心していた通りではありますが、プラチナは大きな下落に見舞われています。スポット価格で3000円を一時切りました。私は、これからどうしようかと思案していますが、実は、買い増しを検討しています。その理由は、基本のキですが、Fundamentalsです。

 

ディーゼル需要が激減しているこのご時勢で、コイツは何をいっているのだ?と思われる向きが多いと思います。おそらく私にバイアスが働いているのもありますが、下記に基づいてそのような方向性を持っています。

 


第一に、プラチナという貴金属は、その40%-50%が、ディーゼル触媒に利用されています。ところが、

(1) VWのいわゆるdieselgate事件により、欧州自動車メーカ各社がEVに舵を切りました。

(2) また、欧州での嫌ディーゼル機運が高まっており、ディーゼル乗用車の乗り入れ禁止措置を打ち出す欧州地方自治体も出てきています(その行政方針を裁判所も容認したというのが先日のニュースでした)。

(3) さらに欧州排ガス規制のEURO6dという規制は非常に厳しい。これを達成するには、後処理装置に尿素システムを採用する必要があります。これまでのようにプラチナ触媒に頼る方向ではなくなるという問題がある。


従って、欧州におけるディーゼル後処理装置需要としてのプラチナは、お先真っ暗です。

 


第二に、パラジウムという貴金属を見てみます。こちらの需要は、なんと70%がガソリン触媒です。以前も書きましたが、このパラジウムはプラチナと代替が可能です。むしろプラチナが高価だから、パラジウムへシフトしたといったほうが正しい。

ただ、プラチナへの巻き戻しシフトが明日起こるかというとそれは難しいです。自動車の排ガスには認証という制度があって、クルマは認証を通さなければいけない。部品メーカがプラチナのガソリン触媒を技術的には容易に作ったとしても、それを現実の車に搭載するには、何ヶ月に及ぶ実験作業や搭載検討を経て、認証を通さないといけない。そうして初めてマーケットに出てきます。

しかし、ガソリン触媒という用途で、プラチナはパラジウムと代替可能であるという点はとても重要なポイントです。

 


第三に、ディーゼル自動車の需要を見てみます。

第一の点で述べたとおり、欧州のディーゼル乗用車需要はお先真っ暗です。しかしながら、

(1) トラックは簡単にはEVやらガソリンやらに置き換わりません。大荷物を牽引するトルクが必要で、いまのところそれを実現する見通しは10年先になると思います。

(2) 発展途上国では、まだまだディーゼル車の需要があります。そして、それらの国々も、EURO4とかEURO5を導入しつつあります。EURO4/5であれば、プラチナを使うことになります。

つまり、欧州ディーゼル乗用車は真っ暗でも、欧州ディーゼルトラックはまだまだ需要があるし、世界的にはディーゼルトラックは滅びることはありません。乗用車でも、発展途上国のディーゼル車需要はまだまだシュリンクしない。

 


第四に、ガソリン自動車の需要を見てみます。この点が今回のメモで最も重要です。

ガソリン自動車は、世界中で伸びています。なぜなら、ディーゼル自動車が嫌われたことで、ガソリンシフトが起こっているからです。ガソリン自動車が売れるから、ガソリン触媒に使われるパラジウムが逼迫し、パラジウム価格が高騰しているのです。

しかし、世の中はこう見ていることでしょう。

「EVが世界を席巻し、ディーゼルもガソリンも無くなっていくのでは?」

この点は、いま世界がもっとも勘違いを起こしているポイントと言っても過言ではありません。間違ってはいませんが、誤解を含んでいます。実際のところ、今後10年で普及するのは、EVではなく、ハイブリッド車である、というのが真実です。

EVには色々あります。

BEV (Battery Electric Vehicle)

HEV (Hybrid Electric Vehicle)

PHEV (Plug-in Hybrid Electric Vehicle)

MHEV (Mile Hybrid Electric Vehicle)

・・・

種類をあげるときりが無い。しかし大切なポイントは、BEV以外は要するにハイブリッドであり、すべて内燃機関を併用しているという点です。現時点では、内燃機関にはガソリンが採用されるケースが多い。EVといっても、結局アブラを使うのです。

EVというと、世の中はだいたいBEVのことを想定します。アブラを使っているなんて思いもしない。例えば下記ニュースの見出しを見て下さい。

http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1707/28/news070.html

「内燃機関の時代に幕か:電気自動車の勝利か 英国が脱ディーゼル・ガソリン宣言 」

ディーゼル・ガソリンが一切使われなくなるというニュアンスが読み取れます。しかし、実際、英国もハイブリッドは禁止していません。ハイブリッド車はOKです。アブラと内燃機関を併用したEVはOKなのです。

そして、VolvoとかVWとか、こぞってEV化計画を打ち出していますが、その実は、「ハイブリッドがたくさん出てくるよ計画」なのです。

https://diamond.jp/articles/-/137661

7月に入ってボルボ・カーズが「2019年以降に発売するすべての車種をEVまたはHEV(ハイブリッド・エレクトリック・ビークル=電動モーターを使う混合動力車)にする」と発表。

 

重要なことなので繰り返しますが、世の中のクルマのEV化というのは、少なくとも今後10年以上は、ハイブリッド化のことを指すはずです。BEV化を指すのではない。そんなことは、既存の自動車メーカは夢にも思っていません。●issanだって、技術の●issanといってNote E-powerを出してますが、要するにこれはシリーズハイブリッドというHEVの一種です。ガソリン発電機をクルマに搭載しているだけの話であって、BEVからは遥かに遠い。

こういうハイブリッド車が大量に世に出回ると何が起こるか。ガソリンエンジンが大量に必要になります。それすなわち、パラジウム触媒が大量に必要になるのです。内燃機関は滅びず、パラジウム触媒需要も滅びません。

 

今後10年間以上パラジウム触媒需要がなくならないならば、パラジウムの価格は高値を維持するはずです。そうすると、もともとはプラチナの代用品であったはずのパラジウムがプラチナよりも高値を維持し続けるというのは無理が出てきます。少なくともPrice Parityまでたどり着くはずです。あとは、プラチナを使ったガソリン触媒の技術開発と認証完了のタイミングが、いつ訪れるかという時間の問題に過ぎません。しかしながら、プラチナは、パラジウムの価格から大幅に下方を彷徨っている。これをチャンスと言わずに何がチャンスなのか。

 

結論としては、目下大暴落を演じているプラチナですが、そういう日々の上げ下げには囚われずに、数年後のファンダメンタルズの展望を見れば、なかなか有望だと思うのです。これが、私が、プラチナを一世一代の投資チャンスだと捉えている、基礎的な理由になります。

 

今回は、自身の考えをもう少し詳細に整理してみました。暴落を演じているときは、自分が何を考えているのかを文字に起こして振り返ると、目先の値動きに囚われずに落ち着きを取り戻すことができます。そこで自分の考えの間違いに気づけばそれはそれで良し。自分の考えの正しさを再確認できれば、それもそれで良し。考えの整理というのは大事ですね。

 

以上