この記事を見る前に:必ず、辻井伸行さんが演奏されるトルコ行進曲の記事をご覧になってください。まだ見ていない方は、下記の写真の入った部分をクリックしてください。直ちにその動画に移ります。

 

 

楽譜を読みながら、モーツァルトのトルコ行進曲を、主にその調性に注目して丁寧に分析していきます。

この楽譜の先頭を見ますと、五線譜に♯も♭もついていないので、一番簡単なハ長調(Cメジャー)だと思うかもしれませんが、違います。五線譜を見る場合、それが長調であるか短調であるかを見極めることが大切ですね。

 

この場合は短調なんです。しばらく追っていくと♯が三つついた個所にぶつかります。その前の音符の見てください。ラの音符で終わっていますよね。そう、ここまではイ短調の曲なのです。ちなみに、ラの音というより、ハ二ホへトイロハの中のイの音(Aの音)で終わっていると言ったほうがより正確です。

 

そして、五線譜に#も♭もつかない音階は、ハ長調とイ短調だけです。とりわけ、ハ長調という音階は、最も重要な音階といえます。すべての音階はこの調から始まるといっても過言ではないでしょう。

 

ちなみに、音符の読み方には、ドレミファソラシドとハ二ホへトイロハ(CDEFGABC)の二種類があります。前者を階名、後者を音名と言うことは、中学校の音楽で習った通り、以前は厳密な区別が求められましたが、かえって混乱してしまうので、今はそうでもありません。

 

Cシャープ(嬰ハ)、Eフラット(変ホ)と言うべきのところを、ド シャープ、ミ フラットと言っても注意されることはありません。ただ、音符には、二つの呼び名があることだけは、頭の隅に入れておいてください。

 

最初は、不安げな雰囲気を放つイ短調。これは、強力なオスマントルコの軍隊を恐れた東ヨーロッパの人たちの心配を表したものだと私は、考えています。

 

そして、それから#三つの楽譜になります。これは、イ長調。モーツァルトは、ここからトルコ軍の華麗な行進を表現したかったに違いません。

アマデウス モーツァルト

そのためには、短調ではまずい、ここでモーツァルトは、イ短調(Aマイナー)ととても仲のよい同主調と呼ばれるイ長調(Aメジャー)に転調させたのです。

 

ちなみにイ短調(Aマイナー)と仲のいい長調はもう一つございます。それは、短三度上のハ長調です(Cメジャー)。これだと、五線譜に#も♭もつきません。

 

まず、ハ長調とイ短調は、平行調と呼び、切っても切れない仲であると肝に銘じておいてください。もちろん同じ理屈でト長調(Gメジャー)とホ短調(Eマイナー)は、平行調です。ただ、モーツアルトは、転調させる場合、どうやら同主調の方がお好きなようです。

 

このように、トルコ行進曲という作品も、一本調子にならないようモーツァルトによって大いに工夫されているのです。このような集積が、二百年以上たってもますます人々に愛される所以なんですね。