賭博場開張図利罪の要件ー主宰生 | 麻雀プロ弁護士津田岳宏のブログ

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昨日の続き。
賭博場開張図利罪についても,ちゃんと理解している人は少ない。



こんなケース。




AとBが将棋をして,負けた方が勝った方に1万円をやるという約束をした。Aが勝ってBから1万円をもらった。

このケースなら,勝負をしているAとBに相互的得失の関係が成立するので,賭博罪が成立する。

では,1万円を賭けた勝負をするから使用料500円で場所と道具を貸してくれと頼まれて貸した将棋クラブ店主Cの罪責はどうなるか?




この場合,Cに賭博場開張図利罪は成立しない。
Cは罪を問われるとしても,賭博罪のほう助にとどまる。

判例上,単に賭博の道具や場所を貸しただけでは,賭博場開張図利罪は成立しない。


同罪の成立には,それを超えて「賭博を主宰した」といえる事実が必要である。
そのためには,当該賭博を管理支配したと認められるだけの事実がいる。


上記のCは,単に場所を貸しただけで,AとBの勝負を管理支配したとは言えないので,賭博場開張図利罪は成立しない。


同じ理由で,いわゆるセット雀荘に同罪が成立することもない。


客が賭け麻雀をしているのを知っていてそれを黙認していたとしても,せいぜい賭博罪のほう助が成立するくらいで,賭博場開張図利罪の心配はない。


つい先日,違法パチスロ店が検挙されたとき,容疑の罪は賭博場開張図利罪ではなく常習賭博罪だった。


いわゆるゲーム喫茶とか違法パチスロ店が検挙されるときは,常習賭博でされることが多い。
これについてネット上で「なぜ賭博場開張図利じゃないの?」とコメントがされているのを見かけることがあるが,これは,ゲーム店型賭博場の場合,「主宰性」の立証が若干面倒だからである。

ゲーム店型賭博場の被疑者は,「私は客に機械を貸していただけだから主宰性がない」という主張,つまり上記Cの立場と同じ立場であるという主張をして否認することが可能なのだ(まあ賭博罪に詳しい弁護士が付かない限りこんな否認はしないであろうが)。


この否認はおそらく裁判所では通らないであろうが,少なくとも,当該被疑者の主宰性を検察側が詳細に立証する必要は生じる。


これはなかなか面倒であるし,常習賭博罪で挙げたところで最終的な量刑は変わらないので,立証が容易な常習賭博罪で検挙されるのである。
ゲーム店型賭博の場合,客の勝ち負けがそのまま店の勝ち負けになるので,店に常習賭博罪が成立するのは明白である。


フリー雀荘の場合は,勝負の結果に関わらず一定のゲーム代を徴収するので,店が客と賭けているとはいえない。


よって,ゲーム喫茶とは異なり,店を常習賭博で挙げることはできない。


そこで,フリー雀荘が検挙されるときは,賭博場開張図利罪で挙げられる。


実はこのとき,主宰性がないという主張が通れば,店は無罪になるのである。

しかし現実には,この主張は難しい。


裁判所は


①レートを店が決めている
②レートごとにゲーム代が異なる


③レートとルールを店が客に説明している


④店が預かり金を徴収している


⑤店がトップ賞を徴収している

などを根拠に,フリー雀荘が賭け麻雀を管理支配していて主宰的地位にあると認定する。

逆に言うと,上記の点が弱くなっていけば,主宰性があると言われ難くなるということだ。


たとえば,④を強制でなく任意にする,⑤をやめるなどすれば,主宰性は弱まる。
②を同一にするのはなかなか難しいかもしれないが,もし実現すれば,主宰性は弱まる。
③については,少なくとも備え付けのルール表にレートを書くのは絶対にやめるべきだ。

もちろん,僕の提案は,経営上はなかなか困難であることは十分承知している。


しかし経営者としては,賭博場開張図利罪の成立に「主宰性」が要件であることを知り,その上で,「客が勝手に賭けているだけで,私たちは場所を貸しているだけです。管理支配はしていません」と主張できるような建前をできるだけつくっていこうという姿勢を示すことは大事だ。

賭博罪は風紀に対する罪。


これにかかわる商売をする者は,なるべく風紀を乱さないでおこう,とする姿勢がなにより肝要なのだ。











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