アイツが家を出て2日目の夜。
時間は22時を過ぎていたが。
俺は自分が悪かったと思い直して。
アイツを実家まで迎えに行くと決めた。
部屋着からもう一度スーツに着替える。
それからアイツに電話をしたが電源を切っており繋がらなかった。
この時間に突然実家を訪ねるワケにもいかず。
俺は義母へ電話をした。
こんな時間にすみません・・・そう言う俺に。
「出張なんて大変ねぇ、ご苦労様です。」と義母が言った。
アイツは俺とケンカをして家を出てきたとは言っておらず。
どうやら俺は出張していることになっているらしかった。
アイツの電話の電源が切れて連絡が取れないでいることを伝え。
折り返し俺に連絡をもらえるよう義母に伝言をお願いした。
しかしこの夜。
いくら待ってもアイツから連絡は来なかった。
アイツが家を出て3日目の朝。
起きても何もやる気が起きない。
とはいえ会社を休むワケにも行かない。
「顔が濡れてチカラが出ない」と言うのはアンパンマンだが。
まさにそんな感じ。
アイツの電話の電源は切れたまま。
ムスコに会いたい。
この日も家に明かりはない。
だが家に入ると料理が作ってあり洗濯もしてある。
アイツが来ていたのだ。
テーブルの上の交換を見ると。
「金曜日に帰ります」とだけ書いてあった。
金曜日。
帰ると家に明かりが点いている。
誰かが自分を待っていてくれるということは。
とてもしやわせなことなのだと実感した。
玄関を開けて「ただいま」と声を掛けると。
お父さーんとムスコが俺に飛びついて「会いたかったよぉ!」と言った。
お父さんもおんなじ!と言って俺もムスコを抱きしめた。
4日離れてただけなのにもうずっと会えなかった親子の再会の様だった(笑)
南無妙法蓮華経
ムスコを抱いたままリビングへ行くと。
おかえりなさ~いとアイツが出迎える。
呆気に取られるくらい何事もなかったように生活が戻っていた。
ムスコはずっと俺から離れず寝かしつけるのも俺がやった。
ムスコが寝てから俺はアイツの元へ行き俺が悪かったと謝った。
傍に寝ていたトモコを抱き上げ。
「お願い捨てないで!俺達を置いて出て行かないで!!」と懇願した。
アイツは笑って頷いて。
「叩いてごめんね」と俺の頬をさすった。
寝言を責めても仕方のないことだと解っているけど。
すごく傷ついたし簡単に許せなかった。
このまま俺と一緒に居たのでは気持ちの平静を取り戻せない。
だから家を出たのだとアイツが言った。
俺はアイツにマナミのことを話した。
俺の潜在意識の中に彼女がいる限り。
また寝言で名前を呼んでしまうかもしれないけど。
誓って愛しているのはアイツだけだと言った。
そして。
夢は記憶の整理をしているという説があるっていうことを話し。
これからは俺の寝言を聞いたら。
記憶の整理をしているんだなぁ~と温かい目で見てほしいとお願いした。
それから。
俺もそんなにしょっちゅう女の名前を寝言で言ったりしないと思うけど。
聞けばやっぱり不愉快になるだろうし。
であれば寝室を別にする方がいいんじゃないかと提案した。
アイツはそれでも寝室は一緒がいいと言う。
「マナミさんのこと、ちゃんと話しをしてくれたし
それにkonちゃんは浮気をしないって信じてるもん。」
そう言って俺を見つめた。
アイツに見つめられて俺は緊張した。
この信頼を失ったら俺達は今度こそ本当に終わりになる。
付き合っている時。
結婚している今。
俺達はお互いに「良い面」だけを見せていた。
でもずっと「良い面」ばかり見せていられるワケがない。
俺はアイツが結婚してから「面倒くさい女」になったと思ったけれど。
別にそれはアイツが変わってしまったワケではなかった。
改めて思う。
人間は多面体。
長所と短所が必ずある。
アイツにとって自分の「負の部分」も見せられる。
そういう存在に俺がなったということなのだ。
結婚して5年目。
本当の意味で夫婦になったってことなのかな。
これから先も夫婦仲良くやっていく為には。
思いやりと。
相手を信じることが大切だと心から思う。
握り合った手を離さず。
背中を向け合わせず。
お互いが歩み寄ろう。
これを誓いの言葉。
そして。
konta家の家訓にしようと思う。
交換ノートにも記す。
よし。
合掌