流域治水はみんなが主役 嘉田由紀子参議院議員より |  みどり色の地球

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日本熊森協会埼玉支部主催の講座『水への畏敬、そして備え~流域治水はみんなが主役~』で嘉田由紀子参議院議員より滋賀県知事時代(2006~2014)の治水対策についてお話をお聞きしました。記念写真の服装からもわかりますが、かなり時間が経っての報告です(^_^;) 

しかし、私の治水についての考え方に共通することも多く、記事を完成させてお届いたします。
(完成までたどり着けなかった数々の報告書があるんですよ~💦)

 

流域治水は国が動き、今やっと各自治体で取組まれるようになってきています。滋賀県で2006年で流域治水を条例化したのは非常に先駆的な取り組みだったのです。嘉田さんのお話を聞くたびに活かされた「政治の力」に勇気が湧きます。こんな政治家になりたい!といつも強く思わされるのです。

左からタレントの半井小絵さん、熊森協会埼玉県支部長の池田幸代さん、嘉田由紀子さん、岩田です。

 

埼玉県出身の嘉田さん 滋賀県へ

嘉田さんの出身は埼玉県本庄市です。農家の生まれで、麦・米・野菜、ヤギ、ニワトリなどを飼い、自給したくらしをしていました。修学旅行で琵琶湖と比叡山に出会い、滋賀県での暮らしを決意したそうです。今では、ご自身の家の前の琵琶湖で歯を磨き、水を飲んで暮らしているのだそうです。アマエンドウ、カワラナデシコが咲き乱れる自然の美しいところで暮しています。

 

水の研究をするなら「日本」

1971年 ローマクラブがこのままでは地球が持たないと発表し、成長への限界を確信。アフリカへ渡り研究。タンザニアの村でコップ一杯の水、一皿の食事の価値に目覚めます。結婚後、水の研究なら日本に戻るといいというアドバイスの元、水と共存する仕組みとして水田農業の研究を促されたそうです。ちょうど私が生まれた年です。

 

新しい治水を条例にー流域治水ってなにー

川の中だけでなく、川の外でも治水することが必要です。川の外とは私たちが暮らす住宅地、道路、公園、学校、工場…町丸ごとで治水に取り組もうというのが流域治水です。

「嘉田マニュフェスト2006」は200億円以上かかる6つのダム建設計画について凍結することでした。「川に流す」「雨を溜める」「地域で備える」ことで被害を最小限にとどめること、これが行政の仕事だと断言されました。

「滋賀県流域治水の推進に関する条例」平成26年3月31日条例公布

この条例を作る時に「この条例出来なきゃ、また次に選挙に出るで~」と圧を掛けたという話には笑ってしまいました。

 

なぜ流域治水政策が必要か

地域防災力が低下しています。

水を逃がす思想がなくなって、川に閉じ込める手法になってしまっていることが一つ問題です。また、都市化により危険性の高い田んぼだった場所に人家があれば被害にあうのは当たり前です。水田にできた宅地に何のためらいもなく住みつく人々。それを「無防備な住民」と表現していましたが、その「無防備な住民」が増大しています。水田を宅地化することが望まれ、霞堤防内に新興住宅団地をつくることを国が許可していることは愚策としかいえません。


行政が歯止めをかけるしかない!

2020年8月28日不動産屋さんは不動産取引の際、ハザードエリアであることを説明することが義務化されました。しかし、これまでに水田にできた宅地に移り住んだ多くの居住者達は、自分たちがリスクある場所に住み着いた自覚もありません。住む前に知らせるのではなく、開発する前に止めなくてはならないというのが嘉田さんの姿勢であり、私の姿勢です。都市再生特別措置法などやっと規制が入りはじめ、イエローゾーンは市街地にできなくなりました。しかし、福祉施設などは建設できます。埼玉ではそうしたところに作られた福祉施設で被害もありました。
国はイエローハザードゾーンの開発を規制する法律を作ったものの、地方自治体からの強い要望で開発の余地を残す条件として、避難所への行けることや水が上がらない高さに建物を作ることなどを条件に開発規制を緩和することもできるようにしてしまいました。これでは無防備は住民を増やしてしまいます。

 

見沼の土地に制限をかける知事

1956~1972年に埼玉県知事に就任していた栗原浩知事はとても偉い知事だったと話されました。

江戸時代初めに徳川家康が利根川東遷で江戸川の水を東京湾から銚子に水を流れるようにしました。治水には功を奏しましたが、農業用水が不足するようになります。江戸時代中期、貯水量の確保のためにできたのが見沼田んぼでした。利水と治水がセットになっている場所なのです。

 

昭和33年、関東平野は狩野川台風に見舞われます。川口市街の浸水による被害は散々たるものでしたが、見沼田んぼの下流は被害を免れました。見沼たんぼがしっかりと水を溜めてくれたのです。そこで見沼三原則をつくったのが栗原知事でした。地権者の権利を制限することになるため、地元の農家には悪口をさんざん言われましたが、政治的英断をくだしたのです。田んぼを緑地として保護するために線引きをして開発をさせなかったのです。

