『焙煎は、我を捨てて豆に従うことが大事です』

▼『低温焙煎』を解説する!no,27

 

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私の焙煎職人としての41年間は『数えきれないくらいの焙煎の失敗例と成功例』の積み重ねですが、この数年、強く思うことは『焙煎は、我を捨てて豆に従うことが何よりも大事』と言うことです。

 

私の『低温焙煎』という焙煎方法には『焙煎の型』とも言うべき『理想の温度上昇曲線』と言うものがあります。

何万回もの焙煎体験の中から導き出されてきた『一つの法則』と言えばよいでしょうか。

コーヒー豆が上手く煎りあがるための『理想の焙煎フォーム』です。

 

日々の焙煎は『理想の焙煎フォーム』に沿うような形で進めていくのですが、そうそう理想通り簡単に運ばせてくれないのが、これまた焙煎の難儀なところです。

 

なぜなら生豆は農産物なので、同じ品種の生豆といえども1袋ずつ、生豆の品質(水分量・生豆の実の詰まり具合など)が微妙に違います。

更に、季節が違えば当然ですが、同じ季節でも日々の外気温や天候も違います。

焙煎は、周囲の環境変化を敏感に反映する作業なのです。

 

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具体的な例題を示してお話してみましょう。

『低温焙煎の理想フォーム』は、

① 保有熱の調整が整うと焙煎窯の温度を『160度』まで上げます。

 

② 『160度』で生豆を投下して『155度』で火力に点火します。

 

③ 今の時節ならば『135度』で温度が安定するように火力調整をします。

 

④ 焙煎窯が『135度で安定』したら、ガス圧90の火力で焙煎をスタートします。

 

⑤ 焙煎スタートから『約5分30秒・温度150度』に達したら、生豆の繊維が緩んできたのを確認してガス圧100の火力にバーナーを強めます。

 

⑥ 焙煎スタートから『約6分30秒・温度155度』に達したら、更にガス圧105に火力を強め、生豆が少し膨れてくるのを確認します

 

⑦ 焙煎スタートから『約7分30秒・温度160度』に達したら、更にガス圧110に火力を強め、生豆の青みが減退し更に膨れてくるのを確認します

 

⑧ 焙煎スタートから『約8分30秒・温度165度』に達したら、更にガス圧115に火力を強め、生豆がしっかりと膨れ豆が青味から白っぽく変化してきているのを確認します。

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簡単に解説すれば、以上が焙煎初期の『理想の温度上昇曲線』です。

全ての焙煎がこんな形で絵に描いたように進行してくれたら楽勝なのですが、生豆の品種によっては、全く違う『温度上昇曲線』を描く生豆も多々あります。

 

そんな時、若いころは『強引に理想の形に無理矢理合わせるような焙煎』をよくしていたのではないかと思います。

結果は、芳しい結果でないことは明白です(笑)

『生豆が違うと言っている声』を聴かずに、自分勝手な思い込みで焙煎をしているのですから当然の結果です。

 

『理想の焙煎フォーム』という一つの型は、確かにゆるぎなく存在しています。

ですが、その型に必要以上に縛られていては『生豆が発している無言の声』は聞き取れないのです。

 

焙煎職人の役割は『生豆が発している無言の声』に謙虚に耳を傾け、適正なタイミングで適正な熱量を与えることなのです。

焙煎の最終段階では、大体において同じような形でゴールしていることが多いです。

 

煎りあがったコーヒー豆を試飲して『美味しいコーヒー豆』に煎りあがっていたら、それがその豆の正解の煎り方なのです。

途中の寄り道は、ご愛敬というか『その豆の持つ個性』と理解してあげることが大事なのだと思います。

人がそれぞれに違う個性を持っているように、珈琲の生豆も少しずつ違うのです。

 

焙煎と言うのは、未だによく判らない興味の尽きない面白い作業です。

 

 

 

 

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