不平等と格差について。非常に示唆的な書籍が出版されています。

その名も「The Great Leveler (万人を平等にするもの)」。原文英語、邦訳未出版。

私は、この書籍の存在をFinantial Timesのコラムで知りました。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25146950X21C17A2TCR000/

 

FTのコラムそれ自体は相変わらず左翼的でリベラル万歳の偏向報道(=ポピュリズムの台頭をナントカせよという論調)という印象がぬぐえませんが、この歴史学者による書籍そのものは非常に興味をそそられます。FTコラムから抜粋します:

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米スタンフォード大学教授を務める歴史家ウォルター・シャイデル氏は、今後も格差は拡大していくと指摘する。同氏はこのすばらしい著書の中で、農業(および農業国)の始まりによって余剰の富が生まれると、エリート層は見事なまでにそれを徹底的に収奪してきたと論じている。

 収奪行為が限界に達するのは、これ以上収奪すると生産者が生存できなくなるという段階にまで至ったときだ。意外にも多くの貧困にあえぐ農業社会においても、この限界に達した。その中には、ローマ帝国やビザンチン帝国も含まれる。シャイデル氏によると、平和と安寧の時代には、強者は自分たちや子孫の取り分を増大させようと社会を巧みに操ったという。権力は富を生み、富は権力を生む、というわけだ。では、この連鎖を止める方法はあるのだろうか。可能だ、と本書は指摘する。つまり、聖書に出てくる人類に破滅をもたらす4つの悲劇である戦争、革命、疫病、飢饉(ききん)が歴史的には格差の拡大に歯止めをかけてきたという。

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私は、正直感動しました。私がボンヤリと思ってきたことを、歴史的事実を突きつけて明快に論じているように感じたからです。私が思ってきたこととは:

①歴史的に格差は必ずあるものだ

②格差は本来もっともっと大きいものだ

③戦争のようなものがあると格差が縮まる

④いまの時代は非常に稀な格差が小さい時代である

それが私の考えでした。この点は、過去のエントリでもボンヤリと述べています。

https://ameblo.jp/gawasagawa/entry-12306741217.html

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実は、日本国民は「平等」であったことなど、過去にわずかな期間しかありません。戦前は華族と庶民の間には途轍もない格差があったし、戦国時代には大名と百姓の間に恐るべき格差があった。

 

さらに、世界的にも、平等であった国など殆どありません。

フランスでは貴族がいました。今でもいます。

中国では、共産革命が起きましたが、共産党員がヒエラルキの頂点に立っただけです。

タイは植民地化されなかったので、昔からの貴族が居て、庶民とはかけ離れた生活をしています。

 

これが世界の標準です。国民は皆平等だと思っている現代日本人は、浮世離れしています。戦後にGHQによって華族が没落し、皆が白紙に戻り、ほんの数十年間、日本では平等な環境が実現した。

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自分のボンヤリとした考えが、著名な歴史学者の研究結果に近かったことは素直に嬉しいと感じます。私の推論は間違っていなかったと確認できるからです。この書籍は残念ながら未だ英語版しか出ていませんが、必読だと思ってAmazonでつい先ほど注文したばかりです。

 

いまから読むのが楽しみでしょうがない。読む前にフライングの感想ですが、それにしても戦争・革命・疫病・飢饉だけが格差を解消するとすれば、格差は運命だとしか言いようがありません。それを解消するためには、戦争・革命・疫病・飢饉という別の苦難を経なければならないのですから。突き詰めると、平等というフィクションを信じて生きていくのは、非常に苦しい人生を送ることになってしまいそうです。

 

「世間を包み込む平等という概念は忘れ去るべきではないか」というのが昨今の私の意見です。いい加減、夢物語から目を覚まさないと、平等でない現実にもがき苦しむことになってしまいます。戦国時代の農民は、織田信長や徳川家康より地位が低いからといって、その不平等にもがき苦しむことはなかったでしょう。彼らと、現代人は、持っているフィクション≒世界観が違うのです。フィクションを変えれば苦しまないのに、一体だれが平等のフィクションを押し付けるのか?私の中でイメージしている犯人は居るのですが、各方面から非難を受けそうなので黙して語らずご想像にお任せします。

 



それにしても、歴史はやはり面白い。

歴史は嘘をつかない。どんなにリベラルが糊塗しても、「格差はある」という厳然たる事実がありありと見えてくる。

 

イデオロギーとかポピュリズムとか右翼左翼とか偏向報道とかフェイクニュースとか・・・・・・もうそういうニセモノの言葉遊びはたくさんなんです。そういうくだらない思想的な議論は飽き飽きです。どうせ裏には何がしかの利害関係が働いているんですから。

 

全部スキップして、とにかく厳然たる事実を見にいったほうがいい。まさに現場主義です。それはすなわち、人間の歴史を見に行くということです。そこには全部の高尚な議論がまるでクズのように思えるほど、人間の本性についてたくさんの事実が横たわっています。ウォルター・シャイデル教授は、カッコつけずに、人類の歴史を淡々と検証し、「格差はめちゃありますよフツーは」という真実に辿りついたのでしょう。

 

久々に、本が届く前から胸が高鳴ります。

 

 

ちなみに、上記の議論は投資にもスッポリと当てはまります。くだらない数学的モデルを駆使しても結局はロクな結果になりません。それよりも人間の真実を見に、歴史探訪に出るほうが、よほど投資パフォーマンスに影響すると思います。

 

以上