がんフーフー日記 -84ページ目

ショーガナイ星から来た

ダンナである。




本日、見舞ってきた。


入院しているのは以前と同じR病院6F、

前回の相部屋の対面に名札が出てるからすぐわかった。


調子はあんまりよくなさそうである。


昨日は熱がまた39度近くあがったというし、

腹痛がひどそうで、食欲もほとんどない。

また嘔吐するんじゃないかという恐怖で、

ものを口に運ぶのが臆病になるのだという。


点滴も復活した。

白血球の減少を抑える注射もした。


いま一度、体力と白血球の回復を待つという状態だ。

なんとかIRIS前、GWの頃のような状態まで戻れるといいのだが。






ショックだったのは、抗がん剤の反応があまりに早かったことで、

それは私も、きっとヨメはもっと、

なかなか事態を受け入れきれずにぼうぜんとしてしまっている。





昨日も書いたが、

月曜は私たちの結婚の保証人になってくれた方の命日だった。

一周忌である。


私たちは、その人のことがとても好きであった。

だから、2人して保証人にお願いしたのであって、

それは1年前のあの日、突然の電話でその死を知ったときの

驚き、痛み、なんていって言いかわからない鈍痛をともに共有し、

もしかしてその後、私たちの絆を強めてくれたのかもしれなかった。


月曜の夜、私はビールを開けて、

ヨメとその方についての話をした。

思い出話でもあるような、まだもやもやとくすぶる想いをつつくような

静かで親密な時間だった。




ふと、あれからずっと「しょうがない」とつぶやいている気がした。



死んじゃったことは、しょうがない。

残された人たちはがんばっていかなきゃ、しょうがない。

もう会えないのも、しょうがない。

ヨメの再入院も、しょうがない。

熱が下がらないのも、しょうがない。

ぺ~が泣き止まないのも、しょうがない。

給料カットも、しょうがない。

顔でかいのも、しょうがない。

これが運命なんだから、しょうがない。

神様はその人が背負える苦しみしか与えないから、まあ、しょうがない。



しょうがないことは、あれこれ言っても、しょうがない。

すべては気の持ちようだから、落ち込んでてもしょうがない。



まあ、そりゃそうなんだけどね。

そんなのわかってるんだけどね。



そんなふうに、実に大人に対処している自分を、

クラスの端っこ、窓際にいるようなはぐれた自分が、ケッと一言。


「そんな、しょうがないしょうがない言うて……

 あんたはショーガナイ星から来たショーガナイ星人かいな」




恵比寿駅前あたりでひっくり返って、いやだいやだとわあわあ泣いてみたら、

なにかひとつくらいは、引っくり返してくれんかしらん。


なんもかんもがシュクシュクと、物分り良すぎるのもどうなのかと思ったのだ。





恩人の一周忌のその日、

1年間ずっともやもやしていたけれど、

やはり会えないのはつまらない、

今おこってるいろんなこと、ぽつぽつとでも話して、聞いてもらって、

いつものあの声で「いい経験しとるのぉー」と笑ってほしかった、と思う。





「長生きしようぜ」





その夜、ビールを呑みながらそう言うと、ヨメは驚いていた。


「長生きしてくれんと、わしもぺーも、つまらんからな」


しょうがなくないものが少しでもあるのなら、

それを声に出して、投げかけてみる。




「長生きしようぜ」





無力かもしれないが、本当にそう思うのだ。