王国旅行記 ~補追篇:「忘れられないひと言」~ | 季節の横顔

季節の横顔

昭和10年に刊行された祖父の随筆集『季節の横顔』によって,昭和初期という時代に生きた人々の様子,また時代を超えて共通する想いなどについて語るブログとしてスタート。
・・・今では単なるつぶやきノートです。

初日の夜のこと。

父親がお風呂に入っている間に、

た~ぴんにこう謝った。


「た~ぴん、ごめんね。

お母さん、ちょっときつく怒りすぎたことがあったね。

あんな風に言わなくても良かったなぁって反省してるんだ。

た~ぴんがずっとイガイガの言葉を使うから、

優しくお話ししなくちゃと思っていたのに、

だんだんイライラしてきちゃって、

ついついお母さんまでイガイガの言葉になっちゃったよ。

ほんとにごめん。」


すると、

た~ぴんは私の肩に手を回して、

もう一方の手で私の頭を撫でながらこう言った。


「いいんだよ、お母さん。

ボクはお母さんの気持ち、よくわかるもん。

ボクもいつもイライラしてるから、

よくわかるよ。

だからいいよ、お母さん。」


心の底から癒されるような優しい声である。


乱暴なこともするし、

ここ半年くらいは、かなり乱暴な言葉遣いも目立ってきた。

でも、根っこのところでは、こんな風に優しい子なのだ。


正直言って、本当にしんどい子育てだった。

どこの親もみんなそれぞれ苦労しているとは思うので、

私だけが特別大変だということではないのはわかっているけれど。

でも、時折かけてくれるこの優しい言葉が、優しい声が、

いつも力を与えてくれてきた。

ありがとうね、た~ぴん。


た~ぴんは、私の頭を撫でながら、さらにこう言った。


「これで、お母さんもボクの気持ちよくわかったでしょ?」