Z750FX
走行距離23,586km
エンジンのオーバーホールを含むレストアです。
昨年の夏にご依頼いただいていましたが、ようやく着手することができました。
キャブレターはノーマルのままというオーダーですので、分解整備します。
エンジンを下ろして分解
お気づきになりましたでしょうか?
ピストンスカートの形状が「いびつ」になっています。裏返すと・・・
YAMAHAの刻印が?!
これには代表の日向も、メカニックの橋立も驚いていました。
(オーナーさんも寝耳に水だった様子)
自動車(旧車)にバイクのピストンを流用する、ということは手段の一つとしてありますが、これはとても流用と呼べるレベルではありません。
(オーナーさんいわく、購入後しばらくエンジンは動いていたそうですがその後、不動になったとのこと)
エンジンの中は、分解しないかぎり外見からではわからないものですが、ピストンを交換した張本人は当然、知っているわけですよね。
手放す際、このことを伝えていないのか、あるいはオーナーチェンジして、その方が手放す際に言わなかったのか・・・本当のところはわからないです。
(当店でも、エンジンを開けたらボアアップされていて、現オーナーさんは知らなかったという事はあります)
それにしても、ひどくないですか?
アメリカなどでは、他社のピストンを流用することはよくあるそうです。
流用自体は悪くないですが、その事実を売却時に伝えないことや、そもそもちゃんと流用できていないことが問題だと思います。(ただ、組んだだけの状態)
シリンダー内部は傷だらけです
シリンダーライナー(スリーブ)は「打ち換えてほしい」というリクエストをいただいているので、いずれにせよ交換します。
ライナー交換後、ヨシムラ製鋳造ピストンを組みます。
クランクケース
シフトドラム
クランクケースを開けて、目に付いたのは残留ガスケット。
ピストンが交換されているということは、過去にエンジンを開けているわけですが、その時、きちんとガスケットを剥がしていなかった様子。
古いガスケットが残ったまま、新しいガスケットを入れたらしく、サンドイッチ状態でした。
ただでさえ、簡単にはがれないガスケットですが、余計はがれにくくなります。
といっても、地道にはがすしかありません。
この作業だけで1日〜2日かかることがあります。
クランクシャフト
トランスミッション
シリンダーヘッド
シリンダーヘッド
燃焼室のカーボンは比較的、多めといえます。
※上下とも、おなじ写真です。見えるよう明るさのみ調整しています。
若干、陥没している箇所がありました。
シリンダーヘッドは面研をおこないますので、機能的には問題ないかと思います。
排気側(マフラー側)
よく見ると、エンジンを塗装しているようです。
エンジンを組んだまま、塗装したのでしょう。ボルトの頭に黒い塗料が付いています。
この年代の車両ではお約束ですが、ボルトはすっかり錆びて固着していました。ガスケットもそうですが、こうした錆も磨いて取り除きます。
インシュレーター
劣化して割れています。これ自体、めずらしくないのですが、インシュレーターにオレンジ色の塗料みたいなものが付いていました。
オレンジ色の正体は液体ガスケットです。しかも大きく、はみ出しているので、流速にも影響してくるかと思います。
インシュレーターはよく、「割れていなければ再利用できるだろう」と思われがちです。
新品時はゴムですが、徐々にプラスチックのように硬くなり、写真のように小さなひびが発生したり、割れたりします。
(割れたところから空気が入り込み、エンジンの調子が悪くなります)
環境や使用状況によりますが、早い場合、5年もたたずに割れたという事例もあります。(純正部品を使用)
消耗品と割り切って、交換したほうがいいでしょう。ピストンの件はさておき、全体としてはそれほど悪くない状態です。
(日常的によく見る光景)
いつもどおり、しっかり仕上げていきます。
パート2
フレーム・スイングアーム塗装
パート3
車体の組み立てから完成まで
有限会社ガレージ湘南