 

無防備な住民を作らないようにしよう

その後、ゴルフ場を作ろうと開発派と組んだ知事もいました。どうしても開発というものには、利権との駆け引き、土地所有者との対立構造等が生まれます。しがらみ故に地元ではなかなか英断はくだせないものなのでしょう。田んぼをアスファルトにすると5倍の水が出るともいわれています。国が国民を守るために決めたルールを、国自身が緩めることなく、そして県は各市町村がちゃんと住民を守れるように指導する必要性は非常に高いなとつくづく感じました。

 

地球温暖化時代のリスクに生活者として対応するには

今年は「地球沸騰化」という言葉が誕生しましたが、温暖化で豪雨が増えています。2015年国家予算1兆円を超える水害が2015年以降増え続けています。

昔は堤防を直すのに一坪当り1000円、2000円の住民負担があったそうですが、昭和20年代にキャサリン台風があってから、治水が進むように公費になりました。

しかし、河川整備は遅れ、限界にきています。

水防には土地利用と建築規制が必要です。2020年には不動産取引においてその土地のハザードについての説明が義務化されました。しかし、既に住み着いた人々は自覚がないままです。避難行動に遅れがでないように地域防災を向上させる必要があります。

 

流域治水の基礎情報「地先の安全度マップ」

1級河川は国の管理、2級河川は県の管理、しかし住民にとってはどれも同じです。本川に行く前に支川が反乱します。子どもは30㎝の浸水で溺れ死にかねません。車も川に落ちます。3mの浸水は1階の天井を超え溺死します。2階なら助かります。

昔は住民自身が知って備えていたものですが、今はほとんどの人が水の流れに関心がありません。川からの距離はどのくらいなのか、水はどのくらい出るのか。知らない人が増え、どんどん無防備で、水害に脆弱になっています。

住民目線で安全度マップを作る必要があります。今でこそ想定浸水深を示した電柱は至る所にみられるようになりましたが、滋賀県は早かった。滋賀県だけが身近な水路の氾濫を考慮していると話されていました。

 

生死を決める流域治水はみんなが主役

嘉田さんは令和2年の球磨川氾濫の現地調査をくまなくしました。球磨川50名の溺死者調査からわかったことは「平屋」「高齢者」「一人暮らし」がキーワードだということ。溺死した6割が平屋建てでした。球磨川流域では24時間で500ミリの雨が降りました。死者は 八代市で4名 熊村25名 人吉市で20名 さらに下流で総数50名。溺死者一人ずつ、避難状況など、つぶさに聞き取りをした嘉田さんの報告は壮絶なものがありました。

リスクを低減するアプローチは①ハード②ソフト③ハート。

①はダムや堤防の整備。国や自治体の仕事

②は防災訓練や防災グッズの用意など。自治体と住民の仕事。危ない所には家を建てない等の土地利用はここに入るでしょうか。確実に行政の仕事です。

③のハートには日頃の地域コミュニティ。これがやっぱり欠かせません。これは住民の仕事です。

 

コンクリートで命が救えるのか

球磨川の決壊以後、ダムに頼ららない治水を訴えていた知事の流水型ダム容認を受け、2009年に中止を決めていた川辺川ダムの計画が一気へとすすみました。これで本当にいいのだろうかと疑義はもちろん投げられます。コンクリートの使用量がとにかく日本は多い。砂防ダムやスリットダムの導入もすすめたいと嘉田さんは話されました。

ダム建設事業は地元業者はほとんど潤わず、ゼネコンのみが喜ぶ大事業です。

 

滋賀県流域治水条例の4つのポイント

先人の知恵のリバイバルです。

①「留める」

農地で水を溜める。公園、建物で溜める。時に土地利用規制も。

今あるダムは大事にするが、これ以上ダムは作らない。

②「人命を守る」

生活再建が困難となる被害が起こらないように、流域治水条例24条では10年確率(1時間50㎜、24時間170㎜)で50センチ以上の浸水が想定される土地の区域は新たに市街化区域には含めないこととしました。ただ、市街化区域にはしないけど、宅地化は可能で、福祉施設などが作られやすいです。埼玉県でも被害がありました。

③「備える」地先のハザードマップなど

④「ダムに依存しすぎない」

 

いのちを守るにはどうしたらいいのか

人間の都合の良いようにはいかないのが自然です。

3つの格言をご紹介

●文明が進めが進むほど、天然の爆位による災害がその激烈の度を増す(寺田寅彦)

●山川草木悉く皆成仏す(最澄)

●草木虫魚(来る心)皆成仏

水一杯、アユ一匹工場では作れません。自然の価値を抜きに私たちの暮らしは成り立たないのです。