長文ですが、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
それでは、どうぞ!(^^)!
ルマン式スタートで決勝レーススタートです。
スタートライダーは星野
いつもの感じでスタート進行します。
24時間カウントダウンするんだなぁ〜って(^^)
スタート位置が
8耐なんかだと壁際でスタートするのですが、ここは違うみたい(笑)
前のチームも移動したので。僕も
周りを見て位置決め。。
ギヤを1速 キルスイッチをONにして。
ライト点けて
準備OK!
ごー、よん、さん、にー、いち
とは言いません
よくわからなかったけど、スタートしました。
最初は24位前後を走行。
無難に、リスクを避け、順調に周回を重ねてる。
無言で僕は頷き、うん。うん。よし。
と。
21周のスティントを終え無事にタケシにライダーチェンジ。
ピットワークも大きな問題は無く、進んでいきます。
この頃にはスペアマシンも分解して、パーツをピットに
8耐とは違い、正確に、確実に、少し時間かかっても良いから、バイクの状態を把握しながらの作業です。
タケシも順調にペースをキープして走行。
そのままトミーさんにライダーチェンジ。
私はライダーにマシンの状態を聞き、何も問題が無いことを常に確認。
給油のガソリン量の測定のお手伝いしたり、いろいろあります。
ガソリン専用テント。
BMWワークスにお借りしました
セクタータイムをよく見てマシンに異常が無いか確認しながら。
順調です。
スタートから2時間が過ぎて、星野の2スティント目になりました。
星野も慣れてきて、この時18位を走行。
順調です。だってまだ22時間あるから。(笑)
その時、背筋が凍るような感覚。星野のセクター2のタイムに異変。
何かがおきている。
ピット入ってくるかも!とメカニックに
モニターを見ていると、PITINのマークが
星野を迎え入れピットに入れる。
緊急ピットインです。
リヤから振動が!と星野
タイヤのトラブルか?なんだ?
と思う間もなくタイヤ交換と損傷個所の修復。
リヤフェンダーが吹き飛んでいる。
私はリヤフェンダーをむしり取りました、ケーブル類をタイラップで固定するように指示。
リヤフェンダーが無くなるとリヤサスにタイヤカスが入り込みサストラブルが出るので、スプリングの周りをガムテープでふさぐ。
それ以外に損傷個所は無く、走行には問題はなさそう。
タイヤは後で確認したら異物が刺さりスローパンクチャーからのタイヤトラブルでした。
まあ、あることだと思う。
仕方ないが、ちょっと悔しい。しかしこれも耐久ならでは。スプリントでは終わりです。
耐久ならまだまだ挽回ができる。
まだ21時間あるから。
そのまま星野に1.5スティントを走ってもらう事に。
その後、タケシ トミー ほっし~と、順調に進んでいきます。
フロントのアクスルの回転が途中重くなりちょっとナットが壊れないか不安な状況。
私は
ピットの作業行程を変更。
フロントのみインパクトで外し、締め付けはスピーダーで取り付けるようにしました。
ねじが壊れたら大幅なロスにつながる可能性があるので。変更です。
でも十分速くできています。問題ナシ!
そしてスタートから8時間が経過。夜8時間位で日は落ち夜になりました。
この8時間の時間がたつのが早かった事。
鈴鹿の時はすごく長く感じていましたが、今回はあっという間。
まだ1/3しか過ぎていません。
ちょっとしたトラブルはありましたが、おおむね順調。
ライダー3名も落ち着いてペース配分をして走行している感じです。
夜になり、サインエリアから顔を出してウチのバイクを確認しようと思いますが、全く分かりません(笑)
ウチの位置だとサインボード側を走ってきて、270キロ位出てる。
かなり困難です(笑)
ATJさんにお借りしたサインボードも大活躍です。
このまま順調に周回を重ね、深夜になりはじめます。スタッフもまだまだ元気。
もう、決まった動きをして、次のピットインに備えるという、いわば製造ラインのような動き。
この辺りからライダー全員ダブルスティントを×2の予定です。
ライダーの休憩時間を増やし、睡眠を少しでも取ってもらう作戦
そして
時間は2時。スタートから11時間経過。順調に周回を重ねていきます。
その時、健太郎が、なんかタケシが足を出したように見えたと。
マジか?
マジか!
