一旬驕話(す):最終回です  ドイツの特ダネメディア・コレクティヴから 中国テクノロジーで守られるドイツの研究プロジェクト

 

  最終回です   

  2023430日に始まりました拙ブログ「一旬驕話」が「いろは」を「す」まで至りました。今回で「一旬驕話」は終わります。次ブログはいつ始めるかもタイトルも考えておりません。始める元気が出てきましたらお知らせいたします。その折はまた覗いてみてください。

 長い間ご覧いただきまして、有り難うございました。

 

 

  特ダネメディア・コレクティヴ    

  ジャーナリズムの衰退が広く語られる昨今ですが、新しい月刊誌「地平」が創刊されました。楽しみです。その創刊号(7月号)に花田達朗「第三のジャーナリズム」(第1回)が掲載されています。その冒頭で「非営利の探査報道ニュース組織『コレクティヴ』」を紹介しています。コレクティヴが組織されたのは2012年ですが、10年ほどの間に日本でもよく知られている週刊誌デア・シュピーゲルやミュンヘンに本社を置く南ドイツ新聞に肩を並べる堅実で信頼性のある情報に基づく特ダネメディアに成長したのです。

  

  花田論文はドイツでの反極右デモを呼び起こす契機となった「コレクティヴ」記事についてだけではなく、日本での類似の報道組織 Tansa  についても詳しく述べています。私はこのブログでデア・シュピーゲルと南ドイツ新聞の記事を紹介したことはありますが、有料記事が増えてきて近頃は他の会社のページにアクセスすることが多くなっていました。

 

  コレクティヴにアクセスしてみました  

  コレクティヴ https://correctiv.org/ にアクセスしてみましたの方にノルトライン・ヴェストファーレン州の研究データバンク華為(ファーウェイ)テクノロジーが保全」が掲載されていました。ご存じのように現在はドイツと中国は極めて微妙な関係に入り込もうとしています。自動車でも半導体でもテクノロジーでも中国はアメリカ(圏諸国)に引けは取らないと言われています。ですから経済的、技術的には中国との親密な関係は必要ですが、政治的には中国と距離を取らざるを得ません。「さて研究分野では如何に?」とこの記事を覗いてみました。紹介します。なおこの記事はhttps://correctiv.org/aktuelles/bildung/2024/07/22/wie-nrw-seine-forschungsprojekte-absichert-mit-technik-von-huawei/ でご覧になれます。

 

  ルトライン・ヴェストファーレン州はどのようにして研究プロジェクトを保全するか ―― 華為(ファーウェイ)テクノロジー  2024/07/22

 

  ノルトライン・ヴェストファーレン州政府は州内大学の研究プロジェクトを確実に保管する予定の巨大なデータ保存クラウドを構築しようとしている。そのハードウエアは事もあろうに中国の電気通信大手華為(ファーウェイ)製を使用する。

 

  州文科省によると    

  所管のノルトライン・ヴェストファーレン州文化科学省のウエブぺージでのこの光栄あるプロジェクトは一千万ユーロを投じて巨大なクラウド記憶装置を構築し、ここでは将来はドイツ全体の応用科学関連の大学が研究データを保存できるプランで、10月には稼働予定である。当局は「巨大クラウドが研究データを確保する」と説明している。

 

  州文科省によると巨額投資の理由は、ロシアのウクライナ侵攻以来大学でのある面ではセンシブルな研究成果へのハッカー攻撃が増加したところにある。この巨大データ蓄積プロジェクトの名称はノルトライン・ヴェストファーレン・データストレージで、実験での測定値や広範な研究を保管し、同時にドイツ内の他の研究者のための利用を可能にする確実な解決法である、とされている。

 

  驚くことに、ノルトライン・ヴェストファーレン州はセンシブルな研究データの安全性を、データ安全性というテーマにおいてはまことに先ず思いつくというわけではないハードウエア提供者に、任せることが明らかになった。すなわち中国の電気通信大手華為(ファーウェイ)にである。

