前回の記事で、太子線を訪問する前に道草していたと書きましたが、その道草の内容が伊香保温泉の公園に展示されている東武伊香保軌道線の車両を見ることでした。
東武伊香保軌道線は、東武鉄道が運営していた軌道線で、伊香保線、高崎線、前橋線の3路線から構成されていました。もともとは馬車鉄道として開業したものを電気会社(利根発電、高崎水力電気)により電化され、さらに東京電燈を経て昭和2年に東武鉄道に買収されたものです。その後、設備の老朽化、累積赤字の増加等により昭和28年に高崎線、翌29年に前橋線が廃止となり、最後に残った伊香保線も昭和31年に廃止となりました。
今回見に行った保存車両は、廃止後に渋川在住のお医者さんが車体のみ所有されていたものを渋川市が譲り受け、豊橋鉄道から譲り受けた伊香保線と同形の台車、横浜市電の機器などを合わせて、復元された車両です。
図-1 伊香保線のルート(六本松駅付近から伊香保駅)
注:ベース地図には国土地理院地図+スーパー地形を使用
伊香保線は渋川駅から伊香保駅までの12.6㎞の路線で、起点から終点までは500m以上の標高差があり、平均勾配48.1‰(最急勾配57.1‰)、80か所以上のカーブ、4か所のスイッチバックのある、登山電車といっても良いくらいの山岳路線でした。その終点に近い場所に、平成26年に「峠の公園」が整備され、復元した車両が保存展示されています。
写真ー1 保存車両
展示車両の端部に設置された脚で車体を支えているようです。台車に負担をかけないためでしょうか。展示車両の前にはレールが設置されていました。レール自体は当時のものではないと思いますが、概ね当時レールが敷設されていた場所に一致するようです。
写真ー2 終点の伊香保駅方面をのぞむ
公園から終点の伊香保駅方面を撮影したものです。電柱の並んでいる細い道が伊香保線の線路跡になります。