賭博罪の要件ー相互的得失 | 麻雀プロ弁護士津田岳宏のブログ

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「賭博」という言葉の意味が分からない人はいない。
しかし,刑法上の賭博罪の要件を正確に理解している人は非常に少ない。



たとえば,こんな問題。

「Aが,BとCに相撲を取らせて勝った方に1万円をやると約束した。相撲をしてBが勝ったので,AはBに1万円を支払った。A・B・Cの罪責を述べよ」

これは賭博罪を題材にした昔の司法試験の問題であるが,いわゆる引っかけ問題のひとつである。


正解は,3人とも何らの罪責に問われない。

勝負があってお金が動けば,全て賭博罪になるわけではない。


参加者各自に失うリスクと得られる期待」があって,はじめて賭博罪が成立する。


また,このリスクと期待は相互的な関係であることが必要である。


これが,相互的得失の要件である。

上記の問題だと,BとCは,1万円を得られる期待はあるが,お金を失うリスクはない。
一方Aには,財産的な利益が得られる可能性はない。Aからすれば,勝負をさせて楽しんでいるのかもしれないが,それは財産的な利益ではない。


よって3者間に相互的得失の関係がなく,賭博罪は成立しない。

ゴルフコンペでたまに検挙がされるのは,参加者全員が金を出し合ってそれを賞金にあてる,というケースである。


これがたとえば,上位者には社長から賞金が出る,というスキームならば賭博罪には該当しない。


さらに,上記の問題にこういう条件が加えられればどうなるか。


「AはBとCに相撲を取らせて勝った方に1万円をやると約束し,知人達に観戦料500円で観戦しないかと声をかけた」

この場合,Aからすると,観戦者が20人を超えれば利益が出るので,Aに財産的な利益を得られる期待が成立する。
またAの立場は,観戦者が20人以下なら赤字である。


利益が出るか赤字になるかは,やってみないとわからない。Aのしていることには,ギャンブル的要素がある。


しかし,Aには賭博罪は成立しない。
Aに成立している期待とリスクは,相撲という勝負(及びBとC)と相互的得失の関係にないからである。
ちなみに上記の問題は,スポーツイベント等のビジネスモデルを単純化したものだ。


冒頭の問題は,引っかかった受験者も相当数いたようだ。
相互的得失の要件は,案外見落としがちで難しい。

勝負事があってお金が動けば,必ず賭博罪が成立するわけではない。


ギャンブル的要素があるものの全てに賭博罪が成立するわけでもない。
さらに日本では,賭博罪が成立しても,ほとんどの場合,検挙されないww

ギャンブルは単純な遊びなのだが,賭博罪は難儀なシロモノなのである。





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