類大量摂取も,社会不安障害に無効であること,水煮を行うことの億劫さ,主にその2つの理由で中止する。
 2000年12月中旬,希死念慮,悲哀感を自覚。うつ状態に有ることを認める。moclobemideの服用を再開する。しかし,キノコ類大量摂取は,社会不安障害に効果がないこと,水煮を行うことが億劫であること,数回実施して以前経験した強い効果が感じられなかったこと,それ�轤フ理由で数回実施するのみで中止する。
 2001年1月,正月休暇で故郷に帰省した帰り,自動車事故を起こす。症例は真面目な性格である故,自動車運転に於いて安全運転であり,毎日のように自動車の運転を行っていたが少なくとも過去10年間無事故であった。
 2001年2月,再び自動車事故を起こす。
 この頃より朝の起床困難は更に強くなる。ほぼ毎日の遅刻は30分程度であったのが1時間程度と強くなる。
 trazodone を眠前に服用した翌朝は起床が比較的困難でなく,trazodone を服用しない翌朝は起床が極めて困難であることを繰り返し経験している。
 しかし症例はSSRIを代表とする抗うつ薬を服用すると性機能障害,倦怠感が惹起されるため,その服用を好まない。
 また,三環形抗うつ薬のamoxapine に朝の起床困難だけでなく倦怠感に対する効果も弱いながら存在することを自覚するが,症例は抗コリン作用に敏感であり,当院来院前,社会不安障害に対し imipramine の投与を比較的長期間受け、前立腺肥大を起こし,前立腺肥大による排尿障害が重篤化するということで服用を好まない。 
 症例は現在もmoclobemide が自身に最も合うとしてmoclobemide の服用を続けている。

【アシクロビル服薬】
 1999年5月,うつ病性障害発症と時を同じくして口唇ヘルペス発症。vidarabine の軟膏およびacyclovir の軟膏を塗布することにて対処する。しかし口唇ヘルペスはvidarabine の軟膏塗布にて極く軽度軽症化するのみであり、acyclovir の軟膏を塗布にて軽度軽症化していた。
 1999年7月より単純ヘルペス感染症として月5日間のみacyclovir 錠(200mg) 一日5錠処方を開始。acyclovir の軟膏塗布と併用するが口唇ヘルペスは軽度軽症化するのみに留まる。また、強い倦怠感はacyclovir 服用にても不変。
 2001年3月、帯状疱疹の保健病名の下、acyclovir (200mg) 一日20錠を7日分処方。症例はこの一日20錠服用を7日間続ける。服用2日目より強い倦怠感の劇的な軽症化が起こる。服用6日目に口唇ヘルペスの消失が起こる。そしてこの強い倦怠感の劇的な軽症化および口唇ヘルペスの消失は服用終了後、7日間ほど持続する。しかし服用終了後8日目ほどより強い倦怠感および口唇ヘルペスは再燃する。
 症例はacyclovir 錠(200mg) 一日20錠服用している7日間,“朝悪く夜良い”という日内変動が消失し“一日中普通”という状態になる。それまで有った“夜間の絶好調”が無くなり,夜,早めに就寝する。これは出勤中の半分以上は,いつも会社の自室のベットで横になっていたが,アシクロビルを服薬中は,それを行わなかったためであるのではないか,と言う。
 それまでどんなに早く就寝しても早朝は心も体も非常に重く,たとえトイレへ起きても再び床に着くということを繰り返していた。ところがこの7日間は午前6時に起床する。
 2001年6月、アシクロビルのインターネットよりの個人輸入(400 mg錠・100 錠)を行う。うつ病性障害は一日4000mg ほどの服薬にて翌日より再び寛快状態となる。社会不安障害の寛解を願い、一日6000mg ほどの服薬をも行う。しかしこれにても社会不安障害は不変に留まる。
 個人輸入したアシクロビルが無くなり,アシクロビル服薬中止後,10日ほどして再び『朝の起床困難を主としたうつ病性障害』再燃。
 2001年10月、症例はアシクロビルのプロドラッグであり一日3回の服薬で充分という新しく開発されたvalacyclovir 500mg錠・42錠をインターネットより個人輸入する。アシクロビルよりもvalacyclovir が僅かであるが安価であること,およびvalacyclovir の方が効果が高�「のではないか,という考えからであった。症例はvalacyclovir が到着すると3000mg/日 で充分とされているところを4000mg/日 のペースで服薬。服用2日目より全身倦怠感の劇的な軽症化および口唇ヘルペスの消失が起こる。そしてこの全身倦怠感の劇的な軽症化および口唇ヘルペスの消失は服用終了後、8日間ほど持続する。しかし服用終了後9日目より全身倦怠感および口唇ヘルペスは再燃する。また、これにても社会不安障害は不変に留まる。

