王国旅行記 ~初日篇~ | 季節の横顔

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昭和10年に刊行された祖父の随筆集『季節の横顔』によって,昭和初期という時代に生きた人々の様子,また時代を超えて共通する想いなどについて語るブログとしてスタート。
・・・今では単なるつぶやきノートです。

クリスマス・お正月を終えて、

冬休みの最後のイベントは、TDRへの家族旅行。

た~ぴんがサンタさんにお願いした、

「TDRのチケット2週間分」にはほど遠かったけれど、

2泊3日の、我が家にしてみれば豪勢な旅行である。


家を朝7時過ぎに出て、TDR到着は11時ちょっと過ぎ。

初日は“ランド”をまわることに。
“ランド”の方は、私は東京在住だった7年の間に結構通ったクチだし、

2年前に3日間すべて“ランド”で楽しんだこともあったので、

特にコースを練ることもなく、

た~ぴんの好きなようにまわろうと言うことになっていた。


まずはお昼ご飯。

家を出る前に、朝ごはんをテキトーに済ませただけだったので、

3人ともおなかがペコペコだったのである。

きちんと食べたかったので『ブルーバイユー』へ。

父親も私も大好きな『カリブの海賊』の入り口が見渡せるレストランである。

最近はた~ぴんも

『パイレーツ・オブ・カリビアン』が大好きなのでいいんじゃないかと思ったのだけれど、

やはり平日とはいえ冬休み。少しは並ばなければ入れない。

た~ぴんはここで既に不満タラタラモードに。


教訓その1 

空腹はイライラをさらに倍加させる→一口チョコなどを携帯して、腹ぺこイライラ虫を鎮めよう!



食後は、その流れで『カリブの海賊』といきたいところだが、た

~ぴんが「ダンボに乗りたい~!」というので、ファンタジーランドへ向かうことに。
It’s a small worldのFPをとってから、『ダンボ』・・と思いきや、

た~ぴんは「やっぱりティーカップ!」ということで、『アリスのティーパーティ』。


余談だが、私は小学校低学年の頃から『アリス』の大ファンだったので、

アリスと言えばテニエルの描くもののイメージが最強!

だから、ディズニーのアニメのすばらしさは認めるのだけれど

(特にラストのトランプの兵隊の行進はスゴイ!)、

いまひとつディズニーのアリスには感情移入できない。

ちなみに一番のお気に入りのシーンは、名無しの森での白の騎士との件(くだり)。


閑話休題。
食事の前に並んで、この『アリスのティーパーティ』で本日2度目の行列。

20分程度のものだったけれど、

傍で見ていてもた~ぴんがいらついていくのがよくわかった。

よくわかるし、予想もしていたけれど、やはりブツブツ文句を言われ続けるのはツライ。

いや、た~ぴんの方がはるかにツライということも、

今こうして落ち着いて考えればよくわかるのだけれど、

お出かけ中にそれをやられると、こちらの精神状態もみるみるうちに疲弊してゆく。


教訓その2 苦手だとわかっていることをさせる方が間違い。

行列が苦手なのだから、行列させないような楽しみ方を考えてやるべき。



それでも、どうにか順番が回ってきた。ほっ。
た~ぴんは、「まわすの、僕にやらせて~」との宣言通り、

ぐるんぐるんとものすごい勢いでカップを回し始めた。

や・・やめて・・との声も出ないくらい。

思わずのけ反ってしまったら、遠心力によって、さらに頭がぐらんぐらんに。

耳から脳みそがほとばしり出るかと思ったが、

相方が「頭を中に入れなきゃ」と声を掛けてくれたおかげで、なんとか無事だった。


そして、た~ぴんもお気に入りのIt’s a small worldへ。

FPはとっているけれど、やはりいくらかは並ばなければならない。

すると「なんで並ばにゃあいけんのんよ~!!(怒)」。
ごめんね。

でも大好きな乗り物に乗るためには、

少しはがまんしなくちゃいけないんだよ。

と声を掛けながらも、

た~ぴんの楽しみのためにここに連れてきたつもりだけれど、

本当はた~ぴんは楽しくないんじゃないか、

親の自己満足、あるいは自分が楽しみたかっただけなのか?

