資本コストの意義
- 必要最低限の利益率
- 投下資本における年間利益の割合で示す
- 課題に評価された場合⇒採択すべき機会を棄却する
源泉別資本コスト
負債の資本コスト
借入金=支払利息÷(1+負債コスト)
負債コスト=支払利息÷負債
- 額面100円
- 表面金利2%(支払利息2円)
- 償還期間5年
- 93円で割引発行
- 資本コストKd
93円=2/(1+Kd)+2/(1+Kd)^2~{2+100/(1+Kd)}
Kd=3.55%
◎契約時点の時価で計算する
優先株の資本コスト
優先株の市場価値=約定配当金÷資本コスト
資本コスト=約定配当金÷優先株の市場価値
普通株の資本コスト
普通株資本コスト=安全利子率+β(市場ポートフォリオの期待値-安全利子率)
加重平均資本コスト
WACC=(1-τ)(負債コスト)(社債の構成比)+(優先株コスト)(優先株構成比)+(普通株コスト)(普通株構成比)
- 社債額面価格:5000万(帳簿価格:100円、50万口、時価95円、年率5%、利息年末1回払い、3年満期、税率40%)
- 優先株の発行株数:2.5万株(株価500円)、1株配当20円
- 普通株の発行株数10万株(株価400円)β:0.8、市場ポートフォリオ期待率:7%、安全利子率:4%
- 各調達金額を計算する
- 各構成比を計算する
⑴
4750=250/(1+KD)+250/(1+KD)+(250+5000)/KD
KD=6.9%
⑵
KP=20/500=4%
⑶
4+0.8(7-4)=6.4%
WACC=(1-0.4)6.9×0.475+4×0.125+6.4×0.4=5.036%
非公開企業のWACC
- 長期借入金:6%、簿価6000万円、構成比0.6
- 自己資本:10%,簿価:4000万円、構成比0.4
- フリーキャッシュフロー:毎期1300万円
時価の構成比をx、(1-x)と考える
WACC=(1-0.4)0.06x+0.1(1-x)=0.1-0.064x
企業価値=フリーキャッシュフロー/WACC=1300万/(0.1-0.064x)
x=0.356
1-x=0.644
WACC=7.7%
企業価値=1300÷0.077=16836円
MM理論
ノーベル経済学者のモジリアーニとミラーが展開した。
- 負債コスト=(1-τ)支払利息/負債
- 株主資本コスト=(1-τ)税引き前利益/普通株の市場価値
- WACC=(1-τ)営業利益/企業価値(社債の市場価値+普通株の市場価値)
ここで、毎期の期待税引き前利益=毎期の期待営業利益-支払利息
よって営業利益=支払利息+税引き前利益
これを⑴⑵式より
毎期の期待営業利益=(税引き後負債コスト×社債の市場価値+税引き後株主資本コスト×普通株の市場価値)/(1-τ)
これを3式に代入すると
WACC
=(税引き後負債コスト×社債の市場価値+税引き後株主資本コスト×普通株の市場価値)/企業価値
=税引き後負債コスト×社債の市場価値/企業価値+税引き後株主資本コスト×普通株の市場価値/企業価値
上式はWACCが税引き後負債コストと税引き後株主コストの資本構成費による加重平均コストWACCであることを示している。
企業価値=社債の市場価値+普通株の資本価値を上式に代入して整理すると次式になる。
税引き後株の資本コスト=税引き後加重平均資本コストWACC+(税引き後加重平均資本コストWAC-税引き後負債コスト)×社債の市場価値/普通株の市場価値
よって無借金であれば税引き後株主資本コスト=WACCとなる
この場合株主は営業利益の変動制だけに由来するリスクだけを負担する
これを営業リスクという
売り上げに対する営業利益の相対費=営業レバレッジ
よってWACC>負債コスト
WACC-負債コスト=プラス
ゆえに負債比率(社債の市場価値/普通株の市場価値)が高くなるほど株主資本コストが高くなる
投下資本を同一とすれば負債利用が進むほど過分牛資本が減少し株主資本1単位あたりのリスク負担が増大する
このリスクを財務リスクという
以上から負債の利用には節税というプラス効果のほかに財務リスクを増大させると言うマイナス効果がある
正解
節税効果による資本コストの低下が企業価値の増加をもたらす
間違った回答
- 借入金のあるなし以外は財務的に同一条件の2つの企業がある。この時無借金企業の方が借金企業よりも企業価値が高い
- 借入金のあるなし以外は財務的に同一条件の2つの企業がある。この時無借金企業の方が借金企業よりも企業価値が低い
- 節税効果による資本コストの増加が企業価値の増加をもたらす。
負債比率(負債/自己資本)が高くなると
株主資本コストが高くなる
- WACCには営業リスクを含んでいる
- WACC>負債コスト
- WACC-負債コスト=プラスになる
- よって負債府立が高くなると株主資本コストが下がる
投下資本を同一とすれば
負債利用が進むほど株主資本が減少し株主資本1当たりのリスク負担が増大する
- 財務リスクという
MM理論の結論は節税効果による資本コストの低下が企業価値の増加をもたらす。
無借金会社(U)と負債会社(L)+のキャッシュフローを比べてみよう
まず、キャッシュフローとは
- 企業の目的=株主価値の最大化
- 株主価値=株主が企業から受け取る将来キャッシュフロー(現金の流列)
- キャッシュフロー=実際に得られた収入から、外部への支出を差し引いて手元に残る資金の流れのこと
- 負債価値:債権者に分配されるキャッシュフローの現在価値
- フリーキャッシュフロー:債権者と株主双方へ分配されるキャッシュフロー
- 企業価値:キャッシュフローの現在の価値
Lについて株主が受け取る配当と債権者が受け取る利息を計算する。要するに営業利益から税金を引いた残りが株主と債権者へ分配される原資となる。
- U=(1-τ)×(毎期の期待営業利益)
- L=(1-τ)(毎期の期待営業利益-支払利息)+支払利息=(1-τ)×支払利息+τ×支払利息
U社とL社の税金はτX、τ(営業利益-支払利息)であるから、フリーキャッシュフローはL社の方が負債の節税額、τ×支払利息だけ大きくなる
そうすると企業価値の計算は
-
U社の企業価値=キャッシュフロー/WACC=(1-τ)×営業利益/WACC
-
L社の企業価値=(1-τ)×営業利益/WACC+τ×支払利息÷支払利息÷負債価格
この場合のWACCは営業リスクノミを負担するときの株主資本コストであったから(1-τ)×営業利益をWACCで資本化すれば無借金会社Lの企業価値が求まる。
借金会社Lは(1-τ)営業利益とτ営業利益というリスクの異なる2つにキャッシュフローから構成されている。
前者はUと同じくWACCで資本化し後者は節税額であり確定キャッシュフローであるからリスクのない割引率(支払利息÷負債)で資本化する。
借金会社の企業価値は毎年の節税額を資本化した分だけ高くなる
- これが借金することのメリットである
つまり節税効果による資本コストの低下が企業価値の増加をもたらす
- 全ての資本を負債調達すればいいのか
MM理論では投資資金が回収できなくなるような事態は想定外に置いている。
現実には負債依存度が高まると財務破綻を起こす可能性が高まり倒産のコストや避けるためのコストが増す。
負債利用の上限
- WACCが最小になるところの負債比率(負債/自己資金)が企業価値が最大になる
- つまり負債比率が最適な資本構成になる
レバード・β
負債比率の高い企業はβが高くなる
- 類似企業のβを平均することは適切ではない
- 資本構成が違うと平均できない
アンレバート・β=レバート・β/{1+(1-τ)負債/自己資本}