ダグラス・アダムス「宇宙クリケット大戦争」 | アルバレスのブログ

アルバレスのブログ

最近はガンプラとかをちょこちょこ作ってます。ヘタなりに(^^)

$アルバレスのブログ

1982年発表。
文庫1冊、359ページ
読んだ期間:3日


[あらすじ]
ある惑星から追放されたろくでなし集団(後の人類の祖先)の宇宙船に便乗したアーサーとフォードが到着したのは200万年前の地球だった(前巻の話)。
1人で旅に出たフォードが4年後戻って来て言うには「時空連続体のよどみを見つけた。あれに乗っかればここから脱出できるかも」。
あっちこっちに飛び跳ねるソファの形をしたよどみを何とか捕まえた2人が出現したのは、消滅直前の地球。
クリケットの試合真っ最中の競技場のど真ん中だった。
そこにいたのは、かつて地球を作った設計者の1人、スラーティバートファースト。
彼は銀河系に迫る危機を救うために奔走していた。

今から100億年前、宇宙には自分たちだけと思っていた(と言うかそんな事全く気にした事がなかった)クリケット人は宇宙船の墜落を目撃。
自分たち以外にも知的生命体がいる事を知った彼らはそれが許せないため、驚異的な技術発展の後、全銀河に宣戦布告。
大量のロボット軍団を銀河中にばらまいたため、宇宙は大混乱に陥った。
大量の犠牲の上に何とかクリキット人たちを抑え込んだ銀河系星団は、「そんなに1人がいいなら宇宙が消滅した後に好きなだけ暮らせばいい」と、クリキット星を滞時カプセルに包み込み、宇宙消滅の瞬間まで閉じ込める事にした。
しかし、全滅したと思われていたロボット戦闘艦がまだ残っていた。

100億年の時を越えてロボット戦闘艦はクリキット星解放に動き出した。
滞時カプセルを開けるには鍵が必要で、それはいくつかのパーツに分けられ銀河に散らばっていた。
その1つがクリケット競技の優勝トロフィーだった。
まずはそれをあっさり強奪されたスラーティバートファーストはアーサーたちを伴って残りの鍵のパーツを先に入手するため宇宙に飛び立った…


著者本人も当初3部作と言っていた本シリーズの完結編にあたるのが本書。
銀河存亡をかけた戦いを中心に、いつものメンバーがドタバタを繰り広げるお話で、色々批評があるように、今までの作品ほどハチャメチャな感じはなく、割りと整然とした物語となっています。


とは言え唐突に出てくる人物や事件の中にはおかしなものが多く、そのあたりは楽しい。

たとえばこんなの↓

不本意ながら不老不死になってしまった男は、暇つぶしに全宇宙の人間を名前のアルファベット順に訪ね、一言因縁をつけて去っていくと言うのを永遠続けています。

根暗ロボット、マーヴィンがたどり着いた惑星では、生きたマットレスと会話しますが、この生きたマットレスが妖精的な小動物っぽい設定で何とも可愛い。

生まれ変わるたびに(うさぎやハエや人間や)毎回アーサーに殺される事に気づいてアーサーに仕返しする事を誓ったアグラジャック。

全くかみ合わないアーサーとフォードの会話。

そこにある(いる)のに誰にも気づかれない”他人ごと”フィールドとか、地面に落ちそこなう事で空を飛ぶ方法とか(アーサーが会得)、レストラン内での運動を数値化して作り上げたレストラン数論ドライブを使った宇宙船とか。


時間が行ったり来たりするので前後関係がつかみにくいところもありますが、マーヴィンの意外な活躍やアーサーが最後に見せる主人公らしい活躍など、読みどころも豊富。
書いてないですが、ちゃんとゼイフォードとトリリアンも活躍しています。

原題は「Life,The Universe and everything」なので、本シリーズのテーマになっている”人生と宇宙ともろもろ全て”がタイトルになりますが、本書だけ原題を直訳してないのは、それまでのシリーズのタイトルに比べてインパクトが弱いからなのかも。
急にまじめな本に思えてくるし。


本書にはゼイフォードが若い頃に遭遇した事件についての20ページほどの短編「若きゼイフォードの安全第一」も収録。
こちらもひねくれた面白さのある作品です。