などと、心の中で罪悪感もふくらんでくる。


けれど、順番が回って来さえすれば、

た~ぴんは最高の笑顔で最高に楽しんでくれるのだ。

この絵が見たくて、悪口雑言に耐えているようなもんだ。


前回来たときも、このIt’s a small worldは大喜び。

前回はクリスマス直前だったので、

内容的には同じバージョン(クリスマスソング)だったけれど、

瞳をキラキラさせて楽しんでくれた。


It’s a small worldの後は、やはりお気に入りのToon Townへ。

ところが、パレードのための通行規制で進めない。

あと何分で通行規制が解除されるのかわからないので、

別ルートを行くかどうかの判断もできない。


こういう「あてもなく待ち続ける」というのは、

オトナにとっても嫌なものだけれど、

た~ぴんは疲れと喉の渇きもあってバクハツ寸前。

ここに至るまで、確かにた~ぴんはサインを出していた。

助けを求める言葉も発していたのだが、

私と父親に対してそれぞれ別々に言うものだから、

私たちがた~ぴんにかける言葉の内容も違っていて、

それに対する戸惑いやイラツキもあって、かなり険悪な状態に。

父親が飲み物を買いに行っている間、

イライラとワクワクの両極を行ったり来たりしているた~ぴん。

いや、両極ではないのかも知れない。

究極のワクワクもた~ぴんにとってはストレスなのかも知れない・・などと、

ドクターやカウンセラーの先生の話を、頭の中で反芻していた私だった。

やがて父親が飲み物を携えて戻って来て、規制も解かれ、ようやくお目当てのToon Townへ。


ディズニーチャンネル大好きのた~ぴんなのでここははずせない。

並ばなくてもフリーで遊べるのが、た~ぴんには一番のようだ。

発達障害の子どもの精神年齢は、

定型発達のお子さんの2/3くらいであるということを何かで読んだような記憶があるけれど、

時折おっそろしくオトナなコメントを発する割には、

ここでの遊びっぷりは、2年前の前回と殆ど変わらない。
これまでの教訓に従い、

行列の出来ているミッキーやミニーの家、

ロジャーラビットのカートゥーンスピンなど、

行列が伸びているものには目もくれない。

特に何かのアトラクションに入る訳でもなく、

雷鳴とどろくドアノブとか、牢屋からのくぐり抜けだとか、

片っ端から触ったりして遊びまくる。

それこそ、一瞬もじっとしていることがない。

最初はそばに着いていたけれど、

しばらくしてから父親も私も近くのベンチに腰掛けて、

あたりを行ったり来たりするた~ぴんを眺めていた。


今シーズン、冬用のジャケットを新調してやったのだが、

今回の旅行のことを考えて「黄色」のものにした。これは大正解。

黄色いジャケットの子どもは意外に少なく、

ちょっと姿を見失っても、黄色いジャケットを頼りにたやすく見つけることができた。


3時を過ぎると急に夕方モードが色濃く迫ってくる。

小さなピザとポテトと飲み物でおやつをすませ、

未練タラタラのた~ぴんを促して別のゾーンにも行ってみることに。


た~ぴんのもう一つのお気に入りは、スイスファミリー・ツリーハウス。

高いところが大好きなた~ぴんにとっては、最高なんだろうな。

前回も何度も何度も登っていたのだが、

最後のあたりで「お母さんは下で待ってるよ」と言ったのを良く覚えていて、

「今度はお母さんと絶対に登るんだ!」という。

実は私は高所恐怖症。

まあ、この程度ならなんとか登れるけれど、あんまり気持ちよくない。

「お父さんといってらっしゃいよ」というと、

意外に素直に「ウン」と言って二人で入っていく。