 

  当社がこの件に関する情報を入手したのちに、ノルトライン・ヴェストファーレン州文科省は問い合わせに対して編集部に、370万ユーロの「対象別高性能記憶」に華為がプロジェクトのデータ記憶装置を提供するのは事実である、プロジェクトのテクノロジー全体が華為に依存しているわけではなく、シスコ( Cisco )社もネットワーク部門で23万ユーロ分を担当している、と確言している。

 

  連邦政府はスパイを心配している   

  州政府の華為への委託は、ちょうど2週間前になって連邦政府が華為と距離を取り始めたことによって疑問視されるにいたった。連邦政府の担当者とモバイル通信提供者は会議を開き、5G 移動通信ネットワークでのすでに構築されている部分を切り離す点で合意している。 理由は安全性保障である。したがって無線用電柱のような新たな部品は建築拡大に際して投入されないことになる。

 

  背景となっているのはここ数年来議論されている中国製ハードウエアの信頼性である。安全性担当当局はここ数年来華為と中国政府の親密さのゆえに華為を注視してきている。一つは提供されるハードウエアにスパイ部品を隠して填め込める点である。今一つはそのインフラ稼働に際して政治的緊張のある国の政府に近い企業に依存させる点である。

 

  華為が私たちのデータインフラにその技術を提供すれば、中国との緊張が増加した時には、ロシアのウクライナ侵攻後にガス供給で起こったと類似した窮状が将来されかねない、すなわち、ドイツは戦争挑発者の点滴にすがらざるを得なくなるのである。中国と技術インフラの場合は事情は幾分異なる。ハードウエア部品は消費財ではないからである。安全保障当局者によれば、中国は抗争となれば機材の電源を切断してしまい、インフラ全体を麻痺させるのも可能となるのではないかと危惧されるのである。

 

  ノルトライン・ヴェストファーレン州政府がそれにもかかわらずその新しい巨大記憶装置を華為に委託したのは、州文科省広報によれば、この計画を広くヨーロッパ全体に周知し、適用方針に従って価格と作業の最適性から選んだ結果であるという。

 

  例えばスパイ目的へのデータ流出防止に向けてはどのような安全上の措置が講じられているのかという疑問に対して文科省は「このシステムは作業に絶対的に必要な外部接続のみ可能である。メンテナンス目的にも関係者には個々の事例に認められた且つ監視下での通用のみ許可する」と回答している。

 

  責任を持っているのはアーヘン工科大学    

  さらにプロジェクトはノルトライン・ヴェストファーレン・工業大学アーヘンの管轄下で行われている。応用研究分野ではドイツで最も重要な工科大学の一つである。この大学の教授が学生やスタッフと開発した発明の多くが産業で活用されるにいたる製品の基礎ともなっている。

 

  アーヘンからのテクノロジーはいわゆる汎用製品の分野に比較的多く使用されている。汎用製品とは民間用にも軍事用にも活用可能な製品である。

 

  「コレクティヴ」は最近ラインラント・ヴェストファーレン・工業大学アーヘンでの研究プロジェクトについて、何名もの大学教授がいわゆる教授企業を通して外部からの研究資金を得ようとし、それによって自分たちの研究プロジェクトの選択で影響を受けている様子をくわしく報告した。

 

  そしてここで再び中国が登場するのである。アーヘン工業大学の外部資金による研究プロジェクトの幾つかに中国からの軍事機関あるいは軍部に近い機関との協力が見られるのである。言ってみれば、共同研究プロジェクトに乗じて監視国家から何百万かの額がアーヘンに流れ込んでいるのである。

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  日本では大学予算の削減を契機として軍事予算による学術研究の歪曲が語られていますが、ドイツでは外国資金による学術研究への影響が語られているのでした。巨大データベースの持つ弱点も書き込まれています。そういう風に考えるのかと思い至りました。

 

  それではこれで「一旬驕話」ブログのシャッターを下ろします。