玩具デザインから読み解く文化的起源 - ぬいぐるみ編 - | トイ&コミックのガリンペイロ

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「フロム・ヘル」はアラン・ムーア原作、エディ・キャンベル作画のコミック作品。

19世紀末に起こった「切り裂きジャック」の事件をモチーフとしており、史実同様に展開する。

 

2001年にはヒューズ兄弟により監督され、原作では脇役であったアバーライン警部にジョニー・デップを配役、主人公として実写化された。

コミック原作とは異なり犯人探しに重点を置いた作風となっており、評価はまちまちだが、今回のブログの焦点はそこにはないので割愛する。

 

さて、映画「フロム・ヘル」にはこんなシーンがある。

アバーライン警部の死後、彼の両眼にコインが置かれるのである。

 
映画・ドラマでも度々登場する儀式、皆さんもそういったシーンをどこかで見た記憶があるかと思う。
 
ノーマン・リーダス主演の映画「処刑人」(1999年)でも、神の啓示を受けた殺し屋の兄弟が標的を弔うために瞼にコインを載せるシーンが印象的に描かれた。
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▼”大量のコイン”が登場。
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現実でも著名な例としてはリンカーン大統領の葬儀の際に、その瞼の上にコインが置かれたエピソードがあるが、これはどのような風習からなるものなのかというといわゆる「冥銭」(めいせん)の一種なのである。

 

死者に捧げる”カロンのオボルス”。

▼古代ギリシャの銀貨「オボルス」の一例。

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ギリシャ神話に由来するこの風習は、現世と死後の世界とを隔てるスティクス川(日本ていうところの三途の河)を渡る際に冥界の船渡しカロンに支払うための船賃(日本で言うところの六文銭)として、死者に贈るコインとされている。

▼コインを受け取るカロン。船賃は1オボルスだ。

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そのコインを何故瞼の上に置くのか…というと、その由来は諸説あり明らかにされていないが(伝統にのっとれば、口の中、舌の上に1枚置くケースが一般的で、瞼に置く風習はもっぱらキリスト教が広まって以降)、古代ギリシャにおいて瞳は魂が肉体から抜け出す際の出口である…という考えがあり、逆説的に入口ともなり得る死者の瞳をコインで塞ぐことで魂のない肉体に悪霊が入ることを封じたのではないか…とする説が有力である。(遺体の目が開いてしまうのを押さえるという実益の意味もあったりする)

 

また、コインが1枚から2枚になったのには、カロンの渡し賃は「片道1オボルス」なので、「帰ってくる際の分」つまりは復活を願う意味もあるとか。

 

今では、この死者の瞼の上にコインを置く、という風習は廃れ気味であるそうで、

事実長い歴史の中ではコインではなくボタンを置く…という風習になり変わっているケースもあり、しかしてその起源としては前述のもの同様に魂のない肉体に悪霊が入り込むのを防ぐためである…というものである。

 

さて、目にボタンというと色々と心当たりが出てくる人もいるでしょう。

こちらはプライム1スタジオ様が展開しているコレクタブル フィギュアシリーズ「Cutie1」の「バットマン(イエローカラー)」ですが、

ご覧の通り目にはボタンを縫い付けたかのような意匠となっています。

 

先日ご紹介したジャック・イン・ザ ・ボックスから飛び出すジョーカーさん人形や

 

ハーレイちゃん人形も眼の部分にはボタンが縫い付けられています。

 

今では定番となっている「目がボタン」のぬいぐるみですが、この起源も相当に古いものでぬいぐるみが玩具として扱われる頃にはこういった仕様がすでにあったとする資料が散見されるほどです。

 

以前にフィギュアの歴史を語った際にちょっと触れたような気もしますが、元々「ヒトガタ」としての人形は呪術的、儀式的な意味合いが込められ作られたものから発展したと言われています。

 

そのため、死者と同じく魂のないヒトガタの眼の部分から悪霊が入り込んでしまわないようにボタンを縫い付けた…というのが「ぬいぐるみの目がボタン」という意匠の起源、という説もあるとか。(諸説あり)

 

また、上記ジャック・イン・ザ ・ボックスのジョーカーさん、ハーレイちゃんともに口の部分が縫い付けられたかのようになっている意匠も同様の理由によるものです。

▼欧米の「案山子(かかし)」は口を縫い付けられたデザインで作られることも多くこの一例といえるかも。

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お口チャックと言えば、

プライム1スタジオ様の「Cutie1」シリーズでは口の部分がジッパーになっており、

他にもQUANTUM MECHANIXのZippermouthシリーズも

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その口はジッパーになっていたりしますが、これは当然ジッパーが開発された1851年以降に流行ったデザインなので、呪術的な意味合いはなかったりします。(そもそも開閉するし)

 

前振りあんまり関係ない!!

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と、このように普段何気なく見ている玩具デザインですが、その歴史を紐解くとなかなか興味深いオリジンが潜んでいたりするもので、特にアメトイなんかは「日本であんまり馴染みねーな」というデザインにもちゃんと意味があったりすることも多く、こういう視点から玩具を見比べていくのも楽しいものです。

しかし、いささかマニアック!

レッツ、アメトイライフ!

 

 

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