「入ってくるよー!準備して!」
モニターを観察。
タイミングモニターにPIT IN
タイヤを交換して、タケシに私は話を聞く。
「なんかスクリーンに水が付きます」
と
「ん????」
「なんだ?」
雨の訳もなく、
目視では大きな問題はなさそうに見えたので、そのまま行ってダメそうだったら帰ってこいと伝え、出そうとした瞬間
水温が 117℃を指していました。
「これは」
タケシを止めて
「中に入れるよ!」
皆、どうしたんだと
「オーバーヒートして水吹いている」
マジか。
「カウル外して!」
ウエスを大量に持ちラジエターキャップを外すことを試みる。
まあ、難しい。
「水!水!」
ラジエターに水をかけて強制的に温度を下げ、ラジエターキャップを開ける。
水がいない。
ヘッドガスケット抜けか!
とりあえず水を入れ、冷却水のエア抜きを試みる。
小さな気泡があるような、ないような。
この時私は考えました。
もし、スタートから11時間かけて微量のヘッド抜けならば、もう5時間くらいは水が吹かないかもしれない。
それなら、少しのロスでレースが出来ると。
一端の望みを持ち、復元してタケシに走行してもらう事しようと。
仮に水が吹いてもスクリーンに付く程度でライダーが危険になる要素は少ないと判断しました。
もし、それでダメなら。。。どうしようかと。。。
再びタケシがコースイン
順調に周回を重ねる。タイムも夜にしては良いタイム。
大丈夫か?
どうか?
たのむ。大丈夫でいてくれ。
次のピットインの時にリザーブタンクの水の量だけ確認しようよメカニックで話し合いをしました。
が、予定より早く、スロー走行でピットイン
ダメか・・・。。。
タケシ
「また水が!」
オッケー。
「中入れるよ!」
「カウル外して!」
リザーブタンクは満タン。
完全にヘッドガスケット抜けの症状だった。
正直心が折れかけた。
くそ~。ここで終わりか。。
今までの準備やここで走らせるための苦労や皆の努力。スタッフの顔、ライダー達、日本から声援を送ってくれる皆の顔。
走馬灯のように頭をかけめぐりました。
あきらめるな。結果は厳しいことになるけど、最後まで走ってチェッカーを受けさせる。
俺のバイクは裏切らない。
すぐさま
パーツBOXに走るが、ヘッドガスケットは無い。
BMWワークスは早々にリタイヤしていたので、もういなかった。
僕は
LRP Polandに行き、チーフメカニックのKOSAに
「Do you have HeadGasket?」
と
僕の顔をみて
「Yes」
そのまま自分のピットへ戻り作業開始。
BMWは車載でもヘッドガスケットなら交換できます。
それが一番ロスが少ないと判断。
外装外し、エアボックス、スロットル、ラジエター、マフラーなど外すようにメカニックに指示。
この頃KOSAが、ヘッドガスケットと特殊工具を持ってきて
「never give up!」
と一言僕に言いました。
「Thank you!」
KOSAは自分のチームのレースあるのにウチのピットの外からずっと見ていてくれて。
アドバイスくれて。
KOSAはこの時BMWワークスのメカニックに電話していて、
いろいろな特殊工具が頼んでもいないのに届いて。
BMWワークスのメカニックもウチのピットに気が付いたらいて。
私は必死でエンジンと向き合い作業をして。
狭い所でカムシャフト外そうとカムホルダー緩めようとしていたが、入る工具が無く
ここまで想定して工具を持ってきておらず。
無理やりやろうとして、手を滑らせ、左手血だらけに。
気にしてられないので、そのまま作業。
エンジンまだ熱い状態なので、なかなか緩まない。
KOSAが、エンジン下ろした方が早いし確実だからそうした方が良いと
確かにそうだ。
BMWワークスからエンジンスタンドが来て
下ろしました。
そのままボルトを緩め
ヘッドを分離
ガスケットを交換
ヘッドを締め付け、カム付けて
エンジン乗せて
全てのパーツを組付け
エンジン始動。
「かかった」
問題はなさそう。
冷静に。安全に。確実に。
ライダーを危険にさらすのはNGだから。
2時間半の作業を終えて再度コースイン。
4時半頃、コースに復帰しました。
順位はほぼ最下位まで落ちていて。
目標の順位にはとても無理な場所に。
しっかり準備したつもりだったけど、私には、まだまだ足りないことが多かった。
24時間を知らなかっただけだった。
悔しい。
今後、ヘッドガスケット交換も練習しよう。多分1人でも1時間で出来ると思う。
そう思った。
スタッフがいればもっと早くできると思った。
BMWのメカニックや、LRP POLANDに工具を返しに行きました。
BMWメカ ニコニコで 「Great Good Job!」
私 「Thank You!」
LRP KOSA 二ヤリとして
「never give up!」 「 Good Job!」
私 「Thank you!」「ネバーギブアップ!」「必ずフィニッシュするよ!」
って。
本当に皆の協力なくしてはマシンの修復はできなかった。
本当に暖かい皆さんに感謝!
