ギャンゴの日 その2
メディアにさまざまなギャンゴが登場しています。
一番のヒットはマルサンのソフビです。ベムラーが出ないでギャンゴが出たのは不思議な気がします。
ぼくはいつになったらベムラーが出るのか、本当に待ち遠しかったんですが、ついに出ず、ブルマァクになって、あまり似てないベムラーが出ました。70年代になると年齢が上がって生意気になっていて、もう出来の悪い怪獣に興味がなくなっていました。
逆に、メカニコングやガバラはすごい!と思って、その頃は妹が買ってもらっていたので、借りてしげしげと見入りました。決して取り上げていませんからね。
子供なりの見栄もあったしブルマァクとなればぼくは小学三年生、1970年は万博は行きたいし、ボーリングも楽しみたい。スケートも流行って、品川や後楽園まで親に連れて行ってもらいました。ま、贅沢ですよね。
そんな時代、いったん卒業した怪獣へ目は行きません。それなのに新番組が始まると火が付いてすべての興味はそこへ集中します。
ソフビ怪獣は幼稚園の頃のように絶対にないと困ると言う事がなかったのはプラモデルを作り始めていたから。
さすがに買ってもらう事はありませんが、三千円ほどの海外のバイクの模型に憧れました。箱を開けてはうなりました。それの塗料の指定がメタリックオレンジで、ラッカーの瓶を見ると、すごい色なんです。
かつてガラモンのソフビでメタリックブルーに衝撃を受けた身としては、メタリックオレンジ、それにクリアーオレンジは、さらに愕きを感じるものでした。
そんな中で、ラゴンの特大サイズや、ゴジラのジャイアントはどうしても欲しかったのが本音でしたが、今度は10歳の見栄との戦いです。
あんなデカイのがぶら下がって売っているって、今では考えられません。
結局、怪獣はあきらめ、変身サイボーグは手に入れました。ジャンボマシンダーも欲しかったんですが、微妙に年齢層が下なんです。
その判断に、自分で打ち克ったとしても、あんなのが部屋にあったら親が血相を変えます。
親に隠れて買ったものと言えば、生まれて初めて自分で買ったLPレコード、「仮面ライダーヒットソング集」でした。
「ライダーアクション」が劇中で初めてかかった時、こ、これはなんだ! こんなカッコイイ曲、聞いた事がないとレコード屋さんへ突入しました。
そのころ、アイドルブームにもなりましたから、今度はそっちですよ。レコード屋さんに日参です。
年齢とともに嗜好も変化。下も出来たし、兄として怪獣にどっぷり、というわけにいかない。
ところが、大人の手前、10代後半にふたたび怪獣熱に浮かされると、ジャイアントゴジラなんて、平気でオモチャ屋で買っちゃうんですよ。まだ売ってましたからね。1979年のあの夏のせいです。
もう少し、脱線します。
20代からになると、子供の延長で、特撮ものの本に関われるようになりますが、立体もそのように好きだったので、西村さんのM1号で、マルサン・ブルマァクの補填人形を出し始めた時に、少し原型をやらせてもらいました。
とくに長く欲しかったベムラーを、ギャンゴを改造して作れないものかと思って相談したら、倉治さんがテストショットの、商品より大きめのを持っていると言うのでシリコンをかけさせてもらいました。
量産する際に、ソフビにメッキかけて増し型を作るんです。だから一回り小さい商品が出回ります。
ソフビの原型は、当時は瀬戸物の粘土か、または蝋です。現在でもワックスは使われています。キン肉マン消しゴムの原型は蝋でしょう。
ウルトラQ怪獣を最初にやった人が瀬戸物職人だったため、柔らかい表面仕上げにが特徴になりました。
ソフビは、原型にメッキをかけて、テストショットを抜きます。問題がなければメッキの周囲をもっと蒸着して厚みを出します。中の原型がワックスだと熱で溶けます。溶ければ原型は残りません。
瀬戸粘土にそのままメッキをかけて水に浸けて粘土を溶かして抜いたんでしょうね。シリコンで複製してそこへ狼を流すのが現在のやり方です。