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 fluvoxamine;1999年5月30日より服用開始。同年8月,服用中止。

 仕事上の信じられないようなミスは1999年5月下旬頃より始まっている。

 fluoxetine;1999年8月より服用開始。 2000年6月服用中止。

 sertraline;1999年11月より服用開始。 2000年6月服用中止。

 paroxetine;2000年3月より服用開始。 同年6月服用中止。

(これらSSRIは併用して服用していたことが多かった。その量は比較的大量であった。)

 RIMA(Reversible Inhibitors of Monoamine oxitase type A)であるmoclobemide ;2000年6月よりSSRIを一気に中止し,服用開始。その服用量は比較的大量であった。倦怠感は不変か,やや軽快を示す。同年10月,社会不安障害に効果がないと服用中止。しかし同�N12月中旬,服用再開。

 2000年7月初旬よりキノコ類(特にマイタケ)の大量摂取開始。倦怠感は急激に軽快を示す。しかし軽快のみであり,朝の起床困難は続く。

 2000年12月中旬,希死念慮,悲哀感を自覚し,うつ状態であることを認める。朝の起床困難は更に強くなる。

 2001年1月,自動車事故を起こす。

 2001年2月,再び自動車事故を起こす。
                 
 2001年3月、acyclovir (200mg) 一日20錠服用を7日間続ける。服用2日目より全身倦怠感の劇的な軽症化および口唇ヘルペスの消失が起こる。しかし服用中止後、8日目ほどに強い倦怠感と口唇ヘルペスの再燃が起こる。

 2001年6月、アシクロビルのインターネットよりの個人輸入(400 mg錠・100 錠)を行う。うつ病性障害は一日4000mg ほどの服薬にて翌日より再び寛快状態となる。

 2001年10月、症例はアシクロビルのプロドラッグであり一日3回の服薬で充分という新しく開発されたvalacyclovir 500mg錠・42錠をインターネットより個人輸入する。3000mg/日 で充分とされているところを4000mg/日 のペースで服薬。服用2日目より全身倦怠感の劇的な�y症化および口唇ヘルペスの消失が起こる。
         
