フランクリン・ルーズベルト(以下、FDR)の周囲には、左翼、過激派、ソ連のスパイが驚くほど跋扈していました。

一部だけを列挙してみます。

 

ヘンリー・ウォレス(副大統領・商務長官)。

彼は大変な容共主義者で、ハミルトン・フィッシュは彼に対して「ヨーロッパで共産革命が起きた方が良いとまで述べている。その方が一般人は幸福になるとまで考えていたのである」と指摘しています。そのあまりの容共ぶりに民主党保守派からFDR四選出馬の際、現職でありながら副大統領候補になる事を拒否された人物(FDRの健康問題が懸念され、大統領昇格の可能性があったため)。

ハリー・ホプキンス(商務長官・大統領顧問)。

フィッシュは「ホプキンスはスターリン擁護を繰り返した。スターリンを共産主義者とみなすことさえ馬鹿げたことだ。彼はナショナリストである。こう言ってスターリンを庇ったのである」と述べています。

他にもアルジャー・ヒス(国務長官上級補佐官)、ハリー・デクスター・ホワイト(財務次官補、ハル・ノートの起草者)、ラフリン・カリー(大統領補佐官)などなど。この3人とホプキンスは、1995年に公開されたヴェノナ文書(第二次世界大戦前後の時期に米国内のソ連のスパイたちがモスクワの諜報本部とやり取りした秘密通信を、米陸軍情報部が秘密裡に傍受・解読した記録)などで、ソ連のスパイあるいは協力者とほぼ判明しています。

 

フランクリン・デラノ・ルーズベルト (Wikipedia より)

 

そして、FDR自身もマーチン・ダイズ議員に

「共産主義者である親友がいる。しかし共産主義がわが国にとって危険なものであるとは考えていない」

「ロシア(ソビエト)はわが国が最も頼れる同盟国になるだろうし、ソビエト政府はそれ以前の皇帝政治から比べれば、大きな進歩を見せている」

と語っていました。

フィッシュはダイズ議員によるFDRのソ連に対する認識を引用して、ロシア皇帝による専制政治を肯定している訳ではないけれど、と前置きをしながらも、

 

FDRの観察がいかに的外れであったか。それはその後の歴史で明らかである。スターリンの始めたソビエト独裁政治が、過去30年間にどれだけの自国民を殺したか。3000万人以上が秘密警察の手にかかって殺害され、強制労働の結果病死したのである。ニコライ二世(訳注:在位1894~1917)の23年間の治世で、秘密警察によって殺害されたりシベリアに送られて死んだものの数は2000に届かない。

皇帝の治下では、概ね旅行の自由、広範な言論の自由、信教の自由があった。そして何よりも財産を私有する自由があった。政府が国民を恐怖に陥れるようなことはなかった。もちろん爆弾を仕掛けるような連中や、アナーキストや革命を狙う過激派に対しては厳しい措置がとられたものの、ニコライ二世の統治下のロシアでは、現在のアメリカやその他の自由主義諸国と同じ程度の政治的自由が存在していた。

 

としています。

このようにフィッシュは本書の全編にわたってFDRとその取り巻きの親ソビエト的な言説・行動を記述し、戦争終結後に東ヨーロッパと東アジアを共産主義者に献上した事を激しく非難しています。

そして、第二次大戦はFDRが起こした不要な戦争、という認識まで示しているのです。

その一方で、英国・チャーチルのFDRとは対照的な共産主義に対する認識もフィッシュは紹介しています。

 

チャーチルは共産主義の本質を語るとき、その言葉を濁さなかった。

共産主義者というのは単なる信条を持った人間というふうに考えてはいけない。自らの信条を他人に押し付けることに類いまれな才能を持ったものたちであると考えるべきである。人々の不満や、権力に逆らいたいという気持ちを正確に分析し、既存の組織を破壊する科学的手法を身に付けている。共産主義者に対して、真摯に向き合ったり、憐れみや寛容さを見せれば、彼らはそれにとことんつけ込んでくる。出来上がっているものを壊す。それが彼らの目的だからである

彼らは機が熟したと判断すれば、どんな手段を使うことも厭わない。冷酷な暴力、騒乱、騒擾行為、暗殺。その実行にあたっては良心の呵責など見せない。(民主主義の) 砦となる機関に対しては、『自由の敵』あるいは『民主主義の敵』といった言葉で攻撃する。権力機関が一度『労働者同胞』の手に落ちれば、反対意見を持つものは抹殺される。民主主義の標榜は、権力奪取のためにそれを道具として使っているに過ぎない

(中略) 彼は共産主義の脅威を悟っていた。ただ問題は、対ヒトラーの戦いでソビエトロシアが同盟国になってしまったことだった。意に反して、FDRとともに共産主義に宥和的な態度をとらざるを得ない羽目に陥った。

 

FDRに比べて、なんと的確な認識でしょうか!

チャーチルの分析は今日の我々にも必要なものなので、特別に赤字にしておきます。

 

さて、はっきり言って当時の米国の国力を考えると、戦争を行えばどんなボンクラ大統領でも戦時大統領として勝利を得ることが出来たでしょう。梅之助としても、FDRはあまりにも不当に高評価されている米国大統領だと言わざるを得ません。

的確な国際情勢分析を行っていた前任者のフーバーが大恐慌において成果を上げることが出来ず、大統領選でFDRに敗れた事が悔やまれます。

 

 

 

 

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