で、無事に走行しているのを見ている。モニターを注視してみていても大丈夫そう。
ストレートを通り過ぎるマシンを見ていても良い音している。
雑音も感じない。
戻ってきた中冨さんに話を聞く。
問題ないと!
良かった!
大丈夫だ。自分に自信を持て!そう思いルーティーン作業に戻る。
レースもそろそろ夜が明けて朝日が出てくる時間帯。
朝7時
あと8時間だ。
この頃になると、目を瞑ると寝れる。
一番きつい時間帯に入った。
スタッフもボロボロだ。
ライダーもきつい。
全員きつい。
人間がぼろ雑巾の様になるとはこの事かと思うくらい。
徹夜や睡眠不足はいつものことだけど、これだけ集中している状況の徹夜は多分今までに無い。
次の参戦の時には、15分で良いからスタッフにも睡眠をとる事の大切さを学んだ。
限界の限界を超えていこうとする感覚でした。
そして、ここからの8時間が異常に長い。
淡々と走っているが、ライダーの疲労も相当なもの。
星野は回転を抑え、エンジンを労り走っている。
中冨さんも同じ。耐久走りをしてくれている。
タケシは・・・。。。
なんかお構いなしのようにタイムを刻む。
若い。
チームベストの55秒に入る。
ペースダウンの指示を出そうと思うくらい。
ちょっと、しっかり伝わっていなかったのか。ペースが速い。
まあ、良いか。ただ転んだり壊れたりするのが怖かった。
2時間半止まってしまっていたので、順位はあまり気にしていなかった。
ただ、そこにいた全員が無事にフィニッシュラインを抜けてチェッカーを受ける事だけを目標に。
お互いがお互いを労り、ライダーはマシンを労り。
最終スティントになる中冨さんに
「お願いします!」
と
中冨「ちゃんと最後までマシン運びます!」
そう言ってくれた。
たのもしかった
中冨さんは第三ライダーという役割をプロフェッショナルにこなしてくれていた。
セッティングも中冨さん好みではなかった。
思いっきり攻めたかったと思う。でもチームの事を考えて黙って乗ってくれた。
本当に感謝。
星野は、エンジン労りそれでもタイムを落とさないように頑張っていた。最後までエンジンが悲鳴を上げないで完走したい。
ただそれだけだった。
本当に感謝
最後のライダーチェンジ
ピットインしてタイヤを交換する。
スタンドが上がり、タイヤが外れた瞬間
スタンドフックが割れてマシンが傾いてしまった。
とっさに私はマシンを触ってしまった。
メカは通常4名。私は指揮官として今回はメカの4名には入っていません。
給油補助という立場で作業エリアにいました。
触れないけどマシンは倒せない。
オフィシャルは手で4のマークを出している。
メカニック達がなんとか普通のスタンドに切り替えタイヤを交換する。
オフィシャルが
はい。
分かってます。
倒れるのは。
つい、手が出た
時間はかかってしまったが、なんとか中冨さんを送り出すことができた。
「ペナルティーだね。」
監督と話をした。
まあ、前との差は10周以上
後ろとの差は60周
仕方ないね。ペナルティー来たら受けようと話をしていました。
その時、ルノーさんがピットに来て
「ファイナルピットストップ?」
と聞かれ
「イエス」
と答えると
「OK!」
と去って行きました。
その後、ペナルティーは来なかった。
順位も変わらない位置だったので、配慮してくれたのだと思う。
感謝です。
その時に、ピットの外からオフィシャルが怖い顔して僕を見ている。
ピットに入って良いか?とジェスチャーしている。
「OK!」
怖い顔して僕の所に
フランス語で
「#%&」‘&$#“”$」
ん??
何を言っているんだ??