ところが出てきたのはた~ぴん一人。

「あれ?お父さんは?」と訪ねると「知らん」。

てけてけ走りまくって一人で登って一人で降りてきたらしい。

しばらくして父親も出てきたが、今度は一人で行ってくると再チャレンジ。

ほっとくと再々チャレンジ、再再々チャレンジと果てしなく続きそうなので、

「よし、次はカリブの海賊にしよう!」と声を掛ける。

「お母さん、登らんの?」というので、「次に来たときは絶対に登るよ」と約束する。


カリブの海賊の人気ってどうなんだろう?

意外に行列が短かった。

そうは言っても25分待ちという表示は出ていたけれど。


この辺りに来ると、3人ともかなり疲れてきているので、

みんなちょっとしたことで不機嫌大爆発になりそうな嫌な予感。

おまけに父親は、よりによってこの日に風邪のピークを迎えていたのである。

しんどいのを一生懸命に堪えて、

た~ぴんの悪口雑言をおだやか~に受け流して、

楽しい方向に持っていこうと、

それはもう涙ぐましい努力である。

父親の愛である。


「DS、やっぱり持ってきてやれば良かったかなぁ」

とぽつんと言った。


確かにヒマつぶしには持ってこいだけれど、

父親としては「王国」にいる間は、

それ以外のキャラの雰囲気を持ち込みたくなかったのだそうだ。

私がた~ぴんに持たせたピングーのリュックも許せないようだった・・・。

意外にこだわるんだな。


行列の半ばに来たあたりで、た~ぴんが鼻血を出す。

鼻をつまんですぐに止血したが、

何度も行列に並ばされるわ、鼻血はでるわで、ホント、気の毒になってきた。


が、やはりボートに乗ってしまえば、最高の笑顔。
父親も大好きなアトラクションというだけあって、ノリが良い。

最後の牢屋のシーンでは、鉄砲に打たれたフリまでしていた。


夜の花火も見たかったけれど、

全員の心と体の健康のために早めにホテルに戻ることに。


パークを出てふと空を見上げると、見事な十六夜の月が出ていた。

丁度、街灯がまん丸で、色合いもそっくりだったため、

街灯のうちの一つが空まで飛んでいったような眺めだった。


ホテルはO―クラ。

夕食を済ませ、父親の風邪薬を買うためにロビーの売店へ。

父親が買っている間、た~ぴんと二人でロビーにいると、

ちょうどパークの花火が上がり初め、

ガラス窓越しではあるけれど、よく見えた。
た~ぴんも瞳を輝かせ、口をぱかっと開いたまま(^^;)、

じっと花火に見入っている。

た~ぴんの瞳をのぞき込むと、

花火の輝きが映っていて、なんとも忘れられない名シーンであった。


ところが、その瞳に映る花火の輝きが、ゆらゆらっとうるんだ。
え?泣くの?とちょっとびっくり。
するとた~ぴんは口を開いて、あ、開いたままだったけど、
目に涙をためながらこう言った。


「ねえ、おかあさん。
もしおかあさんが死んだら、
ボク、ここの人になって働く。」


ええと。
おかあさんが死んだら・・なの?
なんで、私が死ななきゃいけませんの?
まあ、いつかは死ぬんだけれど・・・。

なんでここで「死ぬ」なんてことが出てくるの?

そこで、はっと前の晩のこと を思い出した。


いろいろ突っ込んで聞いてみたい気もしたけれど、

光の雨のように降り注ぐ花火の美しさの余韻を楽しむために、

その好奇心は封印。


父親は熱が上がってきたらしく、すぐに休んだ。

た~ぴんもすぐにバタンQ。


一人残された私は・・・全く眠れない。

そこで、二日目のディズニー・シーの攻略法を、

今日の教訓と、ガイドブック、

そして友人にもらったアドバイスによって練り上げたのだった。

で、ベッドサイドの灯りを消したのは、

3時半をまわっていた。