【考察】
 うつ病性障害は精神的また肉体的疲弊を基盤として発症することが知られている2,3,13)。この症例のうつ病性障害発症には職場の人間関係不良という精神的疲弊があった。また,週末は大学の研究室で研究を行ない,週日は夜遅くまでインターネットや書籍で研究を行うという肉体�I疲弊があった。
 症例はfluvoxamine による倦怠感を疑いながらも社会不安障害を治したい一心でfluvoxamine の服用を3ヶ月間行った。そしてインターネットより抗うつ薬が個人輸入できることを知ると fluoxetine,sertraline,paroxetine などを輸入し,これも社会不安障害を治したい一心で�Cその比較的大量服用を行う。しかし症例の社会不安障害は軽快せず。また倦怠感も不変。
 症例は「自分の倦怠感は悪性腫瘍,または後天性免疫不全症候群などウイルス感染のような内科的疾患から由来していると思う。」と頑迷に主張する。私費も含め上記の多数の検査を行った。
 症例は自身の対人恐怖(対人緊張)のため精神医学に関する書籍を大学時代より多量に読破し,うつ病性障害の概念が出来上がっており,自身の病態がうつ病性障害の病態と異なるという考えは不変であった。
 症例には倦怠感を早く治し,大学での研究を再開したい,という焦燥が強く存在していた。
 症例は一民間企業に通訳のような存在として勤務していることに強い不満を持っており,論文を書き,大学教授に成るという野心を持っていた。また症例の性格特性として「頑固,執着性」というものが存在する。
 ヘルペス属ウイルスは全世界に蔓延化しているウイルスである。筆者の勤務する病院は顔面神経マヒに鍼を使って治すことで有名であり,120例を越す患者のヘルペス抗体価を測定してある。
 少なくとも筆者の統計上,単純ヘルペス1型抗体陽性の確率は90%,単純ヘルペス2型抗体陽性の確率は30%,帯状ヘルペス抗体陽性の確率は40%である。他のヘルペス属ウイルスの抗体価は測定していない。
 アシクロビルはヘルペス属ウイルス,すなわち単純ヘルペス1型および2型・帯状ヘルペス・ヒトヘルペス6型・Epstein-Barr・サイトメガロなどに効果がある21)。
 アシクロビルはヘルペス属ウイルスに感染した細胞内でヘルペス属ウイルス由来のチミジンキナーゼという酵素によりリン酸化されアシクロGMPになる。アシクロGMPは人のキナーゼにより更にリン酸化され,リン酸が3個附いたアシクロビル三リン酸(アシクロGTP)となる。このアシクロビル三リン酸がウイルスDNAポリメラーゼの阻害物質及び基質(d-GTPと競合)として作用し,ウイルスDNA合成を阻害する。このようにして薬効を発揮する。よって正常な細胞は全く害を受けず,ヘルペス属ウイルスが感染した細胞のみが害を受ける21)。
  アシクロビル・valacyclovir は副作用が非常に軽度である。しかし比較的高価である。
 valacyclovir はアシクロビルのプロドラッグであり,生物学的作用が高く,一日3回の服薬で充分とされている。valacyclovir がアシクロビルより今後は主流になってゆくと思われる。
 上記の2症例が最初に服薬したアシクロビル4000 mg/日 あるいはそれ以上服薬という量は帯状ヘルペス感染すなわち帯状疱疹のときに用いる量とほぼ同じか,やや多い,という量である。単純ヘルペス感染すなわち単純疱疹及び水痘では1000 mg/日 となっている21)。
 帯状ヘルペスウイルスと単純ヘルペスウイルスのアシクロビル薬剤感受性は異なり,帯状ヘルペスウイルスの場合は4000 mg/日 の服薬が必要であるが,単純ヘルペスウイルスの場合は1000 mg/日 の服薬で充分となっている。
 4000 mg/日 あるいはそれ以上の比較的大量服薬で反応し,3000 mg/日 程度の服薬量では充分な反応を示さなかったことより単純ヘルペスウイルス感染による倦怠感は考え難い。また臨床経過より帯状ヘルペスウイルスも考え難い。帯状ヘルペスウイルスと同じ程度のアシクロビル薬剤感受性を持つ他のヘルペス属ウイルスによるものと推測される。
 ストレスが過剰に掛かったときなど,免疫機能が低下し,神経細胞に潜伏していたある種のウイルスが活性化し,神経細胞は過敏状態となる。そこにある因子が加わり,発病に至る。そして神経細胞のある種のウイルス感染による慢性炎症が続き,精神疾患も続く。この神経細胞のある種のウイルス感染による炎症を軽症化あるいは沈静化させると,精神疾患は軽症化あるいは寛快する,と考えられる。
 アシクロビル・valacyclovir はヘルペス属ウイルスの増殖を阻止するのみであり,ヘルペス属ウイルスに罹患した神経細胞からヘルペス属ウイルスを駆逐することは不可能である。つまり神経細胞に潜伏しているヘルペス属ウイルスにはアシクロビル・valacyclovir は効果が無いとされている21)。
 神経細胞に潜伏しているヘルペス属ウイルスに対しても効果のある新薬の出現を待つしかないか,それともアシクロビル・valacyclovir で充分であるか,未だ1症例であり,今後の再試を要する。 
 キノコ類に免疫力増強作用が存在することは文献的にも知られている9~12)。症例の倦怠感は症例のキノコ類大量摂取が行ったり行わなかったりと徹底してなく,大量摂取を行ったときは軽症化し,大量摂取を行わなかったときは重篤化するという一進一退を続けた。
 症例自身がうつ病性障害であることを自覚した12月,以前奏功していたキノコ類大量摂取を再開したが,このときは効果をあまり感じることができず,数回行ったのみで中止した。うつ病性障害の重篤化故に男性には面倒なその調理を行う気力が湧かなかったことが関係したとも考えられる。しかし「重篤化した12月には僅かしか効果を感じなかったために数回行ったのみで中止した」と症例は述べる。ウイルスの神経細胞への感染が重篤化し,キノコ類大量摂取による免疫力の強化では効果を及ぼすことが困難になったためと考えることができる。

【最後に】
 アシクロビル服用およびキノコ類大量摂取が社会不安障害には効果が無かったことは社会不安障害はウイルス感染ではないことを示唆していると考えることもできるが,症例の社会不安障害が高校3年時(大学入試2次試験直前)からのものであり,うつ病性障害とは比較できないほど慢性化していることを考慮して考えるべきである。同年12月のうつ病性障害の悪化時,キノコ類大量摂取が僅かしかうつ病性障害に効果が無かったことを考え併せると,社会不安障害もまたウイルス感染である可能性を否定できない。ストレス過剰状態(大学入試2次試験直前)に置かれたとき,免疫力が低下し,ある領域の中枢神経細胞内に潜伏感染していたウイルスが増殖し,その領域の神経細胞が過敏状態となり,そして社会不安障害が発症したと考えることも可能である。
 
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A case of high dose intake of mushroom and acyclovir effected depressive disorders

http://homepage2.nifty.com/mmm23232/2975.html