「あー、なんとなく分かった」
「君たちは夜中にエンジン下ろして修理して、また走りそしてチェッカーを受けようとしている」
「すごいぞ!握手してくれ!」
って言ってました?言ってるように感じた(笑)
嬉しいです。
他のオフィシャルにも、私がトイレ行った時に追いかけてきて、同じように激励され。
[頑張って完走しろ]!って。
耐久大国、フランスなんだな~と感じました。
フランス語ができる石塚さんもそういう風にオフィシャルに言われたそうです。
そして、24時間たち
無事にチェッカーを受けました。
戦ったマシン
ありがとう(^^)
チェッカーを受け、目の前を通り過ぎて行った中冨さんを見て。
正直、ほっとした。
完走できてよかった。
夜中に折れかけた心も持ち直した。
本音は悔しい。
完走が目的では無かったから。
「レース」を戦いたかった。
チェッカーを受けて思う事
チャレンジして良かった。
悔しいけど、良かった。
次の事はまだ分からないけど、またチャレンジすると思った。
もちろんこのご時世にヨーロッパでレースをするのはかなり厳しい状況。
また、いろいろな人に助けてもらいながらチャレンジしたいと思う。
今度はレースをしたい。
名だたる有名なトップチームもリタイアしてしまった。
そういうレースなんだと思う。
ここには、
「本当の強さ」
が必要なんだと思った。
それは、何か?
日本でゆっくり考えます。
次は「強さ」を身に着けて参戦したい。
チェッカーを受け、チャンピオンになったTSR藤井さんに挨拶に!
「おめでとうございます!」
おー!よく頑張ったねー!
「なんとか完走しました!」
「本当にいろいろありがとうございました!」
日本で飲みに行こうよー
って
ありがたいです。
ワーナー監督
無事に総合28位 EWCクラス10位 ポイントも獲得し、年間ランキング19位の結果になりました。
モトアンの監督からコップのプレゼント
来年来るなら手伝うから連絡しろって(^^)
皆さん、本当にありがとうございました。
余韻に浸る間も無く
片付けです。
48時間の耐久の最後は撤収です。
月曜ならいーのにね。
その日のウチにやらなきゃならないの。。
コンテナに詰め込むところまで。
僕はバラバラなスペアマシンを組み立て。
ハンドキャリーでマフラーとか持ち帰らなくてはならないので。
今回の荷物たち(^^)
ヘロヘロになりながら
なんとか
パッキング完了。
夕日の前に、コンテナに詰めて
さらば、ポールリカール。ル・カステレ
またな!
宿に戻る車は、乗った瞬間からとても静かで。皆終了。。
僕、運転していて。
ちょっと居眠りしてぶつけそうになった(笑)
ランナバウトの中で一瞬落ちた!(^^)!
ぶつからなくて良かった。
晩御飯食べる気力も無いけど、カップラーメンあったので、一人1個持ち帰り
部屋でラーメン食べて寝ようと。
僕は
お疲れさんのビールを飲み
部屋に戻り
ラーメン食べて寝ました。
秒で寝れた(笑)
次の日聞いた話ですが、お湯を沸かして待っている間に寝て、朝になっていた
とか
お湯を沸かそうとしていたらそのまま朝だったとか
3分待っている間に寝ていて朝だったとか
ラーメン、どんなんなったんだろう(笑)
らしい(笑)
次の日はマルセイユの空港でPCR検査
いろいろすったもんだありましたが、無事にOK
すこしだけ観光して。
夕食を宿のレストランで食べようという事に
予約するのに電話はハードルが高くて、石塚さんにお願いして予約してもらいました。
ありがとうございます!石塚さん
美味しい夕食と、いろいろな話を皆でして。
プチ反省会(笑)
レースの打ち上げっぽくない感じ。ナイフとフォーク。
夜遅くまで飲みました!
火曜は朝から帰国の為、ニースへ。
ここでもまたいろいろありましたが、無事に飛行機に乗り
ほぼ1日かけて
成田へ到着
久しぶりの日本でした。
空の色、こんなんだっけ?そう思いました。
これで、私の参戦記は終了します。
何かを感じてくれていたら嬉しいな。
何も隠さず事実と自分の気持ちを正直に書きました。
一緒に戦ってくれる仲間も増やしたい。
そう思っています。
また来年。
「その向こうへ」
ありがとうございました!
TONE RT SYNCEDGE4413 BMW
チームオーナー チーフメカニック
高村嘉寿