ギャンゴも原型は残りませんから、量産は、ソフビを原型にするわけです。
ギャンゴはあろうことか最初に尻尾をつけてしまってNGとなり、ソフビの尻尾を取って加工したものを原型にしたため、親型より小さい商品がすべてとなりました。お尻の形の違うものもあるようです。
NGとはいえ、尻尾付きのギャンゴなんて、そのままベムラーになるじゃないですか。
と言う目論見で、マルサン風のベムラーを作りました。
マルサンのヒントを活かすつもりで、ラゴンは、ガラモンと同じ顔つきにしてみました。
リトラも同様に、ゴメスの顔です。こっちは夫婦のようなつもりでした。
樹脂をベースにポリパテでやったので、いま見ると硬めですね。もっと線を柔らかくした方が良かったです。
ギャンゴはマルサンに喜ばれて、電動歩行のプラモデルにもなりました。
耳(角)、腕、脚が動きます。
90年頃に、箱入り未組み立てのデッド品が300万円と言われました。
時期としては「ウルトラマン」の再放送の頃で、レッドキングともども、ウルトラマン怪獣の最後の商品です。新番組「ウルトラセブン」が始まるので、新製品はみんなセブン関係に移行したからです。
そのせいか、ギャンゴもレッドキングもそんなに売れてないです。ぼくは商品を見ていません。街のオモチャ屋まで下りないで、山の手のデパートに並べて終わりだったんじゃないかと思います。
それで数が少なくて高額になりましたが、ノスタルジックヒーローがソフビで復刻しました。プラモデルの原型は木型を使うようですから、ソフビのギャンゴと印象が変わります。そこが良いんです。
ここではギャンゴの商品を集めてみました。
【図版】
・66年9月発行、現代芸術社「ウルトラマン 怪獣カード」から、成田さんのギャンゴ。
・67年5月発行、勁文社「怪獣大絵巻」から、部分。宇宙からの来訪者の群れにギャンゴ。成田亨筆。
・その付録のカードから。足形もイイ感じです。成田さんの絵。
・ギャンゴの絵でもっとも有名なのは、朝日ソノラマ66年10月の「怪獣大図鑑」の南村喬之のこの絵でしょう。
・石原豪人の艶っぽいハヤタ、はともかく。ギャンゴとジラースが表紙は現代芸術社「ウルトラマン・怪獣 きりぬき仮面」から。67年3月。
・豪人先生の口絵は「ぼくら10月号」から。マルサンのギャンゴの手がコレなんですね。この絵から作ったのか?
・講談社「少年マガジン 9月11日号」の巻頭特集から。梶田達二の絵。自走式のメーサー。
・ショウワノートの表紙、お馴染みの梶田先生。
・現代コミックス「ウルトラマン 12月号」の口絵は藤尾毅。ギャンゴ、すごい事になっています。
・シスコのパッケージのいくつかに登場したギャンゴ。右は版下入稿用のポジから。中央の人形がウルトラマンと合わせて2つで1組、ガムの当たりでもらえました。右下、TBSビデオサービスプロの絵は再放送時の販売。
・マルサンが出した「ウルトラマン」最終兵器。電動歩行ギャンゴのボックスアート。関口猪一郎の絵。東京タワーがあるのは初稿で、ぶっこぬいて武器にするから。
・その完成品。昔のヤフオクで拾った画像であいすいません。耳のアンテナ、ちゃんと回転します。両腕を振りながら歩きます。オレンジ色成形ですね。再放送の頃の商品。
・67年、「たのしい幼稚園 1月号」から、河島治之の挿し絵、金城哲夫の文章による絵物語から。鬼田、圧殺! どうするンだ!?
・トイマークの「ウルトラマン ゴールデンヒットゲーム」。関口さんの絵。トイマークはこの手のガンをたくさん出しました。放映中の商品です。
・68年の正月商品の、こいでのえあわせ、「怪獣」。表紙も中の絵も前村教綱。
・おまけに。当時物の例外として、M1号でやらせてもらったマルブルタイプの原型の商品の比較。
上の段、左から、マルサンのNGの尻尾つきギャンゴ、M1号のベムラー、ブルマァクのベムラー。
下の段、左、マルサンのゴメスとM1号のリトラ。
右、M1号のピグモン、マルサンのガラモン、M1号のラゴン。