2010年発表。
新書1冊、218ページ
読んだ期間:1.5日


ちょっと前のGIGAZINEの記事で著者の島村菜津さんのインタビューがあり興味を持って買ったのが本書。

エクソシストと言えば1973年公開の映画「エクソシスト」(以前レビューしました)で全世界的にメジャーになり、その後も同種のオカルト映画が後を絶たず、最近ではアンソニー・ホプキンス主演の映画「ザ・ライト-エクソシストの真実-」も日本公開されて、いまだに衰えを知らぬ有名な職種って印象です。

本書では、近年のエクソシストをめぐる状況を中心に、キリスト教とエクソシズムの解説、実際の悪魔祓いのドキュメントなどを分かりやすく解説してくれるものです。
個人的に気になった箇所を羅列してみます。

たとえばエクソシスト養成講座について。
2005年からヴァチカンではエクソシスト養成講座が開かれており、どんどんエクソシストが増えているとか。
今ではイタリアで300人のエクソシストが活躍中らしい。
講座の内容は年1回、5週間に渡り5~6項目を受講。
受講料は全講義で280ユーロ(約3万円)、1コマ35ユーロ(約4千円)。
まぁ、これは初級講座と言う事で、これを終了したから即エクソシストとして実地が出来るわけではないそうですが、それでもこういう事が大っぴらに行われている事が意外。
(まぁ、これはカトリック教会が主体的に運営しているわけではないようですが)

さらにキリスト経の簡単な歴史と現在の状況についての話。
キリスト経信者は全世界で22億人。その内カトリックが11億3000万人、プロテスタントが3億8500万人。
イスラム経信者は15億人、ヒンドゥー経信者は9億人。
キリスト経、とくにカトリックがいかに巨大な勢力なのかが分かりますねぇ。

悪魔祓いの21か条と言うのもあるそうです。
本書で紹介されているいくつかを簡単にまとめると、

(01)高潔で信仰心が深く許可を得た司祭が行う事。
(02)あらゆる知識と豊富な経験を有する事。
(03)簡単に悪魔の憑依を認めない事。
(05)対象者の言動に惑わされない事。
(13)十字架や聖遺物を常に肌身離さず持っている事。
(14)自ら多くを語らない事。
(15)対象者に聞く事は名前、時期、目的などの限られたものに絞る事。
(18)医学的な事柄には手出ししない事。
(19)対象者が女性の場合、家族を同席させる事。
(21)悪魔祓いが完了した後は、対象者を健全な生活に導く事。

(19)なんかは現代的な感じですね。
(15)は映画でもそうですね。
また、日本の霊能力者のお払いでも同じように名前と目的をしきりに聞きます。
このあたりは全世界共通らしい。

2005年に「エミリー・ローズ」って言う映画が公開されましたが、そのモデルになった事件がドイツで起こってます。
悪魔に憑依されたと思われた女性が、結果的に死亡してしまい、悪魔祓いをした神父が有罪になってしまったと言うもので、
これによりドイツではエクソシストがいなくなってしまったとか。

今のローマ教皇はエクソシスト擁護派だそうで、2000を超える全世界の教区1つに1人はエクソシストを置きたいと言ってるそうです。
いまのところ日本人エクソシストはいないそうですが、近いうちに生まれるかもしれない。
そうなったとき、日本の狐憑きとどう共存していくのか楽しみですなぁ。

ちょっと難しいところもありますが、中々興味深い本でもあります。
「ザ・ライト-エクソシストの真実-」を観る前の事前知識として読んでおくのも